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イイね!
2024年01月17日

デルタVとは

EDRデータ解析において、最も重要視される指標のひとつに「デルタV」というものがあります。
単位は速度で、km/hまたはmphが使われます。
一定の時間内にどれくらいのデルタVが発生したかによってデータが記録されるorされないが決まったり、記録終了のタイミングが決まったりするので、デルタVはとても重要です。
でも一般にはあまり馴染みがありません。僕も研修を受けて初めて知りました。デルタV。
それって何なの?

先日ご紹介した記事の中では「ここで言うデルタVとは、車両の速度変化を数値化したものを指す。加速度に似ているけれど、どちらかと言えば動的なエネルギー変化を表しているものだと考えるとわかりやすい。」と書かれています。
あー、はいはい。なるほど。うん。何言ってるのかまったく分かりません。

結論から言うとデルタVというのは加速度の積分です。
…という説明で分かってもらえる人は理系の方、僕は文系なので微分積分は全て忘れてしまいました。
もうちょっと詳しく見てみましょう。







分かりやすいように具体例を作ってみました。
速度変化は僕が適当にデータを打ち込んだものです。一番左のグラフがそれです。
20km/hの時点をスタートとして、15秒間の速度変化と、そこから計算で得られるいくつかの値を表示しています。

この図では都合上、加速度の単位をm/s^2ではなくkm/h/sとしています。
ここから加速度を積分してデルタVの値を得るために、真ん中のグラフを見ながら面積を計算します。(※)







つぎに、1秒毎の速度からそれぞれ20km/hを引いて、t0(スタート地点)からの速度の差、つまり最初と比べて何km/h増えたのか?を計算します。
そして「デルタV」と「t0からの速度差」、それぞれをグラフ化したのがひとつめの画像の一番右のグラフです。







青色とオレンジ色、それぞれよく似たグラフですが微妙に一致していません。
この差が大事なんですね。この差が。
これがデルタVを使うことの意味なんだろうと、個人的には思っています。

「t0からの速度差」というのは単に引き算で出す値であって、最初の速度と最後の速度だけを計算として使うため、その途中の速度がどのような変化であったとしても、それは計算には反映されません。
例えば20km/hから56km/hに変化した場合、その速度差は36km/hですが、途中の速度がどのような増減をしようが最終的に56km/hになりさえすれば、速度差としてはやはり36km/hとして算出されるわけです。
ところがデルタV、つまり加速度の積分であれば、途中の増減が変化すると積分の値(グラフ下の面積)も変わってくるため、そこでの変化が反映されます。
それが「デルタV」と「t0からの速度差」とのグラフの違いとして出てくるわけです。
ほんの少しの違いですけど、そこが重要なんだろうなと。

もうひとつ例を見てみましょう。







これは試しに加速度を一定の値に固定してみた場合のものです。
この場合は1秒あたり1km/hという加速度なので、当然ですが速度変化としては1秒毎に1km/hずつ増えていくような速度変化になります。
そしてこのとき、「デルタV」と「t0からの速度差」は1秒毎のどの時点でも一致します。
これは速度の変化の割合、つまり加速度が一定なので、こうなります。




CDRアナリストの研修では、演習問題としてデルタVを使った計算なども行いますが、便宜上、加速度は一定であるという前提で計算します。
そのため「2つの時点の速度の差」をもってデルタVとするのですが、このあたりが感覚的によく分かりませんでした。
結局デルタVって何なのか?
ちょっともやもやしていたので、グラフ作りながら考えてみたら疑問が解決してすっきりしました。

加速度が一定だと仮定して考える場合、「デルタV」と「t0からの速度差」は一致するわけですが、そうであれば別にデルタVを使わずに加速度を使ったほうが考え方としてはシンプルなわけです。
でもEDRは加速度ではなくデルタVを使います。
49CFRpar563でも加速度の値の扱いは適当で、「表示させるかどうかはどっちでもいいよ、メーカーに任せます」みたいに書かれており、あの数値もこの数値も何もかもデルタVで指定されています。
それはたぶん、事故の衝撃というものを判断するのに瞬間的な速度や加速度だけではなくて、区間内の変化の推移も含めたいからです。
加速度の積分であれば「どのような増減を経て現在に至ったか」が反映されます。

ちなみに49CFRpart563で求められているデルタVのサンプリングレートは1秒間に100回、速度に関する分解能は1km/hで、時間に関する分解能はなんと2.5ミリ秒です。
0.0025秒の分解能ですよ!加速度センサってすごいですよね。
それだけ緻密に測っているし、それだけ緻密に計算しているってことなんだろうなと思います。
恐れ入りますね。

そんなわけで理解のためとはいえ久しぶりに数字とにらめっこして、とっても頭が痛くなりました。
しばらくは仕事も家事も何もせずお空の雲を眺めて過ごしていたいです(おいおい)






















(※)ちなみに今回の場合、積分の値は「(1秒前の加速度 + 加加速度の1/2)の総和」で求められます。
CDRアナリストの方でこちら応用される場合は、サンプリングレートと加速度の単位にご注意ください。



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Posted at 2024/01/17 12:42:00

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