少し前のことになりますが、最近ブログをフォローさせて頂いているOX3832さんのところでインリフトの話題が出ていました。
ロードスターなどのFR車はインリフトする機会はあまりないと思いますが、シビックやインテグラなどのFF車のリヤ側タイヤでよく見る光景ではあります。
発生可能な荷重移動が大きければ大きいほどインリフトしやすいため、速ければ速いほど対策も難しいようです。
以前から「面白い現象だな~」と思ってはいたのですがあまり深く考えたことがなかったので、この機会にちょっと考えてみることにしました。
そもそもインリフトはコーナリングのどの地点で発生するんでしょうか?
僕の印象ではコーナリング開始地点~コーナの頂点(最低速度地点)までの間でインリフトが発生し、最低速度地点ではすでに着地していることが多いのですが、「必ずしもそうとは限らない」とのご指摘を受けたので「確かにそうだなぁ」と思い、過去にタカスサーキットで撮影した写真を確認してみました。
もっと撮ってた気がするけど意外と少なかった…。
あえてインリフトしているところを撮っているくらいなのでリフト量が最大付近の写真となっているはずなのですが、きっちり最大のところを撮れているとは限らないのと、リフト開始や着地地点の写真がないので、これを見てもいまいち分かりません。
そこでネット検索してみると、youtubeで参考になりそうな動画が出てきました。
場所は富士スピードウェイのスープラコーナです。
https://www.youtube.com/watch?v=plQsldCBHaU
多くの車両がエイペックス手前で着地している…ように見えますが、ちょっと撮影角度が微妙で確実とは言い難いですね。
もうちょっと横からの撮影だったら分かりやすかったかもしれません。
なんとも微妙な結果なのでもう少しネット検索していると、タツゥ大先生のサスストローク関係のブログが出てきました。
個人でサスストロークセンサを使用し、さらに実測値の公開までして下さっている方はほとんどいないので、とてもありがたいですね。
150515 TC1000走行会 その2
以下、TC1000をS2000で走行した際のサスストロークセンサの値から計算した、リヤ車高とロール量のグラフです。(画像お借りします)
ただ、ここではリヤ車高とロール量だけで、サスストローク自体のグラフは掲載されていません。
今回はインリフトに関わるものとしてサスストローク自体の値が欲しいので、グラフ中の縦Gと横Gを見ながらそれと近似するような値をエクセルに手入力し、それを元に改めてサスストロークを計算してみました。
日光サーキットと
茂原サーキットの例から、計算値と実測値がほぼ合うことは確認済みです。
さて、これを見ればリヤ内輪の伸びが最大となる地点が分かるので…って、あれ?
明らかに最大横G発生地点でリヤ内輪の伸びが最大となっています。
最大横G発生地点はロールが最大となる地点なので、ロール最大のときにリヤ内輪の伸びが最大となるようです。
なんということでしょう!これは認識を改めなくてはいけません。
ということは最大横G発生地点が一番インリフトしやすい?
ただ、改めて先程のyoutube動画を見直してみても、少なくともエイペックス付近がリフト最大となっているようには見えません。
よく考えたらコーナ途中で3輪走行に移行してリヤタイヤが滑り始めてしまうと、動画のようにほぼゼロカウンター状態でコーナに突っ込んでいくことになるので、それ以上ハンドルは切り足せないことに気付きました。
そんなわけであからさまにインリフトしながらコーナに突っ込んでいく場合、おそらく横G(および荷重移動、ロール、リフト量)はコーナ進入から少し進んだあたりで一旦止まり、リヤタイヤを滑らせながら大体同じくらいの横Gをキープしてエイペックスに向かっていくものと思われます。
この際、ブレーキペダルはリリースされ続けるためにピッチングが戻っていくので、ある程度の地点でリヤ内輪が着地するかたちになるかと思います。
ロール剛性の前後バランスが極端なリヤ寄りの場合は例え定常円旋回中でもインリフトを保っているということがあり得ますが、どこまでが現実的なセッティングの範囲内なのかは分かりません。
やはりセッティングによりますね。
ともかくとしてS2000でTC1000を走ると、リヤ内輪の伸びが最大になるのは最大横G発生地点ということは分かりました。
…などと言いつつ、そうでないコーナもあります。
5コーナです。
ハンドルを右から左に切り返し、十分に横Gがかかった状態でちょっとだけハンドル戻してブレーキングしながらコーナに突っ込んでいくというテクニカルなコーナですね。
ここでのリヤ内輪の伸び最大は最大減速Gの発生地点となっています。
インリフトしないクルマの場合、リヤ内輪の伸びが最大になるのはリヤ内輪荷重が最も少なくなったときであり、リヤ内輪荷重が最も少なくなるのはピッチング方向あるいはロール方向あるいはその範囲内において、荷重移動量が最大になったときです。
「リヤ内輪の伸びが最大になるのは最大横G発生地点」というのは、通常、ホイールベースよりトレッドのほうが距離が短く、またタイヤが発揮することのできるグリップ力は縦より横方向のほうが大きいことから、ロール方向のほうが荷重移動量が大きくなるためですね。
ただし5コーナの場合は大きな横Gがかかっている最中に強いブレーキングで縦Gを入れるので、その瞬間は斜め方向に大きなGが発生することになるため、リヤ内輪の伸びもこのときが最大となるようです。
(うーん、伸び量の計算値を見ると僕の横Gの入力値がここだけちょっと多めだったかもしれません)
ちなみに上記計算はサスストロークセンサの実測値に合うように前後G係数および左右G係数が設定されたものであり、それぞれの係数はトレッドやホイールベース、重心高さ、ロール剛性やピッチ剛性、ロール軸の位置関係や、アンチダイブ&アンチリフト&アンチスクワット力あるいはジャッキアップ&ジャッキダウン力などなどが影響した結果として出てくるものなので、クルマが変わると数値も変わりますのでご注意ください。
同様の計算をしようと思う場合はサスストロークセンサの実測値が必要になるので、個人でやるにはちょっと敷居が高いですね。
というわけで次回はストロークセンサ以外のインリフト確認方法について書きたいと思います。
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Posted at
2024/07/30 12:40:16