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イイね!
2024年12月05日

減衰力と荷重移動

先日タツゥさんのブログでHALスプリングの開発者の方の動画が紹介されていました。
低反発スプリング、高反発スプリングと聞いて「それって実際にはレートが違うんじゃないの?」と思った方は多くいらっしゃると思うのですが、スプリングテスタ持ってる方って限られているので、今回開発者の方から貴重なお話を聞けたことでスッキリされた方も多いんじゃないかと思います。

 ・高反発→他社と同じような単一レートのスプリング
 ・低反発→独自に設計したバリアブルレートスプリング

でも開発者の方が自らこういう動画を上げてくれるって親切ですよね。
いいスプリングなんだと思います。

エンドレスさんのMBRの説明におけるヒステリシスという用語の使い方についてもそうですが、現実のメカニズムは難しいため一般の人に分かりやすいようにイメージ優先の表現が使われるというのはよくあることです。
ヒステリシスについてはすでに工業規格として定義が決まっている用語なのでちょっとアレですが、そういう意味では低反発・高反発というのは専門用語を避けてて好感が持てますね。

ダンパの減衰力に関しても似たような例があります。
まずはこちらの動画をご覧ください。





これはfinal gearのKさんという方が減衰力のセッティングについてお話しされている動画です。
一部抜粋します。

「じゃあ減衰力強い方がいいのか、弱い方がいいのか、どうやって見極めるのかというと、例えばコーナー進入時、ブレーキを強く踏んでリアの挙動が不安定になるようであれば、リアの減衰力を強くします。リアの減衰力を高めることによって、ブレーキを踏んだ時リアの荷重が抜けにくくなってリアが安定するんですよね。それで今、荷重という言葉を使ったんですけれど、まぁこれドライバーさんに分かりやすいように荷重という言葉を使ったんですが、メカニック的な面で見ると荷重とはちょっと違うんですよね」

一体これはどういうことでしょうか?

荷重移動というのはそもそも各タイヤにかかる荷重の変化であり、これは(1)車重と(2)重心高さ、またそこにかかる(3)加速度、そして(4)ホイールベース(またはトレッド)、この4つの要素で決まります。
例えば減衰力を無限大にしてダンパーをただの棒のように全く伸び縮みしない状態にしたとしても、ブレーキを踏めば後ろから前に荷重移動しますし、アクセルを踏めば前から後ろに荷重移動します。
このとき荷重移動量は基本的に上記4つの要素が変わらない限り変わりません(スプリングによるエネルギーの吸収・放出の過程や各摺動面において熱エネルギーとして発散される分などの微細なものを除きます)

スプリングの硬さや減衰力を変えると見かけ上サスペンションの動く量や速さが変わるので、例えばサスペンションの動きが遅くなると荷重移動も遅くなるんじゃないか?と思ってしまいますが、これはタイヤと地面そして重心との関係で発生する荷重移動からすると内部的な力の働きによるものなので、直接には影響していません(ストロークによる重心位置の移動やホイールベースの変化などの微細な分を除きます。以下、読みやすさのためこの類の注釈は割愛します)
減衰力を大きくしてサスペンションの動きが遅くなったとき、もしも荷重移動の速度も遅くなるのだとしたら、減衰力を無限大に近いレベルまで引き上げると荷重移動の速度がものすごく遅くなって、ブレーキングをしても荷重移動がいつまでたっても終わらない…つまりほとんど荷重移動しないことになります。
でも実際にはそんなことなくて、普通にブレーキ踏んだ瞬間に荷重移動が発生します。そしてピッチングは遅くなります。
荷重移動が遅くなるときというのは重心にかかる加速度の変化を遅くしたとき、つまりブレーキやアクセルの踏み具合をゆっくりと徐々に強くしていったときなどがそれにあたります。

ところが実際にダンパの減衰力を調整すると、ハンドリングが変わりますよね。
一体どんなメカニズムでそうなるんでしょうか?
これは体系的に書こうと思うと本が一冊書けてしまうくらい難しいので(汗)、以下、関係してそうな要素をいくつか羅列してみます。



・タイヤの接地状態
減衰力が強すぎても弱すぎてもサスペンションが路面の凹凸に適正に対応できず、タイヤの接地状態が悪くなります。
フロントタイヤの接地状態が悪くければアンダーステア、リヤタイヤの接地状態が悪ければオーバーステア方向になります。

・ロール軸の変化速度
減衰力を変えるとピッチングの速度が変わるため、それが影響するタイプのコーナによっては、動的なロール軸(コーナの各地点におけるロール軸の位置や角度)が変わります。
そして「ロール軸の角度による荷重移動の前後配分」および「コーナリングフォースの荷重に対する非線形特性」から、ロール軸の前傾が強いとオーバーステア方向、前傾が弱いとアンダーステア方向になります。
ロール軸の位置の影響については割愛します。

・トレッドの変化速度
減衰力を変えるとピッチングやロールの速度が変わるため、動的なトレッド(コースの各地点におけるトレッド幅)が変わります。
具体的な変化は車によって変わりますが、フロントのトレッドのほうが増えればオーバーステア方向、リヤのトレッドのほうがが増えればアンダーステア方向になります。
(ただしトレッドが増えている最中はタイヤが路面を蹴ってコーナリングフォースを生むため、状態によってはUS/OS特性が逆転します)

・アライメントの変化速度
減衰力を変えるとピッチングやロールの速度が変わるため、動的なアライメント(コースの各地点におけるトー角とキャンバ角)が変わります。
具体的な変化は車によって変わりますが、トー・キャンバ変化の結果としてフロントのコーナリングフォースが上がればオーバーステア方向、リヤのコーナリングフォースが上がればアンダーステア方向になります。



ロール軸の位置の影響については割愛しましたが、特にバンプ/リバウンドを個別で考える場合は重心高さとロール軸の位置(左右方向を含みます)の変化に影響するのでさらに複雑になります。
このあたりはあまり詳しく考えたこともないのでほとんど把握していません。
ともかくとしてクルマは前のめりになればオーバーステアになるし、後ろのめりになればアンダーステアになるってことですね(雑)
そして、そうでない項目もあります。

動画の中で「ブレーキを強く踏んでリアの挙動が不安定になるようであればリアの減衰力を強くします」とありますが、これも程度問題で、荒れた路面で減衰力を必要以上に強くするとリヤは再び不安定になります。
また、タカスサーキットで言うとカゲヤマみたいなコーナよりもゲッチャンとかグリップエンドみたいなコーナのほうが減衰力調整の影響は強く出やすいので、コーナの特性にもよりますね。
というかそれ自体、そもそものストローク量が多いクルマなのか?少ないクルマなのか?ということで変わってくる面がありますから、やはりとても複雑です。

というわけでドライバーさんにそれを伝えるのは至難の業なので、普通は「リヤの減衰力を強くすると荷重が抜けにくくなるから安定するんだよ」って言っといたほうが無難なんですね。
ちなみにこれChatGPTにメカニズムを説明させても最初はそのような返答がくるので、「人間の感じ方とかはどうでもいいんで物理的な変化について教えてください」とか言って矛盾点を細かく突っ込むと、そこでようやく正しい返答に切り替わります。
ChatGPTで「ダンパーの調整が直接タイヤの荷重移動そのものを変えるのではなく、車体挙動やサスペンションジオメトリを通じてタイヤのグリップ特性に影響を与える」という返答を得ることの出来る方は僕と同じサスペンションおたくです(笑)

でもまぁ減衰力調整の基本はタイヤの接地状態を良くすることなので、アンダーとかオーバーは本来、ロール剛性や車高の前後バランスで調整すべきですよね。
とは言えロール剛性や車高の前後バランスをコースに合わせて常に100%完璧な状態にしておけるか?というとなかなか難しく、特にジムカーナの現場などではそんなこと言ってられないので、上級者の方はいろいろセッティング頑張ってください(笑)
ブログ一覧 | 日記
Posted at 2024/12/05 12:54:40

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「@Garage K 個人的には、「グリップする」=「より大きなグリップ力(コーナリングフォースまたは加減速力)を出せる」という意味かなと思って読んでましたが^^;
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何シテル?   12/13 20:54
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