• 車種別
  • パーツ
  • 整備手帳
  • ブログ
  • みんカラ+

aki@rsのブログ一覧

2024年06月29日 イイね!

最速の走行ライン

サーキットを走っている方は、どういう走行ラインが一番速いのかって気になりますよね。
誰もが尊敬するプロドライバー、黒澤元治さんが書かれた著書の中に「コーナーをR(半径)ごとに分解し、それらをすべて正円で繋いでみる。その連続が理想のラインとなる」という記述があります。
ガンさんがそう書かれるくらいですから昔はそれが通説だったと思うのですが、現在では、理想の走行ラインはどうやら正円とは少し違うようだ、ということが分かってきました。
クルマやタイヤの進化も関係していると思われますが、いわゆるV字っぽいラインのほうが速いケースが多いですね。

レコードラインと比べて正円のラインだと何故遅くなってしまうのか?というのは、走行距離の違いとか、加速するタイミングの違いとか、いろいろなことが言われていたものの、その違いをはっきりと説明できる人はほとんどいませんでした。

ところが先日、タツゥさんが海外の専門サイトより得られた「ある考え方」によって、それが明確に説明できるようになるかもしれません。
タツゥさんは現在、その確認のためにブログを上げ続けてらっしゃいますが、この考え方が正しければ、これは個人としては国内初の偉業だと思います。
各サーキットのレコードラインそのものが変わるわけではありませんが、最速の走行ラインを求めるための考え方が得られるのであれば、ドライビングレッスンに関わるお仕事をされている方や、ジムカーナ関係の方、あるいは自動運転の開発などで限界領域の制御に関わっておられる方などにとって、非常に有益なものになる可能性があります。
もちろん我々アマチュアドライバーにとっても「最速の走行ラインとはどういうラインなのか?」というのは興味深々な部分ですよね。

とくに現在、タカスサーキットのマネージャーをしているそこのキミ!
この業界に身を置くならしっかり理解しておきなさい笑

そんなわけで僕自身の理解も兼ねて、ここでご紹介させてもらいますね。
まずタツゥさんの元記事はこちらです(現時点でのもの)。



The Perfect Corner
180°ヘアピンコーナの走行ライン最適化 その1
180°ヘアピンコーナの走行ライン最適化 その2
180°ヘアピンコーナの走行ライン最適化 その3
180°ヘアピンコーナの走行ライン最適化 その4
180°ヘアピンコーナの走行ライン最適化 その5
180°ヘアピンコーナの走行ライン最適化 その6
180°ヘアピンコーナの走行ライン最適化 その7



内容に関して、僕のブログでは分かりやすさを優先してざっくりとした説明に終始したいと思います。
正確なことを知りたい方は、タツゥさんの記事をご覧ください。

さて肝心の「ある考え方」とはどういうものかというと、具体的には、次のようなものです。



 1.まずコーナ入口と出口の速度変化をベクトルで表す

 2.そのベクトル変化を最短時間で行うとき、コーナを最も速く走ることができる

 3.それを最短時間にするためには、タイヤのグリップ力を可能な限り"ベクトル変化と同じ方向"に使いながらタイヤの摩擦円の縁で走行すればよい




これだけだとまだよく分からないと思うので、かんたんに解説します。
まずは「コーナ入口と出口の速度変化をベクトルで表す」というのがどのようなものか見てみましょう。







alt






alt







青い矢印で示したのがコーナ入口のベクトル、緑色がコーナ出口のベクトルです。
まずそれぞれのベクトルを抜き出して、「最終的なベクトル変化」つまり入口から出口に至るまでにどういう変化があったのか?というのを導き出します。
それが黒い矢印です。

これで「入口から出口に至るまでにどういうベクトル変化があったか」を導くことが出来ました。
この変化を最速で行うことが、コーナを最速で走るということである、というのが今回のお話です。
ただしタイヤのグリップ力には限界があるので、クルマはその範囲内でしか走ることが出来ません。
では具体的にタイヤをどのように使えば、このベクトル変化を最速で行うことが出来るでしょうか?

今度はこちらの図をご覧ください。



alt





例えばタカスサーキット2コーナにおいて、クルマがこの位置を走行していたとします。
このときドライバーの操作としては、ハンドルを切りながらブレーキペダルを少しずつリリースしていく最中なので、タイヤは縦にも横にもグリップを使っています。
つまり斜め後ろにグリップを使っている状態です。

ここで、タイヤがグリップ力を発揮している方向(赤い矢印の方向)と、先ほどのベクトル変化の方向(黒い矢印の方向)に注目してください。

alt



このタイヤグリップを、黒い矢印と同じ方向の成分と、それに対して直角方向の成分に分解してみます。



alt



すると「タイヤグリップのうち、どれだけの力を黒い矢印の方向に使っているか」ということが分かります。
これです、これが大事なんです!



alt




alt






入口と出口のベクトル変化を最速で行うことが出来れば、それがコーナを最速で走るということ。
そのためには、タイヤグリップをなるべくたくさん黒い矢印の方向(ベクトル変化の方向)に使って走る必要があります。
タイヤグリップのうちどれだけの成分を黒い矢印の方向に使っているか、それがオレンジ色の矢印です。

ところが、ちょっと待ってください。

例えば180°ヘアピンコーナがあったとして、そこをクルマが走るとしましょう。
次のGIFアニメをご覧ください。




入口と出口のベクトル変化というのは、このように、縦方向に「行って帰ってくる」という変化です。
コーナを最速で走るためにはこの変化を最速で行おうという話なのですが、








実際には横方向にも進んでいかないと、コーナを曲がることは出来ません。
(※注意1…ここでいう「縦」「横」というのは、クルマの進行方向に対する縦横ではなくて、黒い矢印の方向に対する縦横のことです)
(※注意2…タツゥさんの元記事に合わせる目的から、今後は「黒い矢印の方向(ベクトル変化の方向)」を「コーナ中心線方向」と呼ぶことにします)

そのためタイヤグリップの全部を常にコーナ中心線方向だけに使うことは出来ないのですが、最低限、必要な力を横方向に割り振ったら、あとはなるべく多くのグリップ力をコーナ中心線方向に使う。
ということが必要になります。

そして、ここでようやく走行ラインの話に繋がってくるのですが、



alt





例えばさっきの走行ラインがレコードラインだったとして、それと正円のラインを比べてみます。
正円のラインは青で示しました。

クルマがさっきの位置を走行しているとき、レコードラインの場合はどちらかというと曲がる方向よりも減速方向に多くグリップ力を使っている状態です。
ところが正円のラインの場合、クルマの進行方向に対して横に100%のグリップ力を使っているので、減速方向にグリップ力を使うことは出来ません。
すると、



alt





それぞれのグリップ力を「コーナ中心線方向と、その直角方向」の成分に分解した場合、正円のラインのほうがコーナ中心線方向のグリップ力(オレンジ色の矢印)が小さくなってしまうことが分かります。
これでは「入口と出口のベクトル変化を最速で行う」ことは出来ません。

そしてこのとき、直角方向の移動について少し考えてみると、







クルマがストレートを走っているときは、当然ですがまっすぐ走っているので、クルマは横方向(コーナ中央線方向に対して直角方向)には動きません。
GIFアニメでいうところの一番左側にいる段階では、直角方向の速度はゼロで、そこから直角方向に加速して、コーナの中央において直角方向の速度が頂点に達して、そこからは減速して、最終的に一番右側に行くと再び直角方向の速度がゼロになる。
ちなみにこの「直角方向の移動速度」は、コーナ中央に差し掛かったときだけ、その時点におけるクルマの進行方向の速度(クルマのスピードメータに表示されている速度)と一致します。
これはコーナ中央だけに言えることであって、他の場所では一致しません。(進行方向が違うので)

ところで走行ラインの違いの話に戻るのですが、ふつう、正円のラインというのは旋回半径が大きいために、コーナ中央における旋回速度も高いです。
それに対してレコードラインはV字っぽく走るので、旋回速度としてはちょっと低い。
それなのに何故、トータルでは正円のラインのほうが遅くなってしまうのか?というのは、この「直角方向の移動」に関係しています。

直角方向に「速度ゼロ→加速→コーナ中央→減速→速度ゼロ」という速度変化をするとき、もしもコーナ中央の速度がすごく高かったとすると、このような速度変化をするためには、速度ゼロからすごく頑張って加速して、その後も速度ゼロまですごく頑張って減速しなきゃいけないわけです。
結果、そこでグリップ力を消費しなければいけないことになり、その分、コーナ中心線方向に使えるグリップが減ってしまいます。

直角方向の速度というのは最終的にはゼロになってしまうのに、途中で「加速してから減速する」というのは無駄なことをしているわけですよね。
その部分の加速と減速が大きければ大きいほど、無駄なグリップを使ってしまう。
そのため、コーナ中心方向に使えるグリップ力が減る。
これが正円のラインがレコードラインより遅くなる理由です。



以上、最速の走行ラインを求める理論の導入となる部分について、僕なりの視点でかんたんにご紹介しました。
表現に正確さがなかったり、具体的な数字を使った説明が入っていなかったりして、細部が気になる方もおられるかもしれません。
神は細部に宿るので、具体的なことを知りたい方はタツゥさんの元記事をご覧ください。

また、この理論は国内でまだほとんどの人が知らないので、検証および理解の促進の意味も含めて、皆さんのブログでもリンクを貼って頂き、多くの方の目に触れるようにして頂けると今後のモータースポーツ業界の一助になるのではないかと思います。

<a href='https://minkara.carview.co.jp/userid/1494795/blog/47676287/' target='_blank'>The Perfect Corner</a>

上記のコードをコピー&ペーストして頂けると、タツゥさんの最初のブログ記事「The Perfect Corner」へのリンクを貼ることが出来ます。
また、具体的な部分でご質問等があれば僕に分かる範囲でしたらお答えさせてもらいますし、もしも他にこの理論に関する論文や記事などで既に公表済みのものを御存じの方がおられましたら、共有のために教えて頂けると嬉しいです。
Posted at 2024/06/29 12:37:15 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記
2024年06月13日 イイね!

荷重移動とステア特性

皆さんはサーキット走行やジムカーナ、峠アタックなどはされますか?
「1秒でも早く走りたい!」と思うと、車高調をいじってアンダー/オーバーといったステア特性の調整をしたりしますよね。
フロントのばねを硬くするとアンダーになるとか、リヤの車高を上げるとオーバーになるとか、そういったことはよく耳にすると思います。
ただ、それが具体的にどういうメカニズムでそうなるのか?ということに関しては、あまり雑誌やインターネットの記事で扱われることがないので、知識として普及していません。
メカニズムを知っているからと言ってすぐに速いセッティングが出来るわけではないのですが、根本的な部分を理解していると「今の課題を解決するにはこれが必要だな」とか「これはあまり意味がないな」といったようなことが分かるので、足回りの不満点について「どうやったら解決するんだろう?」と悩むことが少なくなりますし、巷に溢れるトンデモ理論に惑わされることもなくなります。

そんなわけで今回はステア特性の調整について、タイヤが持つ物理特性の観点から1つの記事にまとめたいと思うのですが、ちょっと話が長くなるので、読みやすさのためにまず最初に要点だけを箇条書きにして、その後でひとつずつ詳しく見ていく、という書き方にしますね。


【今回の要点】
(1)ステア特性の調整とは、タイヤのコーナリングフォースの前後バランスを調整すること
(2)コーナリングフォースは左右の合計で考えることが大事
(3)荷重移動が大きいほど、左右の合計値は減る
(4)荷重移動の前後バランスを決める2大要因「ロール剛性」「リンクの角度」
(5)ロールセンタの高さによって各要素の「影響度合い」が変わる


なお、内容としては過去数回に分けて書いた記事とほとんど同じものなので、「これ読んだことあるよ!」って方は悪しからずご了承ください。

さて、まずは(1)「ステア特性の調整とは、タイヤのコーナリングフォースの前後バランスを調整すること」についてですが、これはまぁ文字通りですね。
前後バランスとしてフロントタイヤのコーナリングフォースが上がればクルマは曲がりやすくなりますし、リヤのコーナリングフォースが上がればクルマは安定します。
ただ、サスペンションの話は「フロントがロールしやすいからアンダーで…」とか「リヤが突っ張るからオーバーで…」といったような言葉で表現されることが多く、それだけだと最終的に何がどうなってアンダーやオーバーといった特性の変化に繋がるのか?といったことが分からないので、ばねやスタビ、減衰力の話であっても最終的にそれがコーナリングフォースの前後バランスにどう関わるか?ということを意識しながら考えることが大事です。


つぎに、(2)「コーナリングフォースは左右の合計で考えることが大事」についてです。
一般に運転の上手な人ほど荷重移動もスムーズにされると思うのですが、例えば「荷重をしっかりかける」とか「タイヤをしっかり潰す」といった表現からも分かるように、基本的にドライビングテクニックとしての荷重移動は荷重が増える側のタイヤ(アウト側のタイヤ)のことしか意識されません。
ドライビングテクニックだけの話ならそれでもいいのですが、でも、そのとき荷重が減る側のタイヤ(イン側のタイヤ)が全く仕事をしていないわけではないですよね(FFのリヤが浮いたときなどを除く)。
フロントタイヤは2本ありますし、リヤタイヤも2本あります。
なので、アンダー/オーバーといったステア特性の話をするときは、左右合計のコーナリングフォースを考えることが大事になります。


つぎに(3)「荷重移動が大きいほど、左右の合計値が減る」についてですが、まずはこちらのグラフをご覧ください。



このグラフは、本田技術研究所の論文サイト掲載「フラットベルト式 サスペンションタイヤ試験機」(酒井智紀、日下馨、佐藤祐二)のFig.10を参考にして、それとほぼ同じになるように描き出したものです。
グラフの縦軸がコーナリングパワー(単位角あたりのコーナリングフォース)、横軸が荷重になります。
これを見てわかるように、タイヤにかかる荷重を増やしていったときのコーナリングパワーの増え方というのは正比例ではありません。
荷重が増えればコーナリングパワーも増えますが、かかる荷重が大きくなるほど増えにくくなっていくという性質があります。
ある点を過ぎるとむしろ減少します。
これをタイヤグリップの荷重に対する非線形性といいます。

ところで、1Gのときのフロントタイヤ1輪にかかる荷重が仮に4000Nのクルマがあったとしましょう。



このクルマがコーナリングすると、荷重移動によってイン側の荷重は減り、アウト側の荷重は増えます。
例えば2000Nの荷重移動が起こると、内輪荷重は2000Nになり、外輪荷重は6000Nになりますね。
すると、グラフ上ではこうなります。



ここで、イン側とアウト側それぞれのタイヤのコーナリングパワーがどう変わったか?に注目してください。
アウト側のコーナリングパワーは増えました。
増えましたが、あんまり増えていません。
そして、イン側のコーナリングパワーはたくさん減ってしまいました。
さて、イン側とアウト側の合計を計算してみましょう。

荷重移動する前
内輪1300N + 外輪1300N = 合計2600N/deg

荷重移動した後
内輪800N + 外輪1420N = 合計2220N/deg

荷重移動したことで、合計のコーナリングパワーは減ってしまいました。

タイヤのこのような特性が、ステア特性を考える上で一番根本的な部分になります。
ばねを変えてステア特性が変わるのも、車高の前後バランスを変えてステア特性が変わるのも、タイヤのこのような特性によるものです。
スポーツカーの重心を下げるのもここに理由があります。
クルマの重心が高いと同じ横Gでもたくさん荷重移動してしまう、するとトータルのコーナリングフォースが減ってしまい速く走れないので、少しでもグリップを稼いで運動性能を上げるために重心を低くするわけです。


さて、このようなタイヤの特性について確認できたところで、ここからはいよいよサスペンションの調整の話に入っていきます。
まずは(4)「荷重移動の前後バランスを決める2大要素」についてです。

【ロール剛性に関わるもの】(代表例)
・コイルスプリング
・スタビライザー
・バンプラバーの潰れ具合
など

【リンクの角度に関わるもの】(代表例)
・車高
・ロールセンタアジャスタ
・ダンパの減衰力
など

例えばフロントのコイルスプリングを硬く、リヤを柔らかくすると、クルマがロールしたときにフロントのほうがたくさん荷重移動します。
そして先ほど確認したように、タイヤグリップには荷重に対する非線形特性があるので、フロントがたくさん荷重移動するとフロントのコーナリグフォースの左右合計が減ってしまうことから、クルマは曲がりにくくなります。
ただ、荷重移動の前後バランスを決める要素というのはそれだけではありません。

荷重移動の前後バランスは、サスペンションリンク(またはサスペンションアーム)の角度によっても変わります。
例えばリンクが地面と平行の状態から車高を上げると、リンクはハの字を描くことになりますが、このとき、リヤは地面と平行のままでフロントのみ車高を上げた場合、ロールしたときにフロントのサスペンションリンクが突っ張るような状態になることで、フロント側が負担する荷重移動の割合が高くなります。
気をつけて欲しいのですが、ここで発生する荷重移動量の前後差はあくまで前後バランスとしてそうなるのであって、クルマ全体としての荷重移動量がそのぶん増えるわけではありません。
クルマ全体の荷重移動量は車重、横G、重心高さ、トレッドの4要素で決まるので、そこからさらにロール剛性やリンク角度などによって前後のバランスが変わるということです。

余談ですが、ときどき「フロントのロール剛性を上げると、リヤに対してフロントのロールが小さくなるので、クルマは曲がりにくくなる」といったような表現を目にします。
「フロントのロール」「リヤのロール」と考えたい気持ちは分かるのですが、ロールというのは前後ロールセンタを結んだロール軸を中心にボディが回転する運動であり、ロール角とはボディの回転角度のことを指すので、ボディがねじれない限りフロントとリヤのロール角は同一です。
逆に言えばボディ剛性って重要だねって話にもなるのですが別の話題なのでここでは割愛します。
走行中のクルマはロールだけでなくピッチングするのでこのあたりちょっと複雑なのですが、あくまで「ボディがねじれない限りフロントとリヤのロール角は同一である」というのは変わらないのでご注意ください。
ロール剛性やリンク角度で変わるのはロール角の前後バランスではなく、荷重移動量の前後バランスです。



ところで、車高や減衰力がどうしてリンクの角度に関わってくるのかというと、それらを変えると実際の走行中のリンク角度が変わるからです。
車高を変えるとハの字の角度が変わるので、そこから一定角度ロールさせたときのリンクの角度も、車高を変える前と後で変わります。
したがってそのことよる荷重移動量の前後バランスの差というのが生まれ、ステア特性が変化するわけです。
また減衰力に関してはロールやピッチングの速度が変わるので、過渡期の挙動が変わります。
減衰力が小さければより早いタイミングでリンクの角度変化が大きくなりますし、減衰力が大きければリンクの角度変化がより遅くなります。
例えばリヤの減衰力を最弱にして走ると進入でオーバーになる、というのはそのためです。
ただしロールが頂点に達して定常円旋回のモードに入ってしまうと、サスペンションリンクは動かないので、減衰力は関わりません。


そして最後に(5)「ロールセンタの高さによって各要素の影響度合いが変わる」について、これ、本来なら数式を使って説明すべき項目なのですが、今回は記事の読みやすさを重視して数式は一切使わずに説明します。
そのぶん表現が曖昧になることから、もし具体的なことを知りたい方がおられましたらこちらのページを参考にしてください。

自動車操縦安定性口座入門<4-2、左右荷重移動におけるロールセンター高とロール剛性前後配分>

さて、クルマ全体の荷重移動量というのは車重、横G、重心高さ、トレッドの4要素で決まり、そのうちフロントとリヤがどれくらいのバランスで荷重移動を負担するのか?というのはロール剛性とリンク角度で決まる、というお話をしました。
その結果、フロントの荷重移動量が増えるのであればフロントタイヤのコーナリングフォース(左右合計)が減りますし、リヤの荷重移動量が増えるのであればリヤタイヤのコーナリングフォース(左右合計)が減ることになるわけですね。

ところでクルマというのは重心とロール軸との距離(ロールアーム長さ)が長いほどロールが大きくなります。
逆にロールアーム長さが短くなるとロールは小さくなるのですが、もし仮にロール軸と重心の高さが全く同じ、つまりロールアーム長さがゼロだった場合はどうなるんでしょうか?
このとき、クルマはコーナリングしてもサスペンションが全くロールしない状態になります。
ただしそれでも荷重移動はするので、タイヤのたわみ分はクルマが傾きます。
サスペンションがついていないクルマというか、四角い箱にタイヤだけ付けたようなものというか、そういう状態になるわけです。
(ちなみにそこからさらにロール軸を上げるとロールの方向が反転します)

このとき、荷重移動の前後バランスはどのようになるかというと、1Gの前後重量バランスと同じになります。
つまり前後重量バランスが60:40のクルマがあったとして、ロールアーム長がゼロになるところまでロール軸を上げると、コーナリング時の荷重移動の前後バランスも60:40になります。

今度は逆に、ロール軸を下げてみましょう。
ロール軸をどんどん下げていって地面と同じ高さのところになると、ロールアーム長さと重心高さが同一になるので、今度は荷重移動の前後バランスが前後ロール剛性バランスと同じになります。
このとき、1Gの前後重量バランスは関係なくなるので、例えば1Gの前後重量バランスが60:40で前後ロール剛性バランスが50:50のクルマがあったとして、このクルマのロール軸を地面と同じ高さにすると、荷重移動の前後バランスは50:50になります。
(ちなみにそこからさらにロール軸を下げるとリンク経由で車体に入るモーメントの方向が反転しますが、ロール剛性によるモーメントと相殺されるので、最終的なロールの方向は変わりません)

最後に、ロール軸の高さを重心高さの半分の高さにした場合はどうなるでしょうか?
今度は1Gの前後重量バランスと、ロール剛性の前後バランス、それぞれの影響を半分ずる受けることになります。
そこから少しずつロール軸を上げていけば、1Gの前後重量バランスの影響がより濃く出ることになりますし、少しずつロール軸を下げていけば、前後ロール剛性バランスの影響がより濃く出ることになります。

さて今回、文字だけで説明するにあたり、読みやすさのためにトレッドの影響を省きました。
基本的な傾向としてはこの説明で問題ないと思いますが、細かい計算をしたい方は場合によってはズレが生じてくるので、具体的なことが知りたい方はやはり自動車操縦安定性口座入門<4-2、左右荷重移動におけるロールセンター高とロール剛性前後配分>を履修してください笑





というわけで今回のブログは以上になります。
お疲れさまでした。
ロール剛性を変えたり車高を変えたりしたとき、一体どういうメカニズムによってステア特性が変化するのか?ということについて書きました。
これはいわば荷重移動系の調整であり、ステア特性の調整にはこのほかにタイヤ空気圧やアライメント、空力の調整などがありますが、荷重移動に関する部分はサスペンション・メカニズムを考えるうえで最も基本的なところの一つなので、何かの参考にして頂ければ幸いです。
Posted at 2024/06/13 12:33:28 | コメント(0) | トラックバック(0) | 日記

プロフィール

「@Garage K 個人的には、「グリップする」=「より大きなグリップ力(コーナリングフォースまたは加減速力)を出せる」という意味かなと思って読んでましたが^^;
この件面白いんで記事にしますね!」
何シテル?   12/13 20:54
福井のロードスター乗りです。 ロードスターは現在休眠中。 タカスサーキットをホームコースとしてサーキットアタックしていました。 GPSロガーの結果を元...
みんカラ新規会員登録

ユーザー内検索

掲示板

<< 2024/6 >>

      1
2345678
9101112 131415
16171819202122
232425262728 29
30      

リンク・クリップ

荷重移動量簡易計算ツール 
カテゴリ:その他(カテゴリ未設定)
2025/01/28 18:05:40
幌っとOUT 
カテゴリ:ロードスタークラブ
2009/04/16 23:19:49
 

愛車一覧

マツダ ロードスター マツダ ロードスター
14年式のNB3型1,8RSです。 足回り以外はだいたい純正のままです。
ヘルプ利用規約サイトマップ
© LY Corporation