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2013年11月05日 イイね!

Jaguar IRS ラジアスアーム

IRSとは"Independent Rear Suspension"の略で、リアの左右独立懸架のことです。


初代IRSはEタイプで採用され、最終的にアストンDB7に流用されて何と1961年から2003年の42年もの長きに渡って使われ続けました。
1961年時点で如何に優れたシステムであったのかがよく分かります。


さて、そのシステムを使っているXJS/Sr-3には、ブッシュの劣化で悪名高い「ラジアスアーム」が付いている事を、オーナーでなくともご存知の方も多いと思います。
正直、私もこのアームの役割が何なのかはっきりと分からないまま今まで来ていましたが、今回調べてみると意外な事実が分かりました。
この話をするためには、まずジャガーの初代IRSの構造について理解しなければなりません。


初代IRSはデフ/ドライブシャフト/ロアアーム/ブレーキを、大きなケージの中にダイレクトマウントし、そのケージをボディにゴムマウントでつなぐという方法で搭載されていました。



EタイプのIRSを丸ごと下ろした写真です。
前に2本ぶら下がっているのがラジアスアームです。


XJSの車載状態ではこのようになっています。




上で、サブフレームはゴムでマウントされていると書きましたが、具体的には4個のV字ゴムマウントと2本のラジアスアームでボディと繋がっています。




サブフレームマウントの形状です。



V字マウントで、大きな隙間が設けられており、ある程度の動きを許容しています。


Vマウントは明らかに柔らかく作られており、その4つだけではリアアクスルにかかる全てのパワーをいなしきれないので、ラジアスアームにもその荷重を分担させています。
これはいわゆるフローティングマウントで、乗り心地や遮音性の向上にも寄与していますが、もうひとつ面白い役割があります。


全てボディと繋がっている部分がゴムであるという事は、これらの部分には動く余地が生まれるという事です。
ラジアスアームはサスアームの上下とともに半円を描いて動きますが、サスアームが動いてラジアスアームが斜めになると、サスアームは車両の前後方向にねじれなければならない事になります。
ラジアスアームが動くと、サスアームとの接続部がどういう風に動くかを極端に表してみたのが次の図です。




このとおり、ラジアスアームが動くと、アームは前に引っ張られる形になります。
しかし、デフはサブフレームにボルトでダイレクトマウントされていますし、ロアアームもサブフレームとベアリングで接続されているため、動き代はありません。
こうなると、動くのはどこか。
ゴムでマウントされているサブフレームマウント部分になります。



図のようにサブフレームマウントがよじれ、サブフレームケージごと動きます。
カーブで外側が大きくロールすると、ロールした方のサスペンションは上図の下の図のようになっている訳です。
これを上から見ると次のようになります。




ちょっと分かりにくいかもしれませんが、曲がりたい方向へ後輪のトー角がわずかに動くのです。
初代IRSにはこのようなパッシブステア効果が与えられており、ラジアスアームや遊びの大きいVマウントはその効果を生み出すのに大きな役目を果たしていたという事なのですね。


フロントヘビーでアンダーステアになりやすいジャガーをニュートラルステアに近づけているのはこれだったと言う訳です。
私も乗っていて、カーブで踏み込んだ方が曲がるような感覚をいつも覚えていてどうしてだろうと思っていたのですが、こういう事だったようです。
この効果はゴムマウントを介して生まれるものですから、場合によっては挙動が「不安定」という事に繋がる事もあるでしょうが、素人が公道で乗る分には、パッシブステアによって生まれるメリットの方がずっと大きいでしょうし、限界に至るまでの挙動もマイルドになりコントロールしやすいのではないかと思います。


逆にというべきか故にというべきか、レーシングカーにおいては、サブフレームをダイレクトマウントし、さらにストラットバーを追加してボディにサブフレームをがっちり固定してしまう方法がよくとられていたようです。
その場合はもちろんラジアスアームも廃されていました。


V12モデルのXJSで、リアのアンチロールバー(スタビライザー)が途中で廃止された理由もこれで説明がつきます。
アンチロールバーが取り付けられると、ロールが減る上に、IRSとボディの接合部分が増える事になり、パッシブステア効果はかなり薄れると思われます。
すると、フロントヘビーなV12ではアンダーステアが極端に増し、さらには限界時の挙動もピーキーになって、テールが一気にブレークする危険なクルマになります。
アンチロールバーを入れるのはチューニングの基本と言うような考え方もありますが、XJSに置いてはそう簡単な話ではないようです。


トムウォーキンショーが運転するグループAのXJSでは、逆にリジッドマウントされたIRSの挙動を利用し、コーナーでタックインしつつ4輪ドリフトに持って行っている様子が確認出来ます。



超一流のプロだからこそ出来る芸当ですね。


それにしても、開発は1950年代から始まっていたのでしょうから、当時のエンジニアの発想にはただただ驚かされるばかりです。
調べてみるとジャガーと言うクルマは本当に面白いですね。


ラジアスーアームの重要性が分かった所で・・・私も延び延びになっているブッシュ交換しないといけません・・・
Posted at 2013/11/05 06:24:09 | コメント(9) | トラックバック(0) | 日記

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