
段付カッコイクナイ(・A・)
でもまあ、仕方のない事だったりもします
チームの問題というより、FIAのレギュレーションの問題ですね
レギュレーションのお話からしていきましょうか
今年からフロントノーズ先端の高さを550mmに規定するレギュレーションが定められました
衝突時の安全性やドライバーの視野確保を考慮したものだと言われています
実はチームも好き好んで、つまり機能の為にこれだ!!と思ってあんな形にしたわけではないのです
どちらかと言えば、「こうするよりなかったorz」という妥協の設計かと思います
なぜ妥協せざるを得なかったか?
今日はこいつを話題の中心にしてみたいと思います
さてさて、この20年くらいですっかり見慣れてしまったハイノーズですが、なぜ上げるのか???疑問に思ったことはありませんか?
機械的に考えるとモノコックが持ち上がった分だけ重心も上がりますから実は不利な要素も持っていたりします
で、各チームがなぜ泣く泣く???段付ノーズを採用したのかを考える上で、ハイノーズって何がいいの???という疑問を解決しないと理解できないかと思います
いくつかの要素がからんできますので、長いですが順を追って書いていきます
長文が嫌いな方は「覚えておく事」だけチェックを(笑)
まずモノコックのお話
F1…というかフォーミュラカーの場合、ドライバー保護の目的からモノコックの容積…というか断面積が決められています
クラッシュした場合にドライバーの生存空間を確保するためです
そのためモノコック先端での断面積はおそらくどのチームも同じようなサイズになります
まず1つ覚えておいてください
次にモノコック下の空間のお話…なぜノーズを上げたいのかに関わります
実はノーズの高さが重要なのではなく、このモノコック下の空間をいかに確保するかが大切です
なぜ???と言われる実はすごく困るのですが(滝汗)
理屈を説明するにはいくつが図が必要になるので…
あ、そうだ!!
http://www.mooncraft.jp/yuratakuya/
某「違いの分かる男」のHPです
こちらのモータースポーツ塾第6話「フロントノーズって厄介者?」を参考にしてみてください
私の方でも簡単に説明すると
・フロントウイングの効率を上げる為には周辺に空気の流れを妨げるものがないほうがよい
・ノーズを持ち上げるとウイングのレベル(高さ周辺)では流れを妨げる物が随分と減る
・まずこれでフロントのダウンフォースに関して「ウマー」な状態が生まれます
さらにマシン中ほどから後方に関しても
・ウイングを通って来た空気の流れとは言え、タイヤでかき回された空気よりは随分ましで流量も充分にある
・ドライバーのお尻のある辺りで出来るだけスムーズに車体左右に分けて、クリーンな空気をラジエーター等が収まるサイドポンツーンに導きます
・流速が高いので開口面積が小さくてもよく冷えるようになりますね、勿論開口部≒空気抵抗ですから抵抗も減ります
・少ない開口部で各種冷却器を冷やす事ができるとなると、ノーズ下から取り込んだ空気は余ります(すいません、ちょっと適切な表現ではないですね…)
残った分をどうしようか???と頭のいい人たちは考えました、そうか整流しつつ後ろに流してしまえ!!と

これはマクラーレンの画像になりますが、サイドポンツーン下方がえぐれていますよね、ここに沿って後方に空気を流します
・これによってマシン後方でも良好なエアフローを得られることになり、リア周りの空力パーツの効率が上がりますね、リアダウンフォース的にも「ウマー」になるわけです
つまりハイノーズというのは車両全体において良好なエアフローを得る為の重要、かつ入口になる要素なんです
因みにフロントタイヤ付近を通過した空気は「マズー」なので、パージボードだったり、最近ではサイドポンツーン前方の…名前が分からないですが(汗)フィンによって車体付近を流れる気流からできる限り分離しています
長々説明しましたが、モノコック下の空間が充分でないとダウンフォース的に「マズー」になると覚えていてください(笑)
で、覚えて頂いた二つの要素、「モノコックの断面積は小さくできない」、「モノコック下に充分な空間を確保したい」この二つの要素を両立させるには…
そう、ノーズやモノコック前方をできるだけ高くしてやりたいわけです
なおかつ、なるべく空気はスムーズに流してやりたいわけですから、ノーズの先端の高さは高い方が都合が良かったわけですね
ところが今年のレギュレーションでノーズ先端の高さが規定されてしまいました
エンジニアたちは「やっべ!!ダウンフォースどうすんのよorz」と思った…かもしれません
で、よくよくルールを読んでいくと、規定されているのは「ノーズの高さ」なわけです
モノコックに関して特に制限する事項はありません
「…じゃあ、とりあえずノーズだけ薄くしておけばOKか(汗)」と考え付いたわけです…きっと(笑)
勿論、段付は望ましい形状ではありません
モノコック上を流れる気流を乱す事は間違いありませんから、だって新しいレギュレーションができるまでドコもやっていませんもの(笑)
でも、モノコック上の気流を乱す事になっても全体的にモノコックを低く建造するより空力的な影響が少ないからこその選択なのだと思います
因みに
個人的にはフェラーリのノーズってまだダミーだと思います
あれじゃあモノコックサイドへ影響を及ぼしやすいので、実戦までにはもう少し変わるのではないかと思います
さて、ノーズの段付が仕方ない事だとしてここまで話を進めてきましたが、実はノーズに段のないチームがあります
マクラーレンです
例年やや低めのノーズデザインでマシンを造っているチームではありますが、頑張れば段無でもいけるのかもしれませんね
次のブログではほぼ100%図面屋の妄想になりますが、なぜマクラーレンは段無で大丈夫なのか考えてみたいと思います
参照URLは海外サイトですが、フェラーリの2011モデルと2012モデルを画像で分かりやすく比較しています
段を付けてでもモノコック下の空間を確保したことが分かりやすいかと思います