ポルシェは、なぜ低重心に拘る！

クルマを構成する部品の中で、エンジンが一番重いことは誰でも想像が付くだろう。
その構成部品の中でも、要であるクランク軸が特に重い。
つまりエンジンのクランク軸を如何に低く据え置くか、これがスポーツカーたる所以のコントロール性を決定する。

次いで重いシリンダー・ブロックであるが、直列では真上、Ｖ型ならクランク軸の斜め上に載ることになる。その点、水平対向ならば、クランク軸と同じ高さとなり最大の利点となる。
ただし、フラット・エンジン自体を高い位置に据えてしまっては、せっかくの美点の享受が無いのは言うに及ばず。（ＧＴ３の透視図にエンジンのクランク軸を赤く記すが、９３０はもっと低い！）

理想のエンジン位置とは・・・車軸の高さに重心を据えること。
サスレバ、最大重量物による車体のロールは最小限となり、タイヤは全幅でグリップ力を発揮することになる。もし重心が上がれば、その分車体のロールは大きくなり、伴ってタイヤも変形する。
更に、サスペンション・アームが短いほどに、この傾向を相乗的に助長する。

路面に対してタイヤが変形するほどに接地面は減少し、グリップを失う瞬間を早める。
グリップ力減少をハイグリップ・タイヤで誤魔化そうとするならば、ロールの増加を繰り返し、
やがて臨界点に達した時には既に制御できるスピード域ではないだろう。

常に安定した姿勢を保てなければ、当然コントロール性が悪いと言うことに他ならない。
それは即ち・・・スポーツカーとしては致命的な欠点ということになる。
ゆえに、ポルシェはドライサンプ（関連ＵＲＬ参照）を以って低重心に拘る。
それが軽量化と共に、ポルシェ“本来”の正しい哲学だと考える。

No.185