
今日のニュースで驚愕した。
あのポルシェ専門店、テクニカルメイトの倒産。
考えられない老舗の突然の失脚。
空冷ポルシェを選ぶ、売却する人は一度は検討するレベルの店である。
中身は詮索しても当事者しか分からない。
けど、空冷ポルシェが価格高騰し、FRポルシェまでもが高騰している昨今。
仕入れるのも困難だったのだろう。
個人売買で昔は100万円で930が。
5万円でFRポルシェが買えた。
今やどちらも300万以下では見つからないだろう。
売る側もそれを分かっているので高く売る方法もいろんな選択肢が増えている。
いま、ネオクラシックと呼ばれる車の価格が異常に高騰している。
それは20系ソアラに魅了されている現在の自分も分からないでもない。
冷静に考えてみる。
ナローポルシェS。
930型911。
964型911。
964型911ターボ。
そして水冷の
ボクスター初代
2代目
ケイマン初代
私が運転した事のあるクルマである。
ナローは天文学的な価格になっているので絵画の一種だと私は思っている。
930は乗り心地がひどすぎてとても高額に見合った出来では無かった。
しかし「運転している」という感覚が一番有った気がする。
964くらいになると乗用車的になるが速いし面白いが刺激に欠ける。
しかしターボは芸術的なドッカんターボだ。このへんからリアフェンダーも芸術性を感じる。
空冷までの一貫した美しいシルエット、反り立つフロントガラス。
丸いヘッドライト。
ガサガサと特徴的なエンジン音は官能的ではないが今の車では出せない風情がある。
分からなくもない。
30年以上も前にこんなにも完成された車を作れるメーカーが有ったか?
それと同時に考えさせられる。
これらの車が、下手するとスーパーカー越え。
どんなに程度が悪くても300万。
MTだと600万スタートに適した出来か?
単純に海外からの需要に合わせて価格が吊り上がっているだけ。
サーキットでもクラウンアスリートの方が速いかもしれない。
964が600万スタートなんて馬鹿げてる。
では車の価値とはなにか。
まずはその車が楽しいか。そこにつきる。
不便を楽しむ。固いミッションをねじ込む。曲がらない車を曲げる。
音や風情。
エアコンが効かなかろうが、雨漏れしようが、部品が無かろうが。
極論遅かろうが。
やはり現代の車にはない楽しさがそこにはある。
フェラーリやランボにMT設定がない。
速いのは分かった。
凄いのも分かった。
でもそうじゃない、という人達の声をメーカーが拾ってくれているのか?
もう期待できないから、一生物を買えなくなる前に買おう。
そうやってじりじり、じりじりと上がっていったんじゃないのか。
964に600万。
素のマカンが買える訳で。
でも、そうじゃない、という人達が導き出した対価が600万なだけ。
これはメーカーの責任もある。
ポルシェの新車販売のうち、屋台骨はいまや911ではない。
マカン、カイエンで儲けてその出荷割合は60%にも達する。
ボクスターケイマンが1000万級の4気筒ターボになり。
911は肥大化し速さを求め続けている。
美しいか?姿形、サウンド。
好きなのを一台やるよ。
そう言われたら。
私なら930のMT4速ターボを選びたくなる気持ちも分からなくもない。
助手席にはだれも座ってくれないだろうけど。
紛れもなくスーパーカーだ。
かくいう私も不便とまではいわずとも、20年落ちのロードスターをもう結構なお金をつっこみ、それなりに楽しい車に仕上げたと思う。
人にも褒められる。
「綺麗に乗っていますね」
しかしそこに不便を楽しむというレベルの稀少性は今はまだ、無い。
しかし間違った選択では無かった、と思う。
普通に使えて、普通に快適で、直し切れば致命的には壊れない。
そして、そこそこに楽しい。
残念ながらキーを握ったドキドキ感はそこには、なかった。
NAロードスターの価格上昇は私にはちょっと分からない。
ドキドキ感は無かった。
座ってカギを預けられたがイグニッションを回す気持ちにならなかった。
楽しさ以外に車の価値とはなにか。
それは所有する喜び。
つまりキーを握る週末に向けて頑張れるようなときめき。
ドキドキ感である。
人とはわけのわからない事をする生き物で。
バンジージャンプなんて死の疑似体験なわけで。
空冷のポルシェにはある種その種の危うさがある。
各部から聞こえるメカニカルノイズ。
ドアを閉める時のあの、金属音。
キーをひねる時の一抹の儀式感。
ポルシェは先祖返りする
という言葉がある。
結局はナローポルシェに行きつく、という事らしい。
ドキドキ感とか頑張れるモチベーションになる車なんて、人によって違う。
水冷のボクスターでツーリングする前日の夜は眠れなかった。
水冷のポルシェでも所有する喜び、はある。
しかし触れてはいけない、空冷の911に触ってはいけない。
知ってしまったら終り。
あの地に貼りつくようなベタベタの車高に金属的なドアによる
「ようこそポルシェの世界へ。」
を知ってしまうと。
速さなどどうでも良い気がしてくる。
最新を追いかけ続けるか。
先祖返りするかになってしまう。
きっとNAロードスターとNBロードスターの価格差はこの所有する喜び、に過ぎないと思う。
20系のソアラなんてのはシーマ現象の名残りみたいな、ミーハーな乗り物だったわけで。
暴走族に愛されて30万台も売れたのにもうほとんど残っていない。
タケヤリデッパのオールペン、ナンパ号だったわけで。
高いグレードが買えなかった人の間でエンブレムチューンも流行ったわけで。
今でこそ、奇跡的に残ったノーマル車のシートに身を委ね。
当時最先端だったデジタルパネルがインベーダーゲームのようで。
直列6気筒のエンジン、名機2JZエンジンの先駆けとなるエンジンの稀少性など当時はどうでも良かったのだろう。
しかし、そのエンジンから聞こえるシリンダーの音は紛れもなく直6。
獰猛な、古典的なサウンド。燃費など気にしていない。
眺めると美しいシルエット。
なぜこのサイズで1600kg?という贅沢てんこ盛りの装備。
折れてしまいそうなか細いCピラーの美しさ。
イグニッションを手に取るとドキドキする車に、なったのだと思う。
このエンジンにマフラーを入れたら...と考えてしまう。
少し脱線したが空冷のポルシェの名店が無くなってしまったのは寂しくもあり、現代の車作りへの疑問符を投げかける事件だ、とまで考えてしまった。
ここに登録するような
車バカの皆様はきっと分かってくれるだろうけど。
この先になにが待っているのか?
まあ環境が許さないよ。ガソリン車は販売不能になるでしょう。
MT免許って、なに?という若者。
2気筒になり半分は電気化。
最終的にはオール電化。
自動運転。
ナビで目的地を設定したら、寝ていても到着する時代がそんなに遠くない気がする。
僕はそんなのは車ではない、家電だね、と思う。
きっとみんなもそう思う。
家電を買い替える時に私はドキドキしない(笑)
変態扱いされてもガソリンまき散らしてエンジンと共に生きて居たい。