
新型
マーチに乗ってきました。
グレードは売れ筋の中間グレード・12X、ボディカラーはピュアブラックです。車両本体価格が100万円を切った注目のグレード・12Sに乗れなかったのは残念でしたが・・・
○だった点
・3気筒としては静かで振動の少ないエンジン
排気量が大きくシリンダー数の少ないエンジンはシリンダー1本当たりの爆発エネルギーが大きく、振動・騒音が大きくなりがちですが、新型マーチのHR12DE型エンジンはよく押さえ込んでいます。
同じ3気筒エンジンの
ヴィッツや
パッソの1Lエンジン(1KR-FE型)がちょっとアクセルを踏み込むとガーガーゴーゴーとうるさいのと対称的です。
フリクションの低減やエンジン本体の軽量化の点から少シリンダー化は効果的だと思いますが、このぐらい騒音・振動を抑えてくれるといいですね。
・取り回しのしやすさ
コンパクトなサイズ、大きなグラスエリア、サイドウインドウ見切りの低さ、4.5mと小さな最小回転半径など、先代K12型譲りの取り回しのしやすさです。
また、新型は車体の軽量高剛性化を進めていますが、そのための車体構造の見直しの中でピラーが細くなっていて、視界が非常に良好です。
・クラストップレベルの低燃費
10・15モードで26km/Lと
フィットや
ヴィッツを凌ぐ低燃費です。車体価格の安さとあいまって、これなら高いハイブリッド車を買わなくてもいいかと思えますね。
・戦略的な価格設定
最廉価グレードの12Sは車両本体価格99.96万円と100万円を切る戦略的な価格ですが、価格対策のための何も付いていないグレードではなく、車速感応式ワイパー、シートリフター、リモコンキー、フルホイールカバーなど、現代の車としては必要なものが一通り備わっています。
もう少し頑張ってほしい点
・シートが小さい
シートのサイズが小さいです。背もたれも大きくはないのですが、それより座面がすごく短いことが気になります。日本国内ではこの車は主に女性向けだからシートのサイズが小さくてもいいのかもしれませんが、グローバルでこのサイズだとちょっと「?」ですね。
マーチの試乗を終えて
スイフトに乗り込んだら、シートがデカくて驚きました(笑)
・実燃費とカタログ数値の乖離が大きい?
燃費のカタログ数値は26Km/Lと非常に優秀ですが、試乗時の燃費は燃費計表示値で12Km/Lでした。試乗コースはすべて市街地で、半分ぐらい渋滞だったという不利な条件ではあったのですが、カタログ数値との乖離がちょっと大きすぎるように思います。
ちなみに私の
スイフトのカタログ燃費18.8km/Lは、今までの総平均は17.2km/Lです。
・先代と変わらない室内空間
全長約3.78m×全幅約1.67mと先代とほぼ同じ外寸です。最近はモデルチェンジの度にどんどん大きくなる車が多い中、むやみにボディサイズを拡大させなかったのはいいのですが、室内空間が広くないのもそのままです。外寸を変えずに室内を拡大する工夫はしてないのかと思ってしまいます。
・グレード間で差が大きい価格
最廉価グレード12Sの99.96万円という価格はなかなかインパクトがあるのですが、そのすぐ上の12Xは約123万円と価格差が大きいです。12Sはオプションでも選べない装備が多く、一般的なグレードは12Xになりますが、12Sは単なる客寄せのような印象です。
・ちょっと見づらくなった前方視界
長所で書いた通り、取り回し性は大変良いのですが、ボンネットがやや高くなり、先代よりも前方が見づらくなっています。先代にはヘッドライト上に突起があり、運転席からそれが見えて車両感覚の把握に役だったのですが、新型はそれもなくなっているのが残念です。
・国内産業の空洞化につながる??
すでに各方面でアナウンスされているとおり、日本国内で販売される新型マーチは全量タイで生産されます。一昔前は、自動車は家電と違って嗜好品的意味合いもあるから、海外、特に途上国で生産されたものは受け入れられないと言われていました。
確かにこれまで日本に輸入される海外生産車は、アメリカ、イギリス、オーストラリア、オランダ等の先進国で生産されたものが主でしたが、工業生産の進展で生産される車の品質が向上するにつれ、徐々に新興国・途上国で生産された車が日本に輸入されるようになりました。
タイ産の日本ブランド車は、すでにホンダの
フィットアリアや
三菱トライトンなどが輸入販売されているので特に目新しいわけではないのですが、
フィットアリアや
トライトンはあくまでも販売台数の多くないニッチ車種であったのに対し、マーチのような基幹車種を全量輸入するのは初めての例ではないでしょうか。
この事が日本国内産業の空洞化に拍車を掛けないか心配です。ノートや
キューブ、モコ、オッティなどに押されて一時期よりも少なくなったとはいえ、それでも新型マーチの月販目標台数は4000台(2010年中は6500台)と相当なボリュームです。
もしも新型マーチがタイ産であることのネガを補うぐらい売れれば、コンパクトカーを中心に続々と新興国産に切り替わっていく可能性もあります。
今後日産は実用車種・量販車種は新興国製、付加価値の高い車種は日本製という住み分けをしていくつもりなのかもしれませんが、現状では日産の車で付加価値の高いものはあまり育ってないように思います。ハイブリッド車や電気自動車、インフィニティブランド車などをより一層育成していく必要があるでしょう。
総評
新型マーチは何はなくともタイ産であることが話題です。車の造りをざっとチェックしてみましたが、いかにも新興国産であることを感じる雑な部分はありませんでした。現代の車ですから、原産国が云々ということはあまり気にしないでもいいでしょう。
ただし全体的な印象としては、原産国云々を別としても思いきってチープに仕上げてきたなという感じです。コンパクトカーなので高級感いっぱいに…とは言いませんが、このクラスの中でもかなり安普請な感じで、先日乗った
トヨタパッソ並み、同じ日産の軽自動車・
ルークスよりも安っぽさ丸出しです。
特にルークスは軽自動車の制限の中で、内外装や走りなどできるだけ良いものを作ろうという意志を感じますが、マーチはただひたすらにコスト削減まっしぐらです。
また、マーチといえば先代K12型も決して質感は高くありませんでしたが、かわいらしい内外装デザインやカラーリングが魅力的でしたし、オートライトなど便利な装備をコンパクトクラスとしてはいち早く採用したりと、意欲的な車でした。
それに比べるとK13型の力の抜き方は、「どうせ日本国内ではこのクラスの車を買う人は車に関心ないから、安くて装備が適当に付いてればいいや、タイ産でも安っぽくても誰も気にしないだろ」とメーカーが考えてるんじゃないかと思えてしまいます。
実際にはエントリークラスのこの車こそ、自動車の本質的な魅力を磨いて、車は楽しいものだ、素晴らしいものだとエントリーユーザーに理解してもらうという重要な役割があるはずなんですが、K13型の出来では運転が単なる作業としか思えません。
パッソでも感じたのですが、露骨にコストダウンしていて、程々・ソコソコを旨とした新型車が出ると、「日本車は大丈夫か?近いうちに中国や韓国の車に追い越されてしまうのではないか?」と思ってしまいます。日本メーカー各社はもう一度誠実な車作りをしていくべきではないでしょうか・・・
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新車試乗記 日産編 | 日記
Posted at
2010/07/25 23:09:35