
日本デビューしたフォルクスワーゲン
ゴルフⅥに乗ってきました。
グレードはTSIコンフォートライン、ボディカラーはディープブラックパールエフェクトです。
(ちなみに写真は展示車のTSIハイライン(ボディカラー:シャークブルーメタリック)です。試乗待ちの人が結構いたので、試乗車の写真を撮る時間ありませんでした。)
○だった点
・日本車から乗り換えても違和感の少ない扱いやすさ
VWは日本国内における輸入車販売台数トップの常連ですが、その中でも最多量販車種のゴルフだけに、日本車から乗り換えても違和感の少ない使い勝手はさすがです。
ゴルフⅢの頃までは、走行フィールがいかにもドイツ車らしくしっかりしていた反面、街乗りではステアリングなどの操作系が重かったり、装備が日本車の水準からはかなり劣っていたりと、良くも悪くも日本車とは違うことを感じさせられました。
しかし、代を重ねるごとに操作系は扱いやすく装備は豪華にと、日本車から乗り換えても違和感が少なくなってきて、新型は日本車の扱いやすさと欧州車のしっかりした走りのいいとこ取りができていますね。
・TSIとDSGによる低燃費と運動性能の両立
先代ゴルフⅤ最大の話題といえばモデルライフ途中で発表されたTSIエンジンだと思うのですが、ゴルフⅥは最初からTSIエンジンがラインナップ、というか現状日本国内においてはTSIエンジンのみのラインナップです。
TSIエンジンは小排気量エンジンに過給器(ターボ+スーパーチャージャー、もしくはターボのみ)を加えることで、燃費性能と動力性能を両立させているのが謳い文句です。
実際に乗ってみると、122PSのコンフォートラインであっても動力性能は十分で、アクセルを踏み込むとかなり活発な走りを披露してくれます。
燃費性能についてはカタログ数値からで判断せざるを得ないのですが、122PSのコンフォートラインで16.8km/L、160PSのハイラインでも16.2km/Lと、車重約1.3tの車としては優秀な数値です。
この動力性能や燃費性能についてはデュアルクラッチ式トランスミッションの「DSG」が貢献していることも確かです。DSGは7速でオートマチック的なスムーズさと、ギアリングの差を少なくしたことによりパワーバンドを外さずスポーティなドライビングが楽しむことができました。
・質感の高い内外装
VWの車すべてに共通していますが、内外装ともに非常に質感が高いです。ダッシュボード上面はかなり厚手で柔らかいソフトパッドで覆われていますが、日本車でこのレベルはおそらくEセグメントの車でないと味わえないでしょう。また、ハード樹脂部品の質感も十分満足できるものだと思います。
各試乗レビューやみんカラのゴルフⅤユーザーの方の感想を見ると、Ⅴから質感が落ちたという意見も見られるのですが、日本車のCセグメントと比べると依然としてゴルフに大きなアドバンテージがあるなと思います。
もう少し頑張ってほしい点
・モデルチェンジ早過ぎ!!!!!!!!!!
最近の欧州車は以前に比べ全体的にモデルチェンジのスパンが短くなってきていますが、ゴルフも例外ではなく、ゴルフⅤはなんと5年でフルチェンジしてしまい、Ⅵに切り替わりました。。(Ⅰ:9年、Ⅱ:8年、Ⅲ・Ⅳ:6年)
さらにこの車はGTIなどグレード追加や、ヴァリアント、トゥーラン、プラス、ジェッタ、イオスなど派生車種も多いのですが、ジェッタやヴァリアントなんかはつい最近発売になったばかりのような気がするのに、もうモデルチェンジというのはちょっと納得いかないですね。
こんなに早くモデルチェンジするなら、最初からフルラインナップで発売すればいいのに…
・一貫しないブランドアイディンティティ
つい先ごろまで、VWの車といえばフロントグリルを通称「ワッペングリル」で統一しようとしていましたが、シロッコ、ゴルフⅥとワッペングリルを捨ててしまいました。ゴルフⅤにしても標準車は最初から最後までワッペングリルではありませんでした。
メルセデス、BMWなどはいくらモデルチェンジしても、ひと目でそれとわかる一貫したブランドアイディンティティがありますが、VWは一貫性がなく印象がぼやけます。
・広すぎる全幅
ゴルフⅥは全幅がなんと1,790mmという幅広さです。30mmはドアハンドルが突起した分とのことなので、車体の分は実質1,760mmだそうですが、それでもCセグメントの車としては幅が広いです。実際に運転すると幅の広さはあまり感じず取り回し性はいいのですが、Cセグメントの車なんですから、ボディサイズにはある程度節度が必要だと思うのですが…
・ウインカーレバーが左側
私の輸入車の試乗記でよく書くのですが、
右ハンドル車ならばウインカーレバーはステアリングコラム右側にすべきです!
マニュアルミッションでなければ左手が忙しくないからいいということなのでしょうが、DSGならば手動でギアチェンジする機会が多いのではないかともいます。左から右に直すことにそれほどコストがかかるとも思えないのですが…
ちなみにE90 BMW3シリーズの自動車教習所仕様はウインカーレバーが右側に直されています。
・ボディカラーの設定が少ない
輸入車といえばボディカラーが豊富に設定されていて選ぶ楽しさがありますが、ゴルフⅥはなんと5色しか設定されていないという寂しさです。「売れ筋の白・銀・黒を揃えときゃいいだろう」ということなのかもしれませんが、欧州仕様は11色もあるのですから、オプションでも構わないのでいろんな色を設定してほしいものです。
(ちなみに、メタリックカラーとソリッドカラーの価格が同一という点は長所ですね。)
・あまり広くない室内空間
ゴルフⅡの頃までは、コンパクトなボディサイズからは信じられないほど広い室内空間を持っているということがゴルフの特色でした。しかし代を重ねてボディサイズは拡大の一途ですが、室内がさほど広くなっているとは思えません。後席レッグルームなど室内の前後長についてはごく標準的ですし、室内幅も全幅が1.8m近くある車としてはあまり褒められたものではありません。さらに後席頭上空間、特に側頭部はやや圧迫感があります。
・坂道発進時に注意が必要
DSGなどデュアルクラッチ式トランスミッション車にありがちなことですが、上り坂の途中でブレーキをあまり強く踏まずに停車したあと再発進しようとするとヒルホールド機能が働かず、少し後に下がって焦ることがありました。停止した時はブレーキを床まで踏み込む習慣をつけたほうがよさそうです。
・DSGの操作が煩雑なことがある
下り坂で少し飛ばしている時、Dレンジからマニュアルモードにすると、7速に入っていてエンジンブレーキを利かせるのに何度もガチャガチャとマイナス方向にシフトレバーを動かさなければならず、ちょっと焦りました。変速に要する時間が少なくても、操作が煩雑では結局時間ロスが大きいように思うのですが…
・クオリティコントロールは大丈夫?
ゴルフⅥの個別の問題というわけではないのですが、私の勤め先にはVW車オーナーが3人いるのですが(ニュービートル、ポロ、ルポGTI)、彼らの車は三者三様にいろんなところ、それも日本車では考えられないようなところが壊れています。ゴルフⅥは実質先代のビッグマイナーチェンジ版なので、技術的に熟成されており、初期不良も含めて故障は多くないでしょうが、不安があることは事実です。(ディーラーの営業担当者によると、新車登録後1000kmほどでDSGを載せ換えた例もあるらしい)
せっかく買った車が散々壊れるのは困りものですし、ましてVWは大衆車とはいえ日本車よりも高い値付けをしているのですから、壊れなくて当たり前というぐらいのクオリティコントロールをしていただきたいものです。
総評
世界中の小型車の手本となる車だけに、相変わらずそつなくまとまっています。ゴルフⅥのラインナップの中でもっともベーシックなコンフォートラインでも、突出した部分はありませんが、作りのよい内外装、TSI+DSGによるスポーティで質の高い走りなど、実際に触れて乗ってみると「ああ、いい車だな」と感じます。
ただ、昔は日本車など他の小型車を圧倒していたゴルフも、代を重ねるごとに普通の車になってきたなと感じます。上にも書きましたが、ボディサイズがブクブク肥大化していることや、その割りに大して広くない室内、頻繁なモデルチェンジなど、世界中の車のお手本となり、尊敬を集めてきたゴルフとしては「?」と思う点も見られます。
特にモデルチェンジのサイクルは明らかに短過ぎます。標準ゴルフが登場してそれでおしまいというならともかく、今後GTIやジェッタ、ヴァリアントなどのバリエーションが登場してくるのならば、モデルチェンジのサイクルは長くすべきだと思うのですが…
昔の日本車のようなあこぎなことをせず、車そのものや売り方に至るまで、ゴルフは世界中の自動車の良心的存在であってほしいものです。
※関連試乗記
VWティグアン乗ってきました