
先日発売されたダイハツの新型軽自動車・ムーヴコンテに乗ってきました。
試乗車は4グレードあるうちの上から2番目の「X」の2WDでトランスミッションはCVT、ボディカラーはシャンパンゴールドメタリックです。
※エンジンはKF-VE型3気筒ノンターボ(出力58PS/トルク6.6㎏・m)
ターボ付きのカスタムは発売が遅れているそうです。
(デジカメが不調だったため、カタログの「Xリミテッド」を撮影しました。アルミホイールが装備されるのが外観上の違いです。)
○だった点
・上質感のある内装
タント、ムーヴなど他のダイハツ製軽自動車がシンプル&カジュアルな内装のものが多いのに対し、コンテはスエード調の生地にダークレッドのパイピングが施されたシートなど、上質感を強調したシックな印象の内装です。
軽自動車にありがちなかわいらしさを徒に強調していないので、幅広い年齢層の方に受け入れられるのではないでしょうか。
・車高のわりに安定感のある走り
ムーヴに対して15㎜高い1,645㎜という全高ですが、ややスピードの速いコーナーリングでも安定しており、あまり高さを意識することはありません。以前ムーヴの標準車に乗ったときには、現行型の車としては異例に強いアンダーステアに驚いたのですが、コンテはそのようなことがなく、極端なスピードを出さなければムーヴよりも安心感があります
また、スズキワゴンR(標準車)と全高は全く同じですが、重心が高くグラッとロールするワゴンRに対し、コンテは低重心で遥かに背が低い車に乗っている印象です。
・元気のいいエンジン
現行ダイハツのノンターボ軽のほとんどに搭載されるKF-VE型エンジンがこの車にも搭載されていますが、CVTとのマッチングがよいようで、58PSの出力や850㎏の車重を感じさせず、非常に元気よく走ります。
もちろん、パワーが有り余るというほどではありませんが、街中の流れをリードする程度なら十分です。
・車両感覚の掴みやすさ
ムーヴをはじめ最近の軽はボンネットがスラントして、前端の感覚が非常に掴みにくい車が多いのですが、コンテは角ばったデザインで、なおかつボンネットがほぼ水平に前方に突き出しているため、車両感覚が非常に掴みやすいです。
またサイドやリヤについても、グラスエリアが大きくて角ばっており、なおかつウインドウ下端が低いため、見切りが非常に良いです。
(同じダイハツのミラはサイドウインドウが後に向かって切れ上がっていくため、車高が低いわりに見切りが悪い)
もう少し頑張ってほしい点
・シートの座り心地
この車の売り物の一つである、厚みのあるソファーのようなシートですが、座り心地を極端に言えば、カマボコの上に座ってカマボコにもたれているような感じで、体が点で支えられているような印象です。ソファーとしてはいいかもしれませんが、自動車のシートとしてはフィット感やサポート感がなく疲れやすいのではないかと思います。
またサイズもやや小さく(特に座面前後長)、この車はあくまでも女性が家の近所で乗る車だなと感じさせられます。
・車内騒音の大きさ
軽自動車としては標準の範囲内ですが、やや車内騒音が大きく感じられます。少し強めに加速すると「ヒュイーン」という音が聞こえ、最初はターボの音かと思いましたが、よく聞くとCVTの音のようです。ここ最近のCVT車はベルト駆動音があまり気にならないものが多いですが、コンテはかなり気になります。
また、標準装着のタイヤ(ハンコック製)の影響か、ロードノイズはかなり大きめです。
ムーブやミラよりも少し上質でおしゃれな車かなと思っていると、少し裏切られたような感じです。
・運転席パワーエントリーシートって有効なの?
この車の特徴的な装備として、あらかじめ記憶させた自分の運転ポジションまでボタン一つで移動する「運転席パワーエントリーシート」がありますが、スイッチがダッシュボート下部にあるため、ドアを開けて乗り込んでシートに座ってこのスイッチを押そうとすると、かなり前かがみにならなければいけません。
高級車であれば、ドアの開閉と連動してシートがスライドするようになっている車が多いですが、わざわざスイッチを押さないといけないコンテのシステムではちょっと面倒なように思います。
さらに、電動であるが故スライドの速度が遅いので、実際にこれを使う状況はあまりないのではないでしょうか。
・どこか他車と似ているデザイン
どことなく、日産キューブやホンダザッツに似ている外観デザインです。前輪駆動・ハッチバック・5ドア・角張ったデザイン・高めの全高・限られたボディサイズ・・・ だとどうしても似たデザインになってくるのはやむを得ないのでしょうが、もう少し違いを出すことはできなかったんでしょうか?「カクカクシカジカ、四角いムーヴ」と、標準ムーブに対して角張っていることを売りにしたかっただけではないか、と思ってしまいます。
付け加えて言うと、シートのデザインにはキューブもこだわっていたと思うので、内外装とも他車に似てしまうのはいかがなものかと思います。
・ウインカーの作動音
最近のダイハツの軽自動車に共通していますが、ウインカー作動時の音が「カチカチ」というリレーのような音でなく、「ピコピコ」というか「ポッポッポッポッ」とでもいう電子音で、非常に違和感があります。慣れの範囲なのでしょうが、ウインカーにはウインカーに相応しい音があるように思うのですが・・・
・リヤシートにもう少し機能があってもいいのでは?
最近の軽としては珍しく、リヤシートはシートバック分割可倒・リクライニングは二段階のみ・スライドなし・ダブルフォールディングなしとかなりシンプルです。ムーヴが多段リクライニング・左右独立ロングスライドに加え、荷室の床板にも工夫を凝らしていたことに比べると、やや力を抜いているという印象は否めません。
軽乗用車のリヤシートはあまりフルに使われる機会はないと割り切ったのでしょうが・・・
総評
私、この車はムーヴラテの後継車だと思っていたのですが、ラテは併売されるんですね。
各軽自動車メーカー、特にダイハツとスズキは軽自動車の枠の中で次々と新型車を出してきて、開発の労力がほんとに大変だと思うのですが、こんなにいろんなモデルを出してきても、本当に需要はあるのかと心配になってしまいますね。
ミラやムーブ、タントではダメで、コンテでなければならない理由はあまりないように思います。
ウエッジシェイプのムーブやベーシックなミラ、思い切り背の高いタント、スペシャリティ的なソニカなどダイハツの軽同士で比べると、レトロモダンで箱型のコンテは確かに個性的かもしれません。しかし、他社の車と比較すると、どこか日産キューブやホンダザッツを連想させるような外観デザインや、これまたキューブを思わせる内装など、同じメーカー内で違いを出そうとして、今度は他メーカーの車と似てしまい、どこか無理が出てきているような気もしますが・・・
全体的な印象は、今時のよくできた軽自動車の一つで、買い物や通勤など短時間運転する日常用途には過不足なく使えて、大きな期待をしなければそこそこ満足できるだろうという車です。この車のターゲットとするユーザー(地方在住の30~50歳代女性)には受け入れやすい車といえるのではないでしょうか。