
試乗からずいぶん経ちましたが、レクサスISのレポートをアップします。
先日のBMW320iの試乗の感銘も冷めやらぬ中の試乗で、BMWの印象との直接比較になります。BMWは3日間の試乗で、その素晴らしさに心動かされただけに、日本車トップブランドのレクサスにもかなり期待して試乗してきました。
○だった点
・トヨタの車であることの信頼感
10~20年前のトヨタ製高級車(130、140系クラウン、80、90系マークⅡ)は未だに現役で、街中でしょっちゅう見かけます。耐久性・信頼性が優れている証拠なのでしょうが、このことから考えてISも十分な耐久性・信頼性があるのではないかと思います。
高い金を出したのにしょっちゅう壊れるというのは納得できないことですから、信頼性が高いことはやはり大事なことです。
・高級感のある内外装
これもトヨタの高級車らしい点ですが、外装パネルのチリや、内装の作りのよさには高級車らしいこだわりを感じます。
よくネットの掲示板などで「中身はマークXなのに割高だ」というような意見を目にしますが、比較してみるとISの方がはるかにお金がかかった作りをしており、全く別の車であると感じます。
・ミラーが大きくて見やすい
空力的に形状を考えられていて、風切音の低減が図られているそうですが、その割には角ばっていて後方確認が大変しやすいと感じました。(ミラーが見難いBMW3シリーズに乗った後なのでなおさらですが)
・運転感覚を演出する努力
巡航時の室内騒音は極めて静かですが、アクセルを踏み込んだ際心地よいエンジン音が聞こえてきて、スポーティーな気分を演出します。この点は過去のトヨタの高級車とは全く考え方の違う部分です。
・アクセル開度とスロットル開度がリンクするようになった
以前のトヨタの高級車といえばアクセルを少し踏んだだけでガバッと前進して、微速調整がしにくい印象がありましたが、ISはアクセル開度とスロットル開度がリンクしており、どんな速度域でも自然で運転しやすいです。
欧州車では当たり前のことですが、トヨタの高級車に対する考え方の変化を感じる点で、是非他の車にもフィードバックしていただきたいものです。
もう一歩だった点
・運転の楽しさの演出はもう一歩
高速域のスタビリティが高く、従来のトヨタ製高級車と比べて安心感は上なのですが、BMWに比べると運転感覚が希薄でスピードを出してもそれほど楽しくありません。
にもかかわらずスピード自体はいつの間にか出ていて、速度計を見て結構出していることに気づくという感じです。
(BMW320は速度を出すことが楽しく、またその速度を自分の制御下に置いているという安心感を常に得ることが出来ました。)
またエンジンについては、噂通り滑らかなフィールなのですが、パワー感はあまりなく、150PSのBMW320の方が上回っているように感じます。
・ディーラーは頑張っているんだけど…
試乗から帰ってくると商談席に受付の女性から「○○様 ご試乗お疲れ様でした。 ~ 本日はごゆっくりおくつろぎ下さい。云々」という手書きのカードが置かれていましたが、すぐそばにいるんだから、口頭で言えばいいのでは?と思いました。
レクサスの接遇は高級ホテルのものを非常に参考にしているようですが、形をトレースすることにとらわれて、心が十分に伴っていない印象です。
(あ、もしかして私がレクサスに相応しくないと判断されて、とりあえず形だけやっといたのでしょうか(笑))
あと、商談についても、率直に言って慇懃無礼さを感じる部分があり、車の話をあれここれできたBMWの営業担当者と比べ楽しくありません。(これは営業担当者本人の性格にもよるのでしょうが)
オーナーの方のブログを読むと、レクサス店の接遇の真価は、何回も商談に行ったりとか、実際に購入した後でないと感じることができないのかもしれませんが、初対面の印象はきわめて重要です。
・ユーザーがトヨタに管理されているような気がする
これはISに限ったことではありませんが、G-Linkについてですが、私は田舎に住んでおり、通勤主体の使い方をするためナビは必要なく、またシャッター付きの自宅車庫に入れる予定なので、G-Securityも必要ありません。しかしレスオプションはないそうです。
G-Linkの総合的なシステムがレクサスのサービスという考え方なのでしょうが、必要ないものに高いお金を出すことには抵抗があります。
本当の高級車ならば、顧客のあらゆる要望に応えられるのでは?(まして無茶苦茶な物を付けろというのではなく、必要がないので今付いている物を外してくれということですから)
意地悪な見方をすれば、G-Linkは車両の所在や状態をトヨタが完全に把握したいがための仕組みなのかと勘繰ってしまいます。
たしかに、運転中に急に体調が悪くなった場合にヘルプネットは有効でしょうし、車両盗難のリスクの高い高額車だとG-Securityがあると安心でしょう。
しかしどんなに対策を施したところで、人生にはリスクというのは必ず存在するわけですし(そもそも、自動車を運転するという行為そのものが大きなリスクです)、それに対してどのような対策を行うかについては、あくまで個人が選択するものであって、他者から押し付けられるものではないと思います。
トヨタは社会的影響力が非常に強くなったが故、安全性や環境性能を向上させる装備の標準化に取り組んでいますが、直接人命に関わるもの(例えば最近話題になったサイド&カーテンシールドエアバッグなど)以外はあくまでメーカー側は選択肢を準備するのみとし、ユーザーの裁量に任せるべきではないかと考えます。
総評
結論から言うと、ちょっと残念ながら、車そのものは私の好みとは違うかなという感じです。BMW320が私の好みにドンピシャで、ISは3シリーズとボディサイズが近く、また3シリーズをかなり参考にしていると思われるので、走りも近いと思っていたのですが、実際は全くといっていいほど性格の異なる車でした。
いかにもトヨタの高級車らしく、ハードの出来は非常に優れているのですが、3シリーズに比べるとアクが弱いというか、車好きの心を鷲掴みにするというほどではありません(その奥ゆかしさがレクサスの個性ではあるのですが)。
あと、ディーラーの接遇については噂どおり丁寧なのですが、私の年齢ではこの店に来るのはちょっと早いのかな、という気がします。
店舗そのものについては、BMWディーラーは広くはないのですが、M3、Z4、3シリーズ、5シリーズ、7シリーズ、X3、X5など個性的かつ魅力的な車が並び、商談席から眺めているだけで楽しいのですが、レクサスディーラーは商談席がパーティションで仕切られて、営業担当者と二人の世界になるため(笑)、正直結構緊張するというか疲れました。
あと、これは今後の展開次第ですが、現時点では取り扱い車種数が少ないため、展示車のバラエティがあまりなく、BMWディーラーほどは楽しさが感じられませんでした。
あくまで私見ですが、レクサスディーラーは基本的に車が好きな人間よりも、車自体にはあまり興味がない富裕層(これまであまりこだわりなくクラウンやセルシオを購入していた人)がメインターゲットであるという気がします。
それに加えて、輸入車に顧客を奪われたくないというトヨタの考えが強く出ているという印象です。
残念ながら、今回は同じお金を出すなら、3シリーズかなという印象です。