
超注目の三菱の電気自動車・
iMiEV(アイミーブ)
に乗ってみました。
ボディカラーはレッドソリッド/ホワイトソリッドです。
最初にお断りしておきますが、試乗車は先日発表になった市販仕様ではなく、三菱自動車と全国の電力会社との走行実証実験でも使われている、三菱自工所有の先行仕様です。機関部分に違いはないそうですが、ヘッドライト・テールレンズの意匠他、細部に違いがあります。
まず運転方法ですが、基本的には通常の内燃機関自動車と同じです。
エンジンスターター(スマートキー)を捻るとメーター内に「READY」のインジケータが点灯し走行可能になりますが、このあたりはハイブリッド車の経験がある人なら違和感はないと思います。
電気自動車で気になる充電方法・充電時間ですが、満充電までは家庭用100V電源で14時間、200V電源で7時間、専用急速充電器で約30分です。
この急速充電システムは自治体や電力会社などの協力のもと、ショッピングセンターなどに設置される予定とのことです。
○だった点
・電気自動車を一般向けに発売したこと
電気自動車そのものは非常に長い歴史がありますが、航続距離の短さや充電時間の長さ、車重の重さ、バッテリーの持ち、車両価格の高さなどの問題から、限定した範囲内での使用や行政機関等が購入することが大半でした。
iMiEVも今のところ行政機関などに対してリース販売が中心のようですが、まもなく一般ユーザーからの申し込み受付を開始するようです。
車両価格や航続距離など、iMiEVはまだまだガソリン車・ハイブリッド車に太刀打ちできるものではありませんが、このような革新的な車を一般向けにも販売の窓口を開いたことを評価したいですね。
・異次元の加速
加速感がこれまでの内燃機関自動車では経験したことのない、全く異次元のものです。
従来の車の加速が自分の足で地面を蹴っている感覚とすれば、iMiEVの加速感は空母から戦闘機を発進させる際のカタパルトに載っている感じというか、車の前方から巨大な手で掴まれて引っ張られているような感じです。
iのガソリン(ターボ)仕様はもとより、遥かに格上の車も凌駕する加速感です。
・静粛性が高い
電気自動車ですから当然のことですが、エンジン音が全くなく非常に静かです。アイドリング(?)や停車時はもちろんですが、例えばハイブリッド車ならそろそろエンジンがかかるなという領域でもエンジン音はして来ず、どこ速度域でも静かです。
アクセルを踏むと「クーン」というか「ヒューン」という音が聞こえてはきますが、ごく小さいレベルで気になるものではありません。
これだけ走行音が静かなら、ロードノイズや風切り音が気になるところですが、それらの遮音も軽自動車としてはかなり高いレベルです。
もう少し頑張って欲しい点
・航続距離を伸ばす努力を
公称航続距離は満充電で160キロです。これでもちょっと厳しいかなと思うのですが、エアコンを使用するとかなり悪化するようです。冷房を使って悪化するのはまだ理解できるのですが、この車は暖房が水を電熱ヒーターで温めるという方式で電力消費が多いため、暖房使用時に航続距離が著しく短くなるようです。
(100キロも走らないのでは?という話もあるようです。)
機構上燃費の悪化はやむを得ませんが、今後さらに航続距離を伸ばすための研究開発をお願いしたいものです。
・やや車重を感じる走り
車重が1100kgもあるため、走っていると時折車重を意識させられる場面があります。加速性能については上記の通り極めて優れているのですが、路面のギャップを乗り越えた際に、ガソリン仕様のiでは全く感じられない「ドスッ」という感じの動きがあります。(決して不快なレベルではありませんが)
また、コーナーではロール速度が緩やかで、良く言えばゆったり、悪く言えば慣性マスの大きさを感じる鈍重な動きです。
この車重の悪影響が最も大きいのがブレーキ時で、ガソリンiより明らかにブレーキの効きが悪いです。ガソリンiは前後重量配分の特性上、ハードブレーキング時でも車の姿勢が非常に安定していますが、iMiEVはそこまでの安定感はありません。
ブレーキシステムがガソリン仕様と共通かどうかは確認できなかったのですが、共通ならばもう少しブレーキを強化してほしいものです。
※
この車重による前後重量配分の改善のおかげで、ガソリンiは前軸荷重が少ないため、コーナーでブレーキを踏んで荷重をかけてやらないと、思いの外アンダーステアが出たり、高速走行時に横風でフラフラするということがありましたが、iMiEVは常に安定しています。
・走行中の充電はほとんどされていない?
メーターパネル内にハイブリッド車のようなパワーメーターがあり、アクセルを踏み込んだ際にはパワーゾーン、アクセルを戻した際には回生発電により充電されていることを示しますが、街乗りにおいては針がゾーンを示すことはほとんどありませんでした。
これぐらいアクセルを戻せばプリウスならかなり回生発電されるだろうなあ…という状況でもほとんど充電されないようで、何やら貴重な電気を無駄遣いしているようです。
総評
非常に乱暴な結論を言ってしまうと、まだまだiはガソリン車やハイブリッド車の敵ではありません。購入時の助成金を含めてもガソリンiの2倍以上の価格、ガソリンiの3分の1程度の航続距離、充電にかかる時間の長さと急速充電ができる拠点の少なさから、現時点では実用性に大きな問題があると言わざるを得ません。
ただし、この車は今まで行政機関や一部の企業向けだった電気自動車を一般の人間にとって一気に身近なものにしました。ハイブリッドだけではない環境対応車の選択肢が増えることは歓迎です。
電気自動車は技術革新が急速で、来年以降日産から低価格の電気自動車が発売されるようです。三菱は先行者として引き続き技術革新を続けていただきたいものです。
率直に言って現状のの価格(本体約460万円、助成金込み約320万円)はまだ高いです。私個人としては現在の性能ならば、250万円なら出してもいいかなと思います。
※リンク↓
i(ガソリン仕様)試乗記
Posted at 2009/07/23 23:00:32 | |
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新車試乗記 三菱編 | 日記