さて、先日
アライメント調整をしたと書いた訳ですが、
その一週間後にはもう一回アライメント調整しちゃってたりしてて、
会う人会う人に「何が気に入らなかったの?」と訊かれます。
そりゃそうですよね。
アライメント調整すると数万円の工賃が掛かる訳で、
そうそう頻繁に調整する人は滅多に居ないというか、
私の周りでも、私以外にやってる人を見た事がありません(爆)
その度に「仮想キングピン角を弄ってスクラブ半径の調整をした」と説明してるんですが、
説明してても、こりゃ伝わってないな…という雰囲気ですので、
改めて文章にしてご説明してみようかと思います。
アライメント調整をした事がある方ならデータシートをお持ちかと思いますが、
そこには仮想キングピン角はKPIまたはSAIと表示されてます。
テスターの種類によってはこれが記載されてない事もあるかもしれません。
で、この仮想キングピン角とは言葉通り仮想キングピン軸の角度を表してるんですが、
キングピン角とかキングピン軸という言葉の前に仮想と書かれてるのが気になりますね?
そう、最近の車にはキングピンという物が付いてないんです。
大昔の車や、現在でもトラックなんかにはキングピンという部品が存在するんですが、
最近の乗用車では他の部品の構成によって省略する事ができるので、
わざわざキングピンという部品が取り付けられてないんです。
しかし今でも仮想という形で名前が残ってるという事は、
それなりに重要な意味を持っています。
この仮想キングピン軸を一言で言うと、
ステアリングを切ると、この軸を中心にタイヤが左右に回転するようになってます。
ダブルウィッシュボーンやマルチリンクを含めると面倒な話になるので、
スバルの車に使われてるストラット形式を例にすると、
フロントのダンパーの頭と、ロアアーム先端のボールジョイントを繋いだ線が
仮想キングピン軸で、これを中心にしてタイヤが左右に回転しています。

(借り物の画像なんですが、問題があるようなら消します。)
この画像ではオレンジ色の線が仮想キングピン軸なんですが、
タイヤの中心線の内側で地面に接してるように描かれてますが、
最近の車では大体タイヤの中心付近で地面に接地するように設定されてます。
というのも、この接地点がタイヤの中心から離れてれば離れてる程、
タイヤに前後方向の力が加わると勝手にタイヤが左右に回転しようとしますからハンドルが取られます。
つまり、タイヤの回転軸の中心がタイヤの接地面の中心にあれば、
例えタイヤに前後方向の力が加わったとしても影響は少ないですが、
この回転軸の中心が接地面の中心からズレてればズレてる程、
スロットルを踏んだりブレーキングしたりしてタイヤに前後方向の力が加わった時に、
この回転軸を中心にして勝手にタイヤが左右に回転しようとしてしまう訳です。
路面の状況によっても勝手にタイヤが左右に回転しようとするんですが、
左右のタイヤに掛かる力が完全に等しければ、
左右のタイヤそれぞれが反対方向に同じだけ回転しようとするのでバランスが取れますが、
そんな状況はまずありえないので力が強い方に回転しようとします。
社外品のインセットが大きく違うホイールに換えてツライチにしたら
轍やブレーキングでハンドルが取られるようになったというのは、
仮想キングピン軸の接地点とタイヤの中心が大きく離れて、
スクラブ半径が大きくなった事が原因なんですね。
車高を下げたり、ピロアッパーでキャンバーを調整したりすれば仮想キングピン角は変化しますし、
ホイールのインセットを変えるとタイヤの中心点が移動しますので、
この関係というかバランスが変化する可能性が大いにあります。
逆に言うと、純正のキャンバー調整機構やピロアッパーを駆使して、
上手い事ゼロスクラブに持っていければ、
(仮想キングピン軸の接地点とタイヤの中心点を同じにできれば)
路面が荒れてようが轍があろうがビタッと安定するようになりますよ。
試しに車が停止した状態でステアリングを左右に据え切りしてからジャッキアップすると、
タイヤが地面に擦れた跡から、どこを中心にしてタイヤが回転してるか分かると思います。
その中心をタイヤの中心に近付ければ近付ける程快適に走れるようになると思います。
快適に走れますって言い方もアレですが、
要するに駆動力や減速力、路面の走行抵抗といったタイヤの前後方向に加わる力が、
ステアリングの操舵感覚に影響を与えづらくなるって事です。
ちなみに車高調を組んで車高を落としつつ、
ホイールのインセットを減らしてツライチにしてる場合なんかは、
完全にゼロスクラブまで持っていく事は難しいと思いますが、
純正のキャンバー調整機構で目一杯ポジティブキャンバー方向に振った上で、
ピロアッパーで希望のキャンバーにセットするとゼロスクラブに近付くようですよ。