
PHEV(プラグインハイブリッド)は、EVと内燃機関の “おいしいところ” を両立させる技術として、ここ十年で大きく進化してきました。
私は2018年から今日に至るまで、PorscheのPanameraを二世代にわたって所有し、現在はFerrari 296GTSでもPHEVを体験しています。
両者は同じPHEVでありながら、その思想は驚くほど異なります。
この記事では、Panamera 4E-Hybrid(971後期)とFerrari 296GTS、二つのPHEVの対比を通して、“PHEVという技術の幅” を考えてみたいと思います。
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■ Panamera PHEV:日常をEV化しつつ、週末はGTとしての顔を持つ
まずPorscheのPHEVから話を始めます。
私は
• 970後期型Panamera S E-Hybrid(2015年登録)を2018〜2023の5年間所有
• その後、971後期型Panamera 4E-Hybridを2年間所有中
と、合計7年近くPanameraのPHEVと付き合ってきました。
● 970後期で感じた「長期使用でも安心できるバッテリー品質」
970後期は2023年に手放すまで実質8年もの歳月が経過していましたが、モーター航続距離が極端に短くなるといった劣化は感じませんでした。
もちろん n=1 の経験ではありますが、
「2015年当時のバッテリーですらこれなら、技術が進んだ現在のPHEVはさらに安心できる」
というのが正直な実感です。
● 971後期は“日常のEV”として完成度が高い
PanameraのPHEVは、完全EVでの通勤や街乗りを可能にする航続距離を確保しつつ、
週末の長距離・高速走行ではエンジン走行にモーターがスムーズにアシストする、**「二面性」**を持つクルマです。
つまりPorscheのPHEVは、
・日常=EV
・週末=GTとしてエンジン+モーター
という、極めて実用寄りで洗練されたPHEVです。
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■ 296GTS:モーターはEV走行のためではなく、“走り” のために存在する
一方、Ferrari 296GTSのPHEVは、明確に目的が異なります。
カタログ上はEV航続距離25kmとされていますが、これはあくまで「副次的な機能」。
296におけるモーターの役割は、
• アクセル初期応答の劇的な改善
• ターボラグの完全な排除
• サーキットでは最高出力を引き上げる追加ブースト
といった、“走りの質を上げるための武器” です。
EV走行モードは、自宅周辺での静粛な移動など、ごく限られたシーンのオプションにすぎません。
● Porscheが911にPHEVを採用せず「t-hybrid」を選んだ理由
PorscheはPanameraやCayenneで膨大なPHEVの経験を持っていますが、**992後期GTSではPHEVを採用せず、応答性向上のための“t-hybrid”**を選びました。
この判断はおそらく296と同じ方向性で、
「モーター=走りの性能を引き上げるための道具」
という思想が共通しているように思います。
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■ バッテリーの将来性はどうか?
長期品質は「楽観視」している
バッテリーの劣化要因は、
• 高温
• 頻回の充放電
などがありますが、これはスマホのような小型デバイスの話。
自動車は巨大な熱管理システムとコストをかけた制御があるため、状況は全く異なると期待しています。
970後期Panameraで劣化を感じなかった経験を踏まえ、私は
「現行PHEVのバッテリーは長期的に見ても大きな問題は起きにくい」
という立場です。
● 296に関していえば
仮にEV航続距離が落ちたとしても、
296のモーターは航続距離を期待したEV走行のためではなく“走行性能のため”に存在するため、劣化の影響は限定的だと考えています。
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■ 結論:PHEVは“すでに十分信頼できる技術”である
EV・PHEVを巡っては、
• インフラが足りない
• 本当に環境に良いのか
といった議論がマスでは続いています。
PHEV好きな私も環境負荷に関しては疑問を持っています。
しかし、個人が楽しむ技術として見た場合、現在のPHEVはすでに十分成熟しており、
信頼できるレベルに達していると私は感じています。
Panamera:「日常も長距離もシームレスにこなす、万能型PHEV」
296GTS:「究極のレスポンスと刺激を手に入れた、性能特化型PHEV」
同じ技術でもここまで思想が違う。
それがPHEVの奥深さであり、これからの自動車選びの面白さでもあると思います。
Posted at 2025/11/13 13:09:09 | |
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