インチアップ・インチダウンを行うためには、まず最初に自身が「どうしたいのか?」というイメージが大事となってきます。
メーカーが設定したサイズが適正解ですが、これはほぼ万人に当てはまる中間範囲を差しています。
所謂、「普通」ということです。
ところが、この「普通」って当たり前なのですが範囲が広いんです。
例えば、こんな図があるとします。
人が感じる感覚って、当然その人によって差があります。メーカーは多くの人が感じるこの「普通」の範囲に入るようにタイヤのサイズを設定します。
今、ご自身が乗っている車。メーカーが設定した「普通」の範囲内で納得しているのなら問題ありません。
「普通」の範囲内でグリップは良いけど乗り心地が少し悪いな。と思えばタイヤの銘柄を純正サイズで替えれば良い訳です。インチアップ・インチダウンは必要ありません。
しかし、自身の「普通」の範囲で右左端だった場合や普通の範囲以上に不満がある場合。
ここでやっとインチアップ・ダウンという考えになります。
ドレスアップでインチアップは、見た目重視で乗り心地は捨てますので整備不良にならない範囲で楽しめば良いかと思います。
グリップを上げたい。これはどこを走るか?で変わります。サーキットで偏平率を下げてダイレクトな操作を重視するのか?ただ、限界域付近でのコントロールはピーキーになります。逆に限界域でのコントロールを重視するのなら偏平率を上げるという手もあります。ショートサーキットとロングサーキットでも変わりますし、ジムカーナでも変わってきます。乗り手がどちらを重要視するかとなります。
レース専用でナンバーなしならどんなタイヤとホイールでも良いのですが、多くは日常でも使います。タイヤセットをサーキット専用に用意してサーキットで履き替えるのなら問題ないですが、それで日常も使うとなるとやっぱり法律に引っかかることが出てきます。
インチダウンでも、極端にダウンすると操作感覚が変わってしまい扱いにくくなることがあります。
欧州車の日本仕様なら、本国仕様のサイズを参考にする手が確実です。それ以外については一気にバランスが崩れます。欧州車の場合はスピードレンジが高いためタイヤの限界速度も200㎞/h以上で設定し、タイヤ剛性を上げています。インチダウンした際、メーカーが設定したタイヤの速度記号以下にしてしまうとタイヤ剛性が下がり車本来の性能が出ません。
スタッドレスタイヤの装着のためのインチダウンでも、安いからと言ってタイヤ幅まで下げると乾燥路でのグリップが大幅に落ちます。雪の圧接路のみを走るのならタイヤを細くするという考えも出来ますが、日常で常に圧接路のみを走ることはありません。だからこそインチダウンでタイヤ幅まで下げるということは乾燥路のコーナーでのグリップ・ブレーキ性能の低下という重大なデメリットが発生します。
車の乗り心地を良くしたいと考えたとします。
問題は、この「乗り心地」。「乗り心地」の「どこに問題があるのか?」をはっきりさせる必要があります。
コペンの場合は、乗り心地では路面からの突き上げが問題でした。段差での衝撃が屋根まで伝わり「ガン!」という衝撃と軋み音が発生するのが一番気になる点でした。偏平率の薄さ故の原因なのでタイヤ変更では改善できない問題です。だからインチダウンです。
フィールダーの場合は、乗り心地は上下に跳ねすぎることが問題でした。偏平率65で空気圧240kPaのためです。路面のうねりでタイヤがたわみ過ぎ、空気圧も高く跳ねるような動きが加わり、車が上下に動き過ぎていたのです。これが不快でした。この場合は、ホイールサイズは変更せず15インチのままで175/65+39 5Jから185/60+42 5.5jに変更しました。偏平率を若干下げてタイヤが跳ねる動きを抑えました。コーナーリングでのグリップも175では低いため185にタイヤ幅を広げています。この設定値もフィールダーのハイブリット車の設定です。
「何か気に入らない?」という漠然としたものではなく、「その中のどこが一番気に入らないのか?」という、もう一歩踏み込んだところをはっきりさせるとインチアップ・インチダウンで目指すものがはっきりしてくると思います。
あとは、他人の意見は参考程度としておくということ。
人によって感じる感覚は差があるということです。自分では「乗り心地が悪い」と感じても人によっては「悪くない。」ということもあります。自分と全く同じ感覚の人はいません。
「ブログや本にこう書いてあったから間違いない!」と思うのが間違いなのです。
ですのでメーカー規定から外れたインチアップ・インチダウンは、自分の中で自分が気に入らない点について、自分で答えを探し出すしかないとなります。
タイヤ専門店であっても、メーカー規定から外れるインチアップ・インチダウンについてはお勧めすることはありません。何かあった場合の責任がお店側に発生するからです。自身で検討してインチアップ・インチダウンのタイヤ・ホイールを購入するのなら購入者の責任ですのでお店も売ってくれます。
コペンは某タイヤ専門店での施工事例としてお店のブログに掲載されていますがメーカー指定の範囲外のため「お客様の希望で」と注意書きが書かれています。
フィールダーも掲載されていますが、メーカー指定の純正サイズ内での変更なのでこの注意書きはありません。
メーカー規定から外れたインチアップ・インチダウンで発生するデメリット(=トラブル)は、すべて自己責任となるということをご留意ください。