シトロエン初代C5の回顧録です。
私が乗り続けたC5は初代前期・後期の2.0Lセダンです。
購入のきっかけは、子供が生まれ普通自動車が必要になったためです。
通勤用のホンダ・ビート、草レース用のビートの2台持ちでした。奥さんはフルロールゲージ・ジムカーナ仕様のホンダ・トゥディRS。
そりゃ、家族が乗れる車が必要ですなあ。ちょうど良い機会であったためレースはやめました。奥さんのトゥディは残して、普通車を購入することに。
「好きな車を買っていいが、イジルな。」という条件でした。
奥さんの実家は茨城県ということもあり長距離が楽・積載量も多いに車にしよう。ミニバンは個人的に好きではないのでセダンかステーションワゴンとなります。
「絶対条件のイジルな。」
レガシー買ったらイジルよな。というか、国産車はまずイジリそう。じゃあ、外車にしてみよう。当時はカーグラを読んでいたのでシトロエン・エグザンティアが好きでした。しかしながら生産終了し、中古もあまりない状態。試乗でこのC5セダンに乗り、なぜか気に入ってしまって即購入となりました。29歳でした。
今思えば、初めての普通車で、初めての外車で、しかもシトロエンのハイドロ。何かネジが外れていたんでしょうね。普通なら引き留める案件です。
でも、試乗で乗った瞬間に「これ買う。」ってなったんですよね。
シトロエン初代C5の説明の前にハイドロラクティブⅢについて。
シトロエンの油圧式サスペンションは大まかに分類して「ハイドロニューマチック」と「ハイドロラクティブ」となります。
どちらも油気圧で姿勢変化を行うため、普通の車に見られるバネが無いのが特徴です。
余談ですが、ハイドロに使用されているハイドリックオイルの色は赤です。ですので、ハイドロのパイプやスフィアからオイルが漏れることを「下血」と言ったりします。エンジンルームからこのオイルが漏れると「吐血」と言います・・・。
「ハイドロニューマチック」はステアリング・ブレーキ・サスペンションすべてを繋ぎオイルと窒素で制御する機械式です。DSやBXなどです。
対して「「ハイドロラクティブ」はサスペンションのみ油圧でコンピュータ制御します。XM(1989)が初代、エグザンティア(1993)がⅡ、そしてC5(2000)がⅢ・Ⅲ+となります。
機械式のハイドロニューマチックからコンピュータ制御のハイドロラクティブになった理由としてEUの規制「油圧系統は独立しなければならない」があったためです。その対策としてサスペンションのみ制御するハイドロラクティブが誕生しました。
Ⅲ・Ⅲ+はC6、2代目C5に搭載され2015年で中止となりました。これでシトロエン伝統の油気圧サスペンションであるハイドロは幕を閉じることとなります。
そして、今までのハイドロラクティブに変わるサスペンションとして、2018年にプログレッシブ・ハイドローリック・クッション(PHC)というダンパーの中にさらにダンパーがある金属バネのサスペンションとしてC5エアクロスに搭載されました。現在の私の愛車になります。
PHCはコンピューター制御ではなく機械式です。一般的なサスペンションは過度の入力時にサスペンションが縮み切った状態での底付防止のためにバンプ・ラバーが装着されています。PHCでは、このバンプ・ラバーを廃止しこの替りとしてもう一つダンパーを追加。これを通常のダンパーの中に入れました。ダンパーinダンパーです。もともとはWRC用に開発されたサスペンションです。ルノーも採用していますが、ルノーは速く走るために採用。シトロエンは乗り心地重視のために採用しています。PHCを採用したことでハイドロニューマチック・ラクティブに近い乗り心地となりました。PHCは、開発から採用まで20年近くかかっています。
初代C5前期型の日本仕様の2.0Lガソリン車は、「ハイドロラクティブⅢ」ではなくⅢ+が搭載されています。セダンとワゴンがあり、エンジンは2.0L直4、3LV6の2種でした。私は2002年に2.0Lセダンを購入しました。
13年乗り、後期型に乗り換えました。
後期型では、セダン・ワゴンの2.0Lには「ハイドロラクティブⅢ」、3.0LにⅢ+
が搭載されています。
ⅢとⅢ+の違いは、硬軟の調整が出来るか否かです。Ⅲ+では「スポーツ」モードがあり、これを選択するとサスペンションが固くなります。速度に関係なく任意に選べます。
Ⅲはこのモードがありませんが、80km/hを超えると固めになる設定です。
Ⅲはスフィア(油圧の部品)が4つ、Ⅲ+は前後に2こ追加し6つとなります。
ハイドロニューマチックはスフィアは4つとなります。
乗り心地はⅢ+はハイドロラクディブとしてはやや硬いです。Ⅲはまさしくドンブラコという柔らかめの乗り心地。Ⅱに近いです。これはスフィアの数が関係しており、Ⅱも4つです。
よく「今のC5エアクロスはハイドロと較べてどう?」という質問をハイドロ乗りの方から聞かれます。しかし、ハイドロといってもニューマチックとラクティブⅠ~Ⅲ+があり、乗り心地がかなり違うため乗っている車を確認してから説明しています。
ハイドロニューマチックが一番フワンフワンした乗り心地。
ハイドロラクティブⅠ~Ⅲがハイドロニューマチックぽい柔らかい乗り心地。
Ⅲ+だけがあまりフワンフワンしない、上下もⅢよりも動かない乗り心地です。
一口にハイドロラクティブといっても4種類あるわけです。
C5エアクロスのプログレッシブ・ハイドローリック・クッションは「ハイドロニューマチックの再来」と書かれている記事もありますが、C5エアクロスのエンジンによって乗り心地が違います。雑誌ではディーゼル仕様での記事です。
C5エアクロスがガソリンかディーゼルかで、同じプログレッシブ・ハイドローリック・クッションでも乗り心地が違います。
ディーゼル仕様はエンジンが重いため、フワンフワンした上下・前後運動が大きくなります。
ガソリン仕様は120kg近く軽いため、この動きが少なくなっています。
ディーゼル仕様は上下・前後の動きはハイドロラクティブⅢに近く、固さがⅢ+。
ガソリン仕様はハイドロラクティブⅢ+に近いです。
これはハイドロの中の話であって、それ以外の車と比較すれば独特な柔らかい乗り心地となります。