
空気とは見えないもの。
近年、トヨタをはじめとするメーカーは燃費向上や安定性向上のために、資金や設備を投入してまでも進化させている。
特に、ハイパフォーマンスカーの進化は著しい。
大抵のスポーツカーは目に見えない部分での工夫が素晴らしい。
ボクはいわゆるクルマオタクなので、ボディの見た目よりも目に見えないところばかりが気になってしまう。
タイヤハウスの回り、アンダーパネル、ディフューザーの形状。
ボクはいかにして自分の愛車に安定感を取り入れるか。
チューニング(調律)することが大好きなので、いわゆる良いクルマを見ると下回りばかり覗いてしまう(^◇^;)
他の方は、ビジュアルや内装などを見るなか、ボクだけは膝と手をついて下回りを覗き込む。他人から見たら変態である。
そんなわけで、今回の内容はかなりマニアな内容になる。
ここ最近で衝撃を受けたのは、ポルシェ997型のGT3RSに乗らせていただいたときだった。
普通、クルマは速度が上がるほど不安定になるのが当たり前だ。跳ねたり接地感が薄れたりして、少なからずクルマが浮くような感覚になる。
しかし、GT3RSは根本的に違った。速度域が高くなるほど、『地面に向かって引っ張られる感覚が増す』のだ。
地面に向かって押し付けられるのではなく、下から引っ張られるような感覚。
今回は、そんなダウンフォースを感じたことを裏付けるデータを入手することが出来たのでここにまとめようと思う。
実は以下のデータは友人やクルマ仲間にだけ公開しようと思ったのだが、ブログに残しておこうと思った。
もちろんクルマの楽しさは、クルマの性能や排気量とは比例しない。
それはボクが以前から書いてきたことだ。
軽自動車でも楽しいクルマはあるし、値段の高さでも決まらない。
高いクルマをただ自慢にするタイプも好かないし、速いことを自負するタイプも好きではない。
前置きが長々と続いてしまったが、クルマは速度が増すほど浮いてしまうことを理解した上で、水冷に変わってからのポルシェのダウンフォースがいかに発揮されているかを紹介しようと思う。
データの出自:auto sport誌
200km/h時のダウンフォース/リフト/空気抵抗値
下へ向かうほど、基本的にクルマの世代が旧型になっていく。
現行は992型と呼ばれている。
以下は、一つ前の991型となる。
【991TurboS 】
Front 20Kg, Rear 40Kg
【991GT3 】
Front 18Kg, Rear 29Kg, 0.33Cd
【991S】
Cd 0.29
以下は997型と呼ばれる世代。
【GT3RS4.0】
Front 14Kg, Rear: 58Kg on lowest setting, 0.35Cd
997型のポルシェの最後を飾った、わずか600台ほどの限定モデル。
極上のレーシングエンジンをマニュアルシフトで愉しめる。
今後も価値は高まる一方だろう。
このモデルには、唯一のカナードが標準装備されている。
逆に言えば、カナードという古典的エアロパーツが装着されているラストモデル。
恐らくだが、大きく形状を変えることなく、フロントのダウンフォースを高める為の努力だったのかも知れない。
【GT3RS.2】
Front: 11Kg, Rear: 49Kg on lowest setting, 0.33Cd (何故かRSの方が、標準のGT3よりもフロントの15kgに対して11kgと、ダウンフォースが少ない)
1月23日のブログで書いた『地上を舞う戦闘機』と表現したポルシェはこのモデル。

無印のGT3と比較して
①車体の上と下できっちりと流れを分けて、車体に沿って流れる空気の力が強い。
②車体の下側を流れる空気の量が増えている。
③リアウイングへ多くの空気を導いている。
【GT3.2】
Front: 15Kg, Rear: 19Kg on lowest setting, 0.32Cd
【GT2RS】
Front 14Kg, Rear 35Kg
【GT2.1】
Front 9Kg, Rear 29Kg
【GT3RS.1】
Front: -2Kg, Rear 10Kg, 0.3Cd
【GT3.1】
Front ~0, Rear ~0 (本来なら発生するはずだが、浮力は発生しなかった), 0.29Cd
ここからは997よりも旧型。
【996GT3RS】
Front -19Kg, Rear 25Kg
水冷に代わって、最初のRS。
RS=GT3だったはずなのに、RSの名前が付けられた。
BMW M3GTS Front 7Kg, Rear 30Kg, 0.32Cd
1月のツーリングで、997後期型 GT3RSに乗らせて頂いたのだが、ボクが感じたように確かにダウンフォースは発生している。
普通はクルマは浮力が発生して不安定になる。
それが、ピタリと安定する感覚が増していくのだ。
このデータが裏付けるように、ボクの感じたことは間違っていなかったことが分かった。
改めてとんでもない性能を発揮する、戦闘機と表現するに相応しいクルマだったことを知ることができた。
ちなみに、世代を追うごとにポルシェの空力は向上している。
特に、空冷から水冷になった頃の996 GT3RSだとしても、フロントはマイナス19kg。
つまりフロントが浮いてしまっている。
リアは大型ウイングのおかげで25kgのダウンフォースを発生している。
新しくなるごとに空力は向上し、現行のポルシェ911GT3はそれこそ『ケタ違い』のダウンフォース数値を発揮しているようだ。
997型前期のGT3
そしてこれが後期型になると、空気を集めるチカラが格段に増しているのが分かる…
誰もが体験出来ることではないし、ダウンフォースを感じ取れるからクルマの運転が楽しいということには繋がらない。
が、ポルシェの近年のパフォーマンスの高まりはすごいものがある。
もはや一般道では意味をなさない。
到底、扱い切れないしパフォーマンスを発揮出来るステージがない。
だからこそ、3月12日の飛騨高山ツーリングでの初代GT3がとても心地よくて、操っている感覚が強くて楽しかった。
しかし、ハイパフォーマンスなクルマは所有する楽しさと嬉しさを与えてくれる。
そういうパフォーマンスを発揮する一面もある。
90年代の倒産の危機から、よくぞここまでのプレミアムブランドとしての価値と性能を手に入れたなと思うばかりである。
個人的には、ここ数年の過去の栄光をオマージュしまくりの商売が好きにはなれないけど。