メルセデスベンツ「ブルーエフィシェンシーモデル」試乗会に行ってきました。
要するにメルセデスのECOモデル試乗会です。
まずはEクラスCGIエンジン搭載モデル。
試乗したのはE250CGI BlueEFFICIENCY COUPE
このクルマに搭載されるエンジンは、1・8リットルの4気筒DOHCの直噴エンジン+ターボで、E250V6の2・5リットルV6エンジンと同じ205馬力を発生します。
最大トルクは31・6kgmで、2・5リットルの25・0kgmを軽く凌ぎ、3リットルクラスのトルクを発生します。
ちなみに10・15モードは11・4km/L(E250は9・0km/L)
CO2排出量は179g(同225g)
しかも最大トルクを2000回転~4300回転で発生するのでV6よりトルクフルで、クルマが軽々と走ってくれます。

これは思いがけず良く走るのが印象的でした。特に箱根の上り坂など、2000回転から最大トルクを発揮してくれますから、エンジンをブン回さなくてもスイスイ登っていってくれます。
圧縮比が9・3と高めであるにも関わらず、ターボの過給圧も1・2キロと高めで、ターボが効き出す手前のエンジンのピックアップもいいし、ターボが効き出してからのトルクの充実感(ターボパワー)や伸びの良さも実感できます。
バランサーシャフトが付きで、エンジンの振動を抑えているということで、実際2500回転とか3000回転、それ以上の回転ではスムーズにエンジンが回ってくれている感触があります。
ただ、2000回転以下くらいの回転、およそ50キロくらいのスピードで坂道を登っていると、カチカチカチといった微振動を伴ったノイズが出るのが気になりました。

2台目はSクラスのハイブリッド。
カタログのグレードにはハイブリッドロングと書かれているんですが、クルマにはS400とハイブリッドのエンブレムが付くんですね。
このクルマのエンジンは3・5リットルのV6DOHCエンジンを搭載しているんですが、S350とまったく同じでは無くアトキンソンサイクルを採用しています。
一般的には、アトキンソンサイクルは同じオーッとーサイクル(一般的なエンジン)に比べパワーが落ちるといわれているのですが、このエンジンはS350よりも圧縮比が高くなっているのが理由なのか、パワーも279馬力で、S350よりも6馬力高くなっています。メルセデスでは熱効率を高めていると説明しているのですが、・・・スミマセン詳細はわかりません。
ともかく、パワーが上がっていて、しかも、最大トルクも、35・7kgmで数値はS350と変わりませんが、発生回転数がS350の2400-5000回転に対して3000-5500回転と500回転高い設定になっています。

モーターは、エンジンとトランスミッションの間に挟まれる形でディスク型のものが搭載されています。スターターやジェネレーター(発電機)としての機能を持っており、そのためアイドルストップを可能にしています。
また回生ブレーキ機能が付いており、この回生ブレーキによって小型のリチウム・イオンバッテリー(リチウムイオンバッテリ35個をパッケージに納めている)に充電されます。
モーターの出力は15kw/160Nmあります。
システムトータルの最高出力は299馬力/最大トルク39・3kgmとなっています。
15km/h以下でエンジンをストップさせるECOスタート・ストップ機能も付けられていますが、レクサスのような緻密な制御システムではなく、機能は至ってシンプルです。
加速時に最長5秒間のモーターアシストを行い、これによって加速を補助します。
これは振るか即時だけでなく緩加速時でも行われ、このためにモーターのトルクがスピード維持や加速時初期に効果的に発揮されるというものです。
エンジン(トルク)特性)がやや高回転気味になっているのをモーターターボで補いつつ、より充実したパワーとトルクを低回転域で発生させることで、力強さを出そうというのが狙いなのでしょう。
また回生ブレーキは、単純なアクセルオフでは回生量が少なく、ブレーキを軽く踏んだ状態で回生量が増えます。
また、バッテリーへの充電は行われていないようです。
それでも10・15モードで11・2km/Lを達成しています。
S350の10・15モードが8・7km/Lですから、効果はきちんと発揮されているんです。
走らせてみるとアクセルを踏み出した時の出足に力強さがあり、モーターがアシストしてくれているのかな? という気がします。特にキツイ上り坂で加速した時の力感は3・5リットルという排気量以上の力強さがあります。レスサスLSやGSのような途方もない加速性能ではありませんが、クルマの重さを感じさせず、ストレスなく加速してくれます。モーターアシストが効くのはアクセルを踏み込んだ5秒間ほどですが(踏みなおすとまた5秒間仕事をします)、加速初期をモーターでアシストしているので、余計な燃料を使わないで済むんですね。
バッテリーの充放電のロジックはというと、アクセルオフだけでは簡単に充電されず、ブレーキを軽くかけた状態で坂道を下るとぐんぐん充電量が増えていきます。箱根の下り坂で99%充填までいきました。
でも、一般道を走っているとぐんぐん充電量が少なくなっていきます。通常走行時は充電されないんです。
なるべく充電量が減らないように試乗会場まで走り80%充電をなんとかキープできたのですが、
バッテリーの充電量は、30%~70%くらいが最も効率が良いのだそうで、プリウスのようにバッテリーだけを使って走るということをしないし、バッテリーを使うのも加速の5秒間だけなので、充電量を多くすることにあまり意味は無いのです (ーー;)
3台目はスマート フォーツーmhd (マイクロハイブリッド)です。
アイドリングストップ機能をもったスマートです。
このシステムはとても単純で、シフトノブの根元のあるECOスイッチを入れておくと、交差点などでクルマが停止したときにエンジンが止まるというものです。
ブレーキがセンサーになっており、ブレーキを踏んでいればエンジンは止まっていますが、離すとエンジンがかかります。
たったこれだけの機能ですが、シティコミューターとして街中を走る事を主眼においたスマートの場合アイドリングストップの燃費向上効果は相当に大きな効果を発揮します。

ちなみに燃費は23・0km/Lとです。
排気量も999CCありますから、街中を走るぶんには十分です。
アイドルストップ機能が付き、停止状態でブレ-キを踏んでいるとエンジンが切れてしまうのですが、ヒルアシストが付いているので、坂道でブレーキを離して発進しようとしたときでも、クルマが下がりません。このあたりもうまく作ってあります。
この3台は、いずれもそれほど凝ったメカニズムを搭載しているというわけではありません。
もちろん技術的には高度なことをやっているわけですが、小排気量+ターボはすでにVWがやっているし、ハイブリッドはプリウスどころかホンダよりもずっとシンプルというか簡素なメカニズムです。
直噴ターボに関しては、日本は明らかに立ち遅れていて、かつてのターボ王国の残滓も見当たらない状況ですが・・・。トヨタ、ホンダによるハイブリッド車展開、ミツビシ、スバルの電気自動車など最先端の技術に目が奪われてしまっているからなのか、エンジン自体の燃費向上を愚直にやっているからなのかわかりませんが、小排気量直噴エンジン+ハイプレッシャーターボによる(エンジンの)ダウンサイジングというやり方は見られません。
あるいは、そういった需要が日本では見込めないと考えているのでしょうか。それとも今や小さくなってしまってうまみのない国内マーケットに、新しいエンジンを開発する予算など割けないということなのでしょうか?
メルセデスのハイブリッドに関しては、今現在他メーカー(トヨタとホンダですが)が達成している技術レベルからすると、それほど驚くべき技術は使われていません。
作動の滑らかさ、熟成度という点でも、それほど洗練度が高いとは思いませんでした。ロジックも至ってシンプルです。
でも、これできちんとCO2の低減や、燃費の向上を実現しているんですよね。
CO2を低減するとか、燃費を良くするといった現実的な目標に対して、いかに効率的に達成するかということになると、別に最先端や世界初に固執する必要はなくて、これで十分なわけです。
乗ってみても、特別不満は感じないんですよね。
見方によれば、メルセデスのやり方はどこか対処療法的な匂いがないでわけではないのですが、他方、技術のための技術に陥ることなく、なにを目標にECOをするの、かというスタンスが明確であるように感じたのでした。
その一方でSLSなどといういかにも燃費の悪そうなクルマも発表しているのですが、じつは、このクルマの存在が、メルセデスに「今後も楽しいクルマを作ってくれるに違いない」という期待感を抱かせる役割を果たしているわけで、ブルーエフィシェンシーを掲げてECO問題に取り組みながら、メルセデスというメーカーの先行きに閉塞感を感じさせない効果を生み出しているように思うんです。
今の日本では、ECOこそ正義といった風潮が強く・・・話が堂々巡り。同じこと何度も書いても・・・
試乗会からの帰り道。
信号で止まっているエブリーの後ろに付いたら、4・2LのS4が口を歪めていました。