今度の新型スカイラインはなんと
メルセデスの2L4気筒エンジンを搭載するのが話題になっているようですが、記事を読んでみるとちょっと疑問符が付きますね。
もちろん両車の性能は211ps/350Nmと共通なのですが、E250の最大トルク発生域が1200-4000回転なのに対してスカイラインは1250-3500回転と狭くなっています。もし、日産がスポーティーな味付けのために敢えて範囲を狭くしたとすると、ダウンサイジングターボの本質が分かっていない証明になってしまいますが、実際のところはどうなのでしょうか→
この方の情報によると、成層リーンバーンの最新型ではなくて従来型のエンジンのようです。
燃費に関しても、同じ7速ATで80Kg以上重いE250が15.5Km/Lなのに対して13.6Km/Lと1割以上悪いのも気がかりですね。日本用のセッティングなら日産の方が燃費が良くなってもおかしくないのに不思議です。この燃費ですとやっとBMWの528iと同等ですが、従来型なら仕方ないかもしれません。
こんなエンジンでも新聞記事などでは「スカイラインが新世代ターボを搭載」とか書いていますが、ヨーロッパではダウンサイジングターボがとっくにメインストリームになっているので何をいまさら、という感がありますね。クリーンディーゼルに関しても「ディーゼルと言えば黒煙、というイメージがあるが…」なんて書き出しの記事を今でもよく見かけますが、本当に認識不足、勉強不足です。最近のディーゼルはEURO6対応なので、10年前のガソリンエンジンより遥かにクリーンなのも知らないのでしょうね。
車体としてはいいのかもしれせんが、このスカイラインの4気筒を敢えて買う理由はなさそうです。自分なら320iや320dを買うでしょうし、その内上陸するメルセデスの新型Cクラスには太刀打ち出来ないと思います。
他にも、先日の新聞記事で「
トヨタが130年前の技術を蘇生」などとあったので読んでみたら、予想の通り大嘘でした(笑)。新型パッソなどに搭載されるエンジンで「アトキンソンサイクル」と呼ばれる効率のよい燃焼方式をベースに、不足するパワーを従来型エンジンで磨いた技術などで補い、10%以上の大幅な燃費向上を実現。」という内容ですが、特に文面通りの内容は無さそうです。。
最近よく言われるアトキンソンサイクルについてはちょっとエンジンに詳しい方なら周知の事実を説明するのもおこがましいですが、「圧縮比と膨張比を分離したエンジンシステム」というのが本来の定義です。現在これを本当に実現しているのはコジェネユニットに使われているHONDAのもの以外存在しません。他のエンジンは吸気バルブの早閉じもしくは遅閉じで擬似的にその効果を出しているので正確にはミラーサイクルと呼ぶべきものなのですが、最初に開発したマツダの呼び方を嫌ってアトキンソンサイクルと称しているだけです。最初に開発したマツダはスーパーチャージャーとの併用で実現化しましたが、これをモーターとの組み合わせで開発したのがトヨタのハイブリッドシステム(これはこれで卓見)です。
この方式を採用すると確かに膨張比は高くなるので熱効率はアップしますが、吸気量は制限されるので、排気量に比例した仕事はしません。つまり、
ミラーサイクルは熱効率はアップするが、エンジン単体で見るとオーバーサイジングエンジンになり、ドライバビリティの確保にはターボの過給やモーターの補助が必要になる
という事実を指摘する人は少ないですね。
「出力低下を防ぐため圧縮比を高めると、ノッキング(異常燃焼)が発生しやすくなる。これを回避するため燃焼室内の排気効率を高めたり、新構造のウォータージャケットスペーサーでシリンダーの壁温を調整したりといった工夫を重ねた。」とありますが、普通のエンジンの改良技術です。そもそもミラーサイクルは圧縮比は従来エンジンと大差なく、膨張比だけがアップしているのです。その結果の馬力は69ps/92Nmですが、これは15年前に登場した初代インサイトの70ps/92Nmから何の進歩もありません。ミラーサイクル採用によって膨張比を上げたために熱効率が上がったくらいです。うがった見方をすると、今まで充分な対策をしてこなかった廉価版のエンジンに本腰を入れたという状態でしょうか。実際にも、圧縮比は11.5とそれほど高くありません(プリウスは13.0)から効果はおまけ程度でしょう。
と思ったら、新型ヴィッツの1.3Lエンジンはしっかり圧縮比が13.5になっているのですね。パッソのエンジンは手抜きと言われても仕方がありません。以前からのやり方ですがトヨタの「客を見切ってコストダウンをする商法」は個人的にはあまり歓迎出来ませんね。
現行プリウスの最廉価バージョンで痛感した部分です。
これくらいの技術はトヨタに限らず、ホンダでもマツダでも以前から採用しているので、「130年前の技術を蘇生」なんていう内容は(日経ならともかく産経の)ものを知らない新聞記者がトヨタの広報記事を鵜呑みにしてコピペで書いたというのがバレバレです(爆)。
これらのエンジンは基本的には常用域でのトルクが細いですから、遅くてもよくてドライバビリティも適当でいいけど燃費は良くしたい、という方には充分かもしれませんが、遠出をしたい人にはちょっと勘弁かもしれません。結局街乗り用限定と考えていいでしょう。それに、カタログ燃費は「はぎ取り仕様」で何も付いていないグレードの事が多いので、一つ上のグレードで判断しないと現実的ではないですし。
特に高速走行ではアトキンソンサイクルで狙った熱効率エリアからはずれるため、単にパワーもなく燃費も悪いエンジンになりがちです。
以前にD3Biturbo(E90)とプリウスで、フランクフルトからパリまで走って燃費競争をしたら13.69Km/Lと15.15Km/LでD3Biturboの勝ちというテストがあったようです。私だったらその距離をプリウスで走る気にすらなりませんが。
2代目プリウスはヨーロッパでの高速走行だとパワー不足で、回して乗ると燃費がガタ落ちだったので3代目のプリウスで排気量を拡大した、というエピソードが物語っていますが、ハイブリッドの進化という面から考えると排気量は縮小しても良さそうですがそうはならなかったようですね。街乗りには現行のトヨタのハイブリッドシステムは有効だと思いますが、トータルな使い方だとあまり魅力を感じません。
ちなみに現行プリウスは1797ccでトルクは142Nmしか出ていませんので、1.4Lの排気量のエンジンの仕事しかしていませんが自動車税は1.5L〜2L未満の区分で取られているのですね。エンジンの実質としては5000円余分に取られています。まあ、他のエコカー減税などでトータルでは安く済んでいるのも事実ですが。
これに対して例えばBMWの328iですと245ps/350Nmとほぼ3Lのエンジン性能ですが区分は2L以下ですから、自動車税は10500円お得です(爆)。これに限らず、欧州製のダウンサイジングターボは排気量的にはお得ですね。
こんな宣伝目的の技術よりは、
こちらの方が全然注目に値すると思います。PCUの半導体を改良する事で、エネルギー損失を1/10にして燃費も10%向上させるそうです。
写真のようにPCUの体積もかなり小さくなるようです。
しかし、この技術も外販する予定はないそうで、先日発足した国内自動車メーカー8社および1団体で設立した「
自動車用内燃機関技術研究組合(AICE)」もトヨタにとってはお題目かもしれませんね。マツダだけが恩恵を受けるのかも。
これらの技術は日本国内的には有用かもしれませんが、VWのMQBプラットフォームやBMWの新型B系列モジュラーエンジンのように「部品の共用化によって全体のレベルを引き上げる」ような車造りをしないと、欧州では太刀打ち出来ないかもしれませんね。だからこそ、トヨタはディーゼル部門でBMWと提携したのでしょうが。
なんか、辛口の話ばかりになってしまいましたが、適当な新聞記事や自動車雑誌の記事に惑わされずに、自分で乗ってみたり信頼出来る友達から感想を聞いた方がずっと有用ですね(爆)。
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くるま | 日記
Posted at
2014/05/27 13:22:00