新型B47エンジンの218dが出来が良かったので
4気筒ディーゼルについて以前記事を書きましたが、みん友さんから「6気筒についてはどうでしょう?」とリクエストをいただいたので、無い知恵を絞って考えてみました。

例によって、比較のグラフはいつもお世話になりっ放しの
この方から提供していただきました。まずは通常のエンジンから比較してみます。
6気筒ガソリンエンジンから比較してみようと思いましたが、パラレルツインターボのN54エンジンとツインスクロールシングルターボのN55エンジンはトルクもパワーもかなりの部分がダブっているので分かりにくいですね。
N54エンジンは御覧のように3気筒ずつ小さいターボを並列に使っているので低速からのレスポンスに優れ、自然吸気のようなフィーリングを実現した名機で、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーでいつも上位を争っていました。
これに対してその後継のN55エンジンはツインスクロールのシングルターボになってしまったので形式上は退化したようにも思えます。ボア・ストロークも同一で圧縮比も10.2なのでほとんど違いが無いようですが、最大の違いはバルブトロニックにターボを組み合わせた点です。
性能曲線ですと最大トルクの到達点がN54エンジンの1300回転から1200回転になったくらいですがバルブトロニックとの相互作用で過給コントロールが緻密になったため、N54エンジンに比べてアクセル全閉から全開にしてブーストが最大になる時間が0.5秒短縮されたらしいです。もちろん燃費なども向上しているので、シングルターボにしてもフィーリングや実質性能は進化したようです。
デビュー直後はN54エンジンに比べて高回転の伸びがイマイチ?という声もあったようですが、熟成も進んで問題が無くなり、本当に気持ち良いエンジンですね。
これが新型のB58エンジンになると、ボア/ストロークが84.0mmX90.1mmから82.0mmX94.6mmとロングストロークになっています。これくらいストロークが伸びても高回転に影響は無さそうなので、中低速のレスポンスを重視したのでしょうか。また圧縮比は11.0に上がっているので、より自然吸気に近いレスポンスのような気がします。
また、N54/N55エンジンがオープンデッキのエンジンブロックだったのがクローズドデッキになっているので、剛性や振動面でも有利になっているのでしょうか。写真はM3のS55エンジンとの比較ですが、3気筒、4気筒、6気筒ともボア、ストローク、ボアピッチも共通のモジュラー化されているので完全新作エンジンですね。実際に
ほとんどの部分が改良されているようです。
本来ならロングストロークになったため高回転の伸びは鈍るはずですが、N55エンジンと比べても6500回転以上の落ち込みが少ないのがちょっと不思議です。これは推測ですが、ディーゼルのB系新型エンジンと同様にターボのフリクションが減って低速からのレスポンスが稼げるためにN55よりもやや高速寄りのセッティングになっているのではないでしょうか。圧縮比の向上も関係しているかもしれませんね。
今度はディーゼルエンジンについてですが、6気筒のN57型はBMW標準ではシングルターボのX5-xDrive35d(グラフではN57Sです)しか導入されていません。245ps/540Nmと充分なパワーとトルク(現在はLCIで258ps/560Nmにややパワーアップしています)ですが、最大トルクに達するのは1750回転とやや高めで3000回転以上の落ち込みもやや大きく、シングルターボの標準的な特性な感じです。しかし、直6のスムーズさは4気筒に比べるとかなり差があるので、ディーゼルでも気持ち良いエンジンです。
これと比較するとツインターボのN57型は313ps/630Nmとかなりパワフルです。低速のトルクの立ち上がりも凄く、1500回転でピークの630Nmに達しており、2500回転からの落ち込みが緩やかなのもツインターボの利点ですね。実際に乗ると更に気持ち良さそうですね。
しかし、新型のB57型になると、ボアやストローク、圧縮比は全く共通なのでどこが変わったか分からない感じですが、性能曲線ではシングルターボでも低速トルクの立ち上がりが非常に改善されています。最大トルクのフラットな領域は狭いですが、アイドリングからトルクが一気に立ち上がって1200回転くらいで既に500Nmを発生しているのは相当パワフルな気がします。ちょうど、B47型エンジンがツインターボの123dエンジンに匹敵する程の進化をしたのと同様な感じですね。ここではデータがありませんが、ツインターボ版では320ps/680Nmですので相当パワフルなエンジンのようです。
しかし注目すべきはALPINA D5Turboのエンジンです。280ps/600Nmと最大トルクはB57型にわずかに譲るものの、低速からの立ち上がりはほぼ互角で、1200回転からは優っていますし、高回転側でのトルクも上回っています。さすがにツインターボ版のN57型には高回転側では敵わないですが、アルピナマジックでしょうか。標準のN57型に比べて吸気抵抗がかなり少なくしてあるようで、これがディーゼルエンジンでは大切なようです。現物を拝見してみるとX5-35dに比べると吸気系のダクトなどがかなり太くなっており、少量生産ならではのきめ細やかな改良がされているようです。
この車はギア比が異様に高いので(ファイナルが2.4です)普段乗っていると穏やかな感じですが、低いギアで回すと非常に気持ち良くレブリミットまで回りますし、B5Biturboと共通のマフラーなので音質も下手なガソリンエンジンより澄んだ快音がしてこれまた気持ち良いですね。
今度は同じ6気筒でもハイパワー版のグラフです。これは機種によって差が出てキャラクターが分かりやすいですね。
まずはE90型のALPINA B3Biturboのエンジンです。オリジナルのN54エンジンに比べて圧縮比を9.4に落としてブーストを上げ、鍛造ピストンなどを組み込んだスペシャルエンジンです。N54型がトルクピークの400Nmまで一気に立ち上がるのに比べてやや緩やかな立ち上がりですが、そこからピークの540Nm(しかも4250回転!)まで直線的にトルクが増えていくのは自然吸気のようなカーブですね。実際に乗ってみても2000回転以下ではレスポンスがやや緩やかな感じですが、そこを超えると一気にパワーが立ち上がって凄い吹け上がりです。N54型、N55型がパワーピーク後はやや頭打ち感があるのに対して、一気にレブリミットまで回るのは快感です。これまた現物を見ると、ツインターボの配管が335iなどに比べると直線状になっており、インテークのダクトなどもきちんと抵抗が減らされています。
これに対して現行のF30型ALPINA B3BiturboはN55型をツインターボにした!という更にスペシャル版で、圧縮比も10.2のままです。現行M3/M4のS55エンジンより先行してバルブトロニックとツインターボの組み合わせを実現したのは素晴らしいですね。インタークーラーもN55型より一回り大きいスペシャルパーツです。
不思議なのは、ターボにつながるエキゾーストマニフォールドなどにBMWの刻印があった事です。標準のBMWにはパラレルツインターボは存在しないので、S55エンジンと共用なのでしょうか。
性能曲線はバルブトロニックとツインターボの組み合わせの組み合わせによって低速から更にトルクが出た上にピークも600Nmと一回り上ですが、BMWと違ってトルクのピーク領域がフラットな部分が少ないのはALPINAの味付けでしょうか。実際に乗るとN54型ALPINAエンジンよりもかなり低速側のトルクが出ていて扱い易くなっているので刺激性はやや薄まった感がありますが、更にパワフルになっているので相当速いです。
そして、M3/M4に搭載されているS55エンジンはN55型とボア・ストロークは同一ですが、エンジンブロックがクローズドデッキになっているためまるで別物のエンジンのようです。8気筒から6気筒にダウンサイジングされターボになった事でデビュー時には否定的な意見も聞かれましたが、この機種だけに全く違うエンジンを開発するのも贅沢ですね。
ALPINA B3Biturboのエンジンに比べると最大トルクがフラットな領域は1850-5500と広いためBMWの標準車のような扱い易い特性にも思えますが、レブリミットは500回転上がっていますし回して気持ち良いスポーティーなキャラクターのようですね。
両車のトルクが550Nmと600Nmと差があるのはトルク重視のALPINAの特性かもしれませんし、インタークーラーの差(S55は水冷、ALPINAは空冷)もあるかもしれません。
次はハイパワー版ディーゼルですが、BMWの標準車ではいまだにツインターボ版は導入されていないので、ALPINA D3/D4/XD3 Biturboに搭載されているエンジンです。
基本的には本国のN57型ツインターボをファインチューンしたエンジン(どこまでエンジン本体に手が入っているのか不明です)のようですが、吸気系はかなり抵抗を少なくしたレイアウトのようで、350ps/700Nmのハイパワーです。
性能曲線を見ると、なんとトリプルターボ版のN57型より低速の立ち上がりが鋭く、高速側の落ち込みも少ないです。やはりアルピナマジックでしょうか(爆)。高性能の証の100Nm辺り50psに達していますね。
実際に乗ってみると瞬時に大トルクが呼び出せるのは快感を超えてある意味危ないくらいのパワフルさです。ディーゼルに慣れない人がDSCを切って低いギアでベタ踏みしたらその場でスピンするくらいのレスポンスで、常用域ではB3Biturboよりパワフルです。次に出て来るトリプルターボとの比較でも、「550d」は車重が300Kg以上重いのでパワー差は相殺されるかALPINAの方が有利かもしれません。
今度はそのトリプルターボ版N57型エンジンですが、381ps/740Nmと非常にパワフルでもはやディーゼルエンジンではない感じです。
小さいターボが2つ、大きいターボが1つでアイドリングから1500回転までは小さいターボでレスポンスを稼ぎ、そこから2500回転までは大きいターボが加わり、更に高回転ではもう1つのターボも加わってフル過給というシステムのようですが、かなり複雑ですね。
どちらかというとパワーを優先で高速巡航のためのシステムのようですね。スペースの都合かインタークーラーは水冷になっていますし、吸気系も複雑なので、ALPINA D3Biturboに対して明確なアドバンテージは無い気もしますが、メカ的には楽しいですね(爆)。
実際の映像では、太いトルクと4駆のため、加速が半端ではないようです。7速でリミッターの250Km/hに達してもまだまだ伸びそうな雰囲気ですね。
ちなみに、ALPINA D5Biturboではこんな加速になります。同じ5シリーズのボディでもM550dよりも90Kg軽いので、やはり有利なようです。スピードの乗りがこちらの方が遅いように感じるかもしれませんが、マイル表示メーターなのでお間違えの無いように(爆)。
そして、番外としてこの間紹介したAUDIのRS5TDIも加えてみました。パワー的には375ps/750NmとBMWのトリプルターボと大差ないですが、性能曲線を見るとかなりレスポンスが違う事が分かります。
電動のコンプレッサーで低速側のアシストをするのですが、元々がツインターボで低速も有利なところにブーストアップをするのですから、低速のトルクの立ち上がりが半端でなく凄いです。1250回転で既にピークの750Nmに達しているのは他のエンジンでは例をみないパワフルさです。さすがにBMWの直6に比べると高回転側の伸びでは一歩譲るようですが、この車が実際に乗ると一番ダッシュが速いのではないでしょうか。グラフ上でも、ピークの4250回転までガソリンターボのS55より常に50ps多いですから、どれだけ常用域でパワフルなのかが分かると思います。
おまけにこのシステムは他の回転域でもアクセル全閉から開ける際にもアシストするらしいので、サーキット走行などでも有効らしいです。
シングルターボとの組み合わせでもかなりパワフルになるようですね。コストの問題はありそうですが、現時点では一番パワーもレスポンスも優れるエンジンのようです。
6気筒同士で色々比較をしましたが、(特にBMWの標準ガソリンモデルで)どれだけ進化したか実際に乗ってみないと分かりにくい部分が多いようですね。個人的には新型B58型エンジンがどれだけ進化したのが楽しみですが、
どうやら今度の3シリーズのLCIではエンジンは従来通りで、B47型もB48型もB58型も導入されないようです(涙)
実際に日本にくるのはG11型の740iになるようですが、G11がかなりの軽量化をされているので現行の535iと同じくらいかもしれませんね。今から楽しみです。