昨年デビューしたマツダのCX-8、ミニバンに替わる3列シートでエンジンも新型のスカイアクティブディーゼルになり興味はありましたが、ちょっと乗る機会がありました。
乗り込んで見ると一番上のグレードだったので革シートはナッパレザーになっており、肌触りが柔らかくて高級です。シートポジションは高めでミニバンやSUVの感覚です。
エンジンをかけるとかなり静かで振動もほとんどありません。音質としてはやはりディーゼルなのですが、全く問題無い感じです。マツダの最上級車種なので遮音などもしっかり対策してあるのでしょう。
走りだすと低速からトルクが出ていてスムーズな走り出しです。CX-5に比べると200Kg前後重いはずですが、それを感じさせない低速トルクです。1500回転からでも充分なトルクで出ていて2000回転以上の領域にも素直に繋がっている感じです。
以前のスカイアクティブディーゼルもトルク感はありましたが、それが発揮されるのは2000回転以上で1500回転からのトルクは細くて使う気になれず、ATのセッティングもすぐに2000回転以上に回すような印象でしたが、今回のエンジンはシフトアップしても普通に1500回転から綺麗に加速し、ディーゼルエンジンならではの太いトルクがあります。1500回転未満に回転が落ちてもそれなりにトルクが発生していて、現行型が全く使えない領域だったのに比べると大幅の進歩に感じました。
2000回転以上の回り方もスムーズで、トルクもパワーも出ている感じは現行のスカイアクティブディーゼルと同様で好印象でしたが、高回転については街乗りオンリーの短い試乗コースでしたのでしっかり確認出来ませんでした。もっと乗り込んでみたいですね。
CX-8には昨今はやりの走行モード切替やマニュアル操作用のパドルは装備されていませんが、特に必要としないように感じる低速トルクとパワフルさでした。
ヘッドアップディスプレーがフロントウインドー投影型になっていて見やすいですし、ポジションが高くて視界も良いため運転はしやすいですが、ブレーキはやや効きがマイルドな感じがしましたが、車格や車のキャラクターを考えると許容範囲かもしれません。
3列目のシートもそこそこの広さがあり、しゅっちゅう多人数で乗る用途でなければ充分ミニバンに対抗出来る車だと思いました。
ここからは新型スカイアクティブディーゼルがどう進化したかの考察になります。パワーは190ps/450Nmと現行のエンジンでもピークのトルクの絶対値は大きかったですが、これで馬力もトルクもヨーロッパ勢のエンジンと比べても同等かそれ以上になりましたね。
現行型と比べると18000回転までの低速トルクはほぼ変わりなく、そこからピークまでのひと伸びがあるのと、高速側でもトルクが太っているのが分かりますね。3000回転からのトルクの落ち込み部分が改善されたのが、比較だと分かりやすいですね。
燃焼の状態を現行型からかなり改良したようで、「急速多段燃焼」という手法だそうです。
インジェクターからの噴射回数(現行の4回から6回に)や間隔を変更し、より効率よく綺麗に燃焼させる形式になっているようです。インジェクターもそのものも改良され、
VOLVOのディーゼルに搭載され好評の、待ちに待った?デンソーの「i-ART」が採用されたようです。
ピストン形状も噴射された混合気が上手く拡散されるような形状に変更されているようです。
ターボにも改良が加えられ、高速側の大径ターボに可変ジオメトリーが装備されました。個人的にはちょっと疑問な部分なのですが、これで低速側の小径ターボとのつながりが良くなって、よりパワフルになったようです。
これらのこまめな改良が功を奏して、低速からパワフルでトルクもあり、パワーも増して全域で高性能になったのでしょう。それではヨーロッパ勢のディーゼルエンジンと比較するとどうでしょうか。
いつものように
大変お世話になっているこの方にグラフを作っていただきました。ヨーロッパ勢の4気筒ディーゼルエンジンと我が家のミドリーヌ号(4気筒ALPINA D3 Biturbo)との比較です。
まずは低速トルクに絞って比較してみると、スカイアクティブディーゼルは大小二つのツインターボを採用している割には低速トルクの立ち上がりが遅く、絶対値もそれほど大きくありません。乗ってみると現行型からは大幅に低速トルクが増強している印象があるのですが、性能曲線上は現行型と変わりありません。
別格のミドリーヌ号は別とすると(爆)、ツインターボの
VOLVOディーゼル、ターボが改良された
BNWの新型B47エンジンは低速からしっかりトルクを発生し、乗った感じも低速から力強い印象で、この両車に比べるとまだ及んでいない印象はありましたが、それでも現行型からは大幅に増強され、ほぼ同じくらいのレベルになった感じです。ツインターボのVOLVOとシングルターボのBMWの低速トルクの立ち上がりがほぼ一緒なのがちょっと不思議ですが、それだけB47エンジンのターボが優秀という証明でしょうか。高速域ではやはりツインターボのVOLVOの伸びが良いですね。
メルセデスの新型OM654エンジンはシングルターボで、セッティングの違いもあるのかどちらかというとエンジンの伸びが気持ち良く、先代のツインターボのOM651エンジンに比べるとディーゼルらしいトルクのず太さでは一歩ゆずりますが、これはこれでありだと思います。3000回転から3800回転のパワーピークまでは一番気持ち良い印象ですね。
今度はパワーに関して高速側を比較すると、ヨーロッパ勢はほぼ同じ感じの馬力のカーブですが、スカイアクティブディーゼルは3000回転からのトルクの落ち込みがやや大きいために、そこからのパワーの伸びではちょっと頭打ち感があります。それにも関わらず高回転でも綺麗に回るのは、(今回のエンジンでは14.4:1に上がりましたが)ヨーロッパ勢に比べると低めの圧縮比のためだと思われます。現行型ではこの部分のパワーの頭打ち感がさらに大きかったですが可変ジオメトリー装備によって改良されたようです。VOLVOやBMWに比べてレブリミットも高いようで、そういう意味ではさらにスポーティーに回るようになったのでは無いでしょうか。この部分は次回に要チェックです(笑)。ここでもミドリーヌ号のトルクの落ち込みの少なさ、パワーの盛り上がりは素晴らしく、旧世代のエンジンなのに優秀なのはアルピナマジックでしょうか。
ここまで性能曲線を見ながら色々考えると、CX-8の新型スカイアクティブディーゼルが乗ってみて気持ち良くパワフルに進化した原因があまり見つかりませんが(爆)、元々スカイアクティブディーゼルがツインターボを採用しているのはPCCI燃焼で高価な触媒、尿素処理を不要にして全域で排ガス処理をするのが目的なので、低速トルクがやや細くて立ち上がりが遅いのも、そのためだと思われます。今回の改良でも低速トルクに全く変化が無いように見えるのはシステムとしてそういうエンジンなのでしょう。ヨーロッパ勢のエンジンではVGTは低速側の小径ターボに装着するのが常識なのにスカイアクティブディーゼルでは高速側に装備したのもそうした関連だと思われます。
それなのに、どうして低速でトルクが太ってパワフルにスムーズになったのかが結構疑問ですが、今回燃焼形態、ピストン形状、インジェクター、ターボへの可変ジオメトリー装備など、本当にこまめな改良(個人的にはほとんどフルモデルチェンジに近い印象です)によって実際に車両に搭載された際のトルクやパワーの発揮状態が理想に近い状態に大いに近付いたのではないか、と思います。現行型のスカイアクティブディーゼルはツインターボによるPCCI燃焼という技術的なブレークスルーはありましたが実際の燃焼状態はベンチ上の理想の状態にはほど遠かったのかもしれません。
それに比べると今回の改良型は実際に乗ると非常に気持ち良く、ヨーロッパ勢のディーゼルに劣る部分は全く無い印象でしたので、例えばFF同士の勝負であればVOLVOに充分対抗出来る出来だと思います。BMWやメルセデス・ベンツはFRだったりキャラクターの違いもありますし、ミッションも8速や9速ですので直接比較にならないかもしれませんが、FFのBMW2シリーズと比較しても充分魅了的で(個人的にはFRが好きなので)「18d」しかない2シリーズとの比較でしたら文句無しにマツダを選択します。エンジンに関してはヨーロッパ勢とがっぷり四つの印象です。
CX-8は燃料タンクが満タンで72L、おまけに4WDだと更に多くて74L!(通常は4WDの方が燃料タンクが小さくなります)なので、ディーゼルの燃費の良さも相まって満タンで長距離走れるのも魅力的ですね。実際に実走で東京から九州まで無給油で1100km以上走ったそうです。
CX-8での試乗でも魅力的でしたので、先日の改良で新型エンジンが載った(2月8日の発表で発売は3月8日からだそうです)CX-5は3列シートが不要な方にはとてもおすすめです。多分現行型のエンジン搭載車の安売りもあるかと思いますが、価格や納車の時期だけが目的ならともかく(それなら中古でもありかと)、旧型をこの時期に敢えて選ぶ理由は無さそうです。
早くこのエンジンがアテンザやアクセラにも載るといいですね。デミオにも載せて欲しいですがちょっと無理でしょうか。
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試乗インプレ | 日記
Posted at
2018/02/17 12:18:15