「1年点検の代車は何が良いですか?EVもありますが」と言われたので、今回はi4をお借りしました。EVは大分前のi3以来です。
代車はeDrive35でした。今までのeDrive40からバッテリー容量を減らして値下げした廉価版のようです。
乗り込んでみるとシートポジションは他のBMWのモデルや新ミドリーヌ号と大差なくしっかり合わせられ、普通です。ステアリングホイールは若干細いようでありがたいです。センターメーターは大型ですね。
このモデルではまだシフトレバーが残っていました。やはりシフトレバーがあった方が良いですね。
走り出してみるとEVなので無音で滑らかに発進します。EVから想像するほど加速は良くないですが、車検証の車重は2030Kgで最大トルクは400Nmですから、遅くはないけれど期待したほど速くはない感じです。新ミドリーヌ号と比べれば70馬力低く、トルクは350Nmほど低いのではっきり言って遅いです。0-100Km/h加速は6.0秒なので、初代ミドリーヌ号よりちょっと速いかな、という程度です。初代ミドリーヌ号の方がトルクは50Nm優っている上に400Kg軽いので、EVの加速レスポンスを除けば大差ない印象です。元々ディーゼルエンジンはアクセルを軽く踏んでも結構トルクが出て来るので、瞬間的なレスポンス以外はEVと甲乙付け難いのはオーナーの皆さんなら実感するところでしょう。
アクセルを緩めても空走感が強くあまり減速しませんが、シフトレバーを左側に倒してワンペダル走行が出来るBモードにしていた方がアクセルペダルを緩めるだけで瞬時に回生ブレーキが効いて停車まで持ち込めるのでこちらの方が便利です。これはEVの明らかな利点ですね。ブレーキへの踏み替えをしなくて済む分0.5秒は早くブレーキがかけられますから安全運転にもつながります。
ディーラーさんでお借りした時の走行可能距離は480Kmくらいでしたが、ちょっと走ってみるとどんどん減ってきて東名高速を厚木から御殿場まで上がって50Kmくらい走ったところでバッテリー残量は80%なのに270Kmまで減りました。
「うーん、こんなに減ったら明日の帰りまで無充電で持つのかいな?」と思いましたが、御殿場からの下りではBモードで回生ブレーキを効かせながら下っていくと、沼津ICを下りたところで残量は82%、走行可能距離は400Kmまで回復しました。
EVはその時々の電費から走行可能距離を計算しているので、バッテリー残量はそれほど減っていなくても残りの走行距離がかなり上下して神経に良くないですね(苦笑)。
帰りの山道ではステアリングの軽さに違和感を覚えました。eDrive35は後輪駆動なのでステアリングの手応えは良さそうな先入観を持っていましたが実際には軽いだけでインフォーメーションが薄く、あまり楽しくありません。
タイヤはハンコックの245/45-18でグリップはそこそこあるのでしょうが、曲がる感じはちょっと希薄です。もちろんランフラットタイヤですが、それほどドタバタした印象はないので、こんなものかな、という程度です。BMWの認証ですから一定の性能はあるのでしょうが、エコタイヤかもしれませんね。
それよりもフットブレーキのフィーリングがあまり良くなく、効きも若干弱めな上にリリースの際にパッドがパッと離れるような感触があり、ブレーキを徐々に弱めるようなコントロールが出来ないカックンブレーキでBMWとしては落第だと思いました。他社の車種も同様の傾向ですが、ハイブリッド車やEVは回生ブレーキにかなりの制動力を頼るのでフットブレーキの効きやコントロール性はおざなりな気がします。
結果として、山道ではBモードにして回生ブレーキを効かせてコーナーに進入した方が気持ち良く走れる感じです。ペダルの踏み替えもしなくて済むので減速から加速へのつながりも良くて楽しいですね。速度が速くなってコーナー進入にフットブレーキを使う方がギクシャクした感じでした。車種によってはパドルシフトで回生ブレーキの強度を変えられるものもありますが、残念ながらこの車種には採用されていないようです。
リアシートは一見すると足元の空間もそこそこあって広そうですが、しっかり座ると頭上は手の平1枚くらいのスペースしかなくて狭いです。グランクーペなので仕方がない部分かもしれませんが、これでサンルーフを装着したらもっと狭いですね。あまり寛げる感じではないです。
それと、これももちろんグランクーペのスタイリングからくる事ですが、後方視界は結構狭い感じです。外からみるとハッチバックのガラス面が大きいのでそれほどには思えませんが、実際に運転席に座るとリアウインドウはかなり狭いですし、斜め後ろは全然見えません。
さらに、家の近くに戻ってきて国道へのT字路の交差点で右折しようとしたら、普段チェック出来ている右前方のキャッツアイが全然見えなくて焦りました。Aピラーとサイドミラーが邪魔になって死角になっているのですね。これもスタイリング上の問題で仕方がないのかもしれませんが、同じ3/4シリーズだと思っていたら結構見え方が違うのにちょっとビックリしました。きちんと右側が見えるようにするとシートを前に出さざるを得ず、そうすると今度は理想のポジションにならないのでちょっと問題です。
こういう点から考えると、グランクーペは後ろも見えないし右前も見えないので普段乗ろうとは全然思えない車種ですね。内燃機関でも事情は一緒でしょう。文字通り「4枚ドアがあるクーペ」と考えた方が良さそうです。
そういう意味では普段使いについては全く不便なので選択肢に入らない事が判明しました。最小回転半径も何故か5.9mと内燃機関の4シリーズより大回りになっていて、これもおかしいですね。後輪駆動でフロントにエンジンの無いeDrive35/40だったら逆に5.5mくらいに小さくなってもおかしくないのに不思議です。
サッシュレスのドアなので開閉時も剛性感があまりありませんし、ドアハンドルもグリップ式では無いので開け閉めにちょっと気を使いますし、数十分の試乗では気が付かなくても後から不満が出て来る箇所が満載の気がします。
デザイン的にも、グランクーペはi4との共用を前提に設計されているでしょうから、バッテリーの搭載のスペースで床が高めになる分居住性を確保するために腰高のデザインになっている印象があります。先代のグランクーペの方がスッキリとして格好良いデザインですね。
EVとしての気持ち良さはありますが、あえて4シリーズに導入する意味はあまり見出せない印象を持ちました。動力性能的には上級車種のi4 M50でしょうが、さらに200Kg重くなりますし、後続可能距離も短くなりますし、4駆動になるので操舵フィーリングも更に悪化しそうですし、全く魅力を感じません。
自分なら同じ動力性能で使い勝手も良く価格も安いiX1のxDeive30の方を選びそうです。それ以前に満充電でも500Km走らないので、チョイ乗りの普段使いの用途しか無さそうで尚更選択外になってしまいます。チョイ乗りのEVだったらHONDA-eや以前に
何度か試乗した元祖i3に乗りたいです。
それにしても、EVの廉価版って動力性能が落ちるのはともかくとしてバッテリー容量も落とした結果として後続可能距離も短くなってしまうので、いくら価格が100万円も安くなっても「安かろう、悪かろう」としか思えません。それだけeDrive40が売れていないのかもしれませんが(爆)。バッテリーそのものはeDrive40の83.9kWhから70.3kWhへと16.2%減で多分セル数が5/6になっているのでしょうが、そうすると全体でのバッテリー代が600万円という事に…なる訳では無いでしょうからよほど戦略的な価格付けなのか結構コストダウンしているのかもしれませんね。
これが内燃機関の車だとパワーが落ちる分燃費が良くなって満タンでの航続距離が伸びるため、動力性能には目をつぶる理由もありになるのですが、EVだと逆ですね。
EVの動力源としてのパワーの出方、静粛性などの優越点はありますが、よほどエコ意識が高い方ならともかく、現状でアルピナに乗っていてEVに乗り換える理由は全く無いなぁ、と今回も痛感しました。
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試乗インプレ | 日記
Posted at
2024/07/23 01:27:57