先日のカーグラごっこでは割と長い区間を家のD3君に乗っていただいたのですが、ALPINAのステアリングの手応えや滑らかな乗り心地?をこれだけ褒めたいただいたのは初めてでした。
大抵の場合は「ALPINAなのにディーゼル?」といった興味が先に立つので、「ガソリン車とは違う加速感」や「ディーゼルから予想するような重々しさとは逆の軽やかなコーナリングや脱出加速」や「飛ばしても燃費が良い!」といった方の感想を多くいただきました。
今回もどちらかと言えばその方面に対しての感想が得られるかと思いしたが、お乗りになられた
赤カブ望さんからは「うーん、何とも表現が難しい滑らかな手応え…、これはいいですね。」というお言葉が。
実はこれが普段私が感じている事でしたのでとても嬉しくなってしまったのですが、車を長く乗っていると大事な事だと思います。
ALPINAはベースをBMWにしているので、性能向上はあるものの車両の基本的な性格は一緒のはずです。しかし、半年くらいかけて(何をやっているのか正確には分かりませんが)絶妙な組み立てをしているみたいです。
ニコルの担当の方曰く「公差をゼロにしています」との事なのですが、それが一体どれくらいの手間なのかは判断が難しいです。多分標準のBMW車に対してそれほど大きな違いは無さそうなのですが。
ところが実際に乗ってみると、ステアリングの手応えが絶妙に滑らかです。一言で言うと「軽くて遊びが少ない」だけですが、ほんのわずかにステアリングを切り始めた時の感触が非常に素直なのです。
標準のBMW車だと遊びが大きいので遊びの部分から切り始めに至るまでの部分に少し空白感があって気を遣う面がありません。これはモードを「スポーツ」などに切り替えても、手応えが重くなるだけで変化はしません。
そして、ステアリングが軽いにも関わらず、しっかりと反力が伝わってくるため、安心感があるのもALPINAの特徴です。最近のBMWの標準車もステアリングは軽くなって楽なのですが、「人工的に何か他のものが動かしている」感じがしてしまうのは私だけでしょうか。
似たような気持ち良い手応えは、997型のポルシェ911からも感じましたが、あちらは自分にはちょっと重めでした。新型の911やボクスターでは電動になって手応えは軽くなってありがたいですが、滑らかさはやはりほんのわずかに劣る部分があります。
これは、電動パワステの制御の問題というより、やはり「ステアリング系の機械の精度を高めてある」結果のように思います。
どうしてそのように感じるかというと、以前パワーチェックでダイナモ全開した時にエラーが出てD3君の電動アシストが切れてしまった時に、回復するまで駐車場を走っているのに何の苦も無く「えっ、どうして普通に走れるの!」とびっくりしたからです。
電動アシストが切れてしまえば、車重1600Kgに235/40-18タイヤでは超重ステになってしまって、学生の頃に乗ったTE71レビンのように大変な(爆)のはずが、走り出したら全然普通でした。最近の乗ったノンパワーの車としては、
テスラロードスターがそんな感じでしたがこれもやはりロータスエリーゼという感性を大事にしたスポーツカーがベースだったせいかもしれません。
でもこれはALPINAの滑らかさの一旦に過ぎず、他にもステアリングを切った時のタイヤのグリップの立ち上がりや車のロールが自然な事などが渾然一体となってALPINAの挙動を作っているのだと思います。
それはランフラットタイヤを用いず、ALPINAこだわりの20本スポークホイールを使い、サスペンションのセッティングもミシュランのPS2(最新モデルはPilitSuperSport)1本に絞ってチューニングされているからでしょう。タイヤを他のブランドにしてみたらバランスが崩れて結局純正に戻した、という話は良くあるようです。
さらに、「ALPINAのオーナーならきっとこんな運転をしてくれるはず」という、ある意味確信犯的な車造りをしているため、それが気に入った方には手放せない乗り味になっているのかもしれません。乱暴な運転をする人には「ステアリングが妙に軽くて、ぱっと切ったらロールは大きいし」などと感じる車かもしれません。
カーグラごっこをしていて感銘したのが、赤カブ望さんはZ4のエンジンをレブまできっちりと踏み切る方なのに、その運転は非常に滑らかで丁寧なところでした。後ろに付いてエンジン音だけ聞いている分にはあまり想像出来ませんでしたが(爆)。そういう運転をなさる方なので、家のD3君にフィーリングが合ったのかもしれません。
アクセルをラフに全開するのと、丁寧に踏み切るのとは違います。乱暴なアクセル操作で育てられたエンジンは、高回転までは吹けるものの、全体的には荒く、俗に言われる「飛ばし屋のエンジンは良く吹け上がるが燃費が悪い」事になるのだと思います。
黒ジー号の2.5L直6はよどみなくレブリミットまで吹け上がる上に、中間の回転からでも滑らかに気持ち良く加速しましたから、丁寧に育てられたエンジンだとお見受けしましたし、きっと燃費も悪くないと思います。
良く「現代の車は進歩しているから、慣らしなどは不要だ」との意見も良く聞きますが、音楽がアナログからデジタルになって基本性能は上がったのと一緒の状態で「底上げはされたが磨く部分は大いにある」はずです。違いは少しかもしれませんが、きちんと組み立て、きちんと育ててやれば、長年の間には違いははっきりしてくるはずです。
「慣らしは不要」と思われる方は、2、3年でせいぜい3万Kmも行かずに車を買い換える方なのでは、とも邪推してしまいます。少なくとも私が新車から慣らし運転をした車は、手放すまでは(7万Km〜13万Kmくらいまで)燃費も吹け上がりも変わりませんでした。知らない方が乗られたら、家のD3君のオドメーターもひとけた間違えて読むかもしれませんね(笑)。
そういう意味では、車の基本部分をしっかり組み直してアナログな面からも高性能を狙うALPINAって、なかなか良い車だと思います。それに対するコストアップをどう捉えるかは別問題ですが(爆)。