
定番チューニングの続きですが、今回は全体的にお金がかかったり、作業自体が面倒だったりするヤツを何点か。タイムアップに効果的な物もありますが、ちょっと金額に見合わないなぁといった物もあります。
・ブレーキ回り
親の仇ブレーキングで右や左へ吹っ飛ぶ場合、だいたいどこかのキャリパーが固着しています。というかリアキャリパーが固着しています。リアキャリパーはサイドブレーキ機構が内蔵されているので、固着しやすいのです。フロントは意外と平気です。キャリパーのオーバーホールは数千円で買える専用工具があると手軽に出来ますが、重要保安部品かつ作業が地味に面倒なのでショップにお任せが良いです。ステンメッシュホースと同時交換するのも良いかと思います。
なおMR-Sの場合、マスターシリンダーのオーバーホールキットが存在しません。ブレーキマスターASSYで新品交換になります。なので、とりあえず最低限キャリパーだけオーバーホールしてあればサーキットで困る事は無いでしょう。
・オイルクーラー
本当は必須項目に入れたいけど、まぁ無くても適度にクーリングラップを入れる等、走り方を注意して頻繁にオイル交換すれば何とかなるし的な。サイドダクトへ設置するパターンが多いけど、それでもおよそ10分の走行で油温130℃の壁を超えるので踏みすぎ注意(今時のスポーツ系オイルなら130℃くらいまで性能を維持出来る)。特にミニサーキットでは油温が厳しくなるので、タイヤがタレてきたら油温も酷い事になっていると思った方が無難です。前置きは良く冷えます。
なお水温については12Lという圧倒的な水量があるので、MR-Sでトラブルが起こる事はほぼ無いでしょう。
・LSD
「サーキット走るならLSD入れなきゃ(使命感)」みたいな話を非オーナーから言われる事もあるかと思いますが、MR-Sに限っては不要です。オープンデフで十分速く走れます。だってMRだから!LSDが無いとトラクション掛けられないFRや駆動の抜けるFFとは違うのです。ドラッグレースを思い浮かべれもらえれば分かりやすいと思います。しっかりリアに過重を掛け、加速重視の走りをするなら、そこにLSDの介入する余地はありません(要:ハイグリップタイヤと硬いバネ)。4WD……?アレはほら違う世界に生きてるから(;^ω^)
じゃあLSDはいらないのかというとそんな事は無く、メリットは当然あります。車が前に出る力が強くなるので、コーナー1個抜けるごとに少しづつ加速のロスが減り、1周40秒くらいのミニサーキットならトータルで1秒のタイムアップに繋がります。
オープンデフで限界を感じてからLSDを入れると間違いなくタイムアップするので、ある意味最終兵器です。タイムが縮まらなくなってから導入を検討しましょう。MR-Sの場合クスコのRS 1.5wayが良く使われています。ただメタルクラッチとの組み合わせで首折れブローしがち。オイル銘柄はお好みで75W90か80W90。
KAAZやATSメタルはショップ組みでチューニングしてからが本番。ATSカーボンはオイル代キツイ。OS技研のは良さそうですが、身近で使ってる人を見た事が無いのでなんとも。
なお純正のヘリカルLSDは一般的な機械式LSDと作動方式が違います。機械式LSDが「最初から物理的にロックして限界が来たら滑る」なのに対してヘリカルLSDは「滑り始めたら糖蜜の中にギア突っ込んで抵抗で滑りを抑える(イメージ)」です。乱暴な話ですが、今時のハイグリップタイヤを履いてればそもそもタイヤが滑らないので、ヘリカルLSDがLSDとして機能する機会が訪れません。その代わりグリップの低いエコタイヤを履けば「タイヤが滑る→LSDが効く」ので「純正ヘリカルでドリフト余裕~」みたいな話が生まれるワケです。
中古でMR-S買う時に純正ヘリカルLSDの有無を気にする人も多いかと思いますが、現在の市販されているハイグリップタイヤを履かせるのであれば、オープンもヘリカルも大差無いです。あ、でも純正ヘリカルあればサーキットで縁石乗れます。やっぱあった方が良いや。
・強化クラッチ(と軽量フライホイール)
……は、1ZZのNAで走っているかぎり不要です。モノ自体は190馬力の2ZZでも純正で同じ物を使っているので、性能不足になる事もありません。LSD導入のついでに強化を組むならアリですが「強化クラッチを組む為に強化クラッチを入れる」のはどうかなーって思います。
仮に強化を組む場合でも、ノンアス系のスポーツフェーシングで十分です。カッパーミックスは良い所取りに思えますが、意外と攻撃力が強く驚くほど短期間にクラッチが摩耗する場合があります。同様にメタルディスクは駆動系への負担が大きく、ターボ化等の必要に迫られない限り避けた方が無難です。というかターボ化してメタルにすると、シフトアップでギアが飛ぶ確率アップです。社外のクラッチキットの中では、TODAのフライホイールセットがお勧め。他はORCのライトクラッチくらいが街乗り出来る下限だと思います。
・ドライブシャフト
MR-Sも20年以上前の車ですので、ドライブシャフトの内部に封入されているグリスは乳化した油状の何かになっています。サーキットを走っていると乳化したグリスがブーツの隙間から漏れて、エンジンルームがぐちょぐちょのベトベトになります。そこでブーツ交換する事になりますが、前期の方はうっかり分割式のブーツへ交換したくなると思います。ドラシャを外さずに交換出来て簡単だし。でもサーキットを走るのであれば、純正と同じ非分割式のブーツへの交換が必須です。これはトラブル回避の為です。後期は最初から分割式ブーツの設定が無いので、問答無用で非分割式ブーツへの交換となります。
・貧乏チューン
俗にいう内装取っ払い系のアレです。フロアカーペットを剥がすだけで車が軽トラ以下のボロさになり、夏暑く冬は寒い、車内は異音祭り。その割に効果は大したことが無く、目標タイムにあとコンマ数秒足りない!って時に泣きながら行うチューニングです。見た目がレーシーになるから~みたいな安易な理由でやると後々本気で後悔する定番。エアコンは外しても6kg程度しか軽くならないので、ガス補充で2か月効くならそれは良品。外すなんてとんでもない。
・マフラー
リアオーバーハングについてる重量物。サーキットへ出入り禁止にならないレベルで軽い物が良い。実測値で計った中ではHKSのリーガルマフラーが9㎏台と純正より5kgも軽いのでベンチマークに良さそう。ロッソモデロの安いヤツも、実はあれ軽い割にストレート構造で音量が静かという謎スペック。ただパイプ径が細いので微妙に詰まりぎみ。五次元管(304)は軽そうに見えて、実はHKSより重い。鉄だし仕方ないね。
軽量なチタンマフラーはR1チタンとスピリッツ製チタン、どちらも現行で買えるけどお値段高め。R1チタンはAmuseのごたごたが済んでようやく販売再開だけど買えるのはEXのみ。でもチタンの中では一番静か。
・エキマニ
先にも書いたけど前期は交換必須。内蔵されている純正触媒が砕けて大惨事になるので、とりあえず中華製!で大丈夫です。腐ってもTRDのコピー品なので馬力はでます。同じ中華でもフランジが10㎜鉄板のヤツと薄い鉄板をプレスした物がありますが、後者の方が排気漏れしないです。
中華以外のちゃんとしたヤツですが、まず音が違います。大事な要素です。入れて後悔する人なんてご近所にアレな人がいるパターンくらい。今買える中ではTRIAL、スピリッツ、SPIDER LITEΦ42が定番です。パイプ径は1ZZならTRD(中華製)のΦ40もあれば十分。Φ45はただの楽器。
社外エキマニは割れてビロビロ音がするまでがセットです。修理する際に下側に振れ止めのステーを追加で加工するのが流行ってます。バンテージをぐるぐる巻くと排気流速がアップするらしいですが、割れるまでの時間しか加速しません。
・触媒
SARDのスポーツ触媒、高いけど効果はあります。音もでかくなります。年式によっては書類があっても車検通らないので、車検用に純正触媒は保管しておくのが吉。
触媒ストレートは楽器です。(純正コンピューターを使っている限り)入れたからと言って速くなりません。蛇腹が腹下1カ所のタイプはいずれ割れて排気漏れしますが、修理費用は意外と高くないです。純正と同じ位置に蛇腹があるタイプならそもそも割れないので、購入時は蛇腹の位置に注意。
・エアクリ
純正のエアクリボックスが超優秀なので交換する必用無し。クーラントリザーブタンク下にあるパイプがリストリクター形状に絞られてるので、ホームセンターで売ってるアルミ蛇腹ホースに交換するのが定番。
どうしても剥き出しタイプにするならAPEX推奨。他は純正エアクリボックスと交換するタイプばかりなので、エキマニ周辺の熱風を吸い込み酷い事に。冬ならまだ誤魔化しも効くけど夏になると吸気温度補正が入って遅くなる。
・コンピューター
現状で導入しやすいのはパワーFC。1ZZの吊るしデータは速くないので現車合わせ必須。レブリミットを少し上げると「あと少し足りない!」って時に重宝します。自分でセッティングするには空燃比計の設置が必要なので、手っ取り早く現車合わせ依頼した方が早いです。スピリッツだと77000円でやってくれます。
LINKやハルテック等のフルコンは制御出来る幅が段違いなので、従来ならノッキングしまくりでとても回せないような「やりすぎた」エンジンでも制御出来てしまいます。つまりノーマル1ZZとは無縁の存在です。
・クロスミッション
純正のC56、C65は同じギア比なので、セリカ用C60の3、4速を流用するのが定番でした。ただハブスリーブ等の部品が製廃になってしまった為、5速ミッションへの流用は厳しい状況です(オーバーホールしないと割り切れば可能)
現在6速ならKAAZ、クスコ、TiR。5速ならKSPが競技用クロス作ってますが、1ZZで使う場合「忙しいだけでタイム上がらなかった」になる場合があります。6速用クロスはどれも8000回転回る2ZZ用のギア比です。KSPはラリー等の競技を意識したギア比の為、ミニサーキット以外では要注意。ギア鳴り音もヤバイです。
・ターボ化
後期型1ZZは強い子なのでターボ化にも耐えられますが、250馬力以下に抑えないとミッションが耐えられません。エンジン内部までチューニングすれば300馬力以上も行けるみたいですが、やっぱりミッションが耐えられません。過去に見た中ではファイナルギア粉砕、3速ギアが吹っ飛んだ~なんて事例が多いです。2速から3速へシフトアップで逝きます。KSPのクロスならストレートカットギアなので、もしかしたら耐えられるかも?(なお値段)
サーキットを走る1ZZターボはエンジン以外も強化しなければならない箇所が多く、完成するまでお金を吸われ続けます。かといって中途半端に組むとトラブルだらけでまともに走れず、延々と修理と入庫を繰り返すハメになります。街乗りで乗る1ZZターボは本当に速くて楽しいのですが、サーキットに持ち込む際は自重する勇気が必要となります。
・スーパーチャージャー
HKSのGT2スーパーチャージャー、現状だとTRAILさんが100万円でキット化しています。たまにROTREXの中古が出ますが、手を出すと痛い目にあいます。
スーパーチャージャーはターボと違って純粋に排気量アップしただけ、みたいな回り方をするので、装着した際の盛り上がりや感動はターボに比べるとそこまでではありません。しかしサーキット走るとタイムはちゃんと出る。不思議!という玄人っぽいチューニングです。こちらもやっぱり馬力の出しすぎに注意。
・2ZZ換装
自分で言うのもなんですが、2ZZとセリカ用クロスミッション換装はサーキットで本領発揮します。街乗りでたまにしか出番の無い8000回転ですが、サーキット走行だと常時回しっぱです。楽しいです。速いです。が、現在本当にエンジンの出物がありません。絶望的に。セラミック蒸着シリンダーのおかげでブローすると後が無いです。ボーリング出来ないのでスリーブを組んでもらう必要があり、30万吹っ飛びます。
・ホンダK20、K24換装
京都で4本払えばちゃんとした仕様の作ってくれます。載せるだけでも3本は用意しておきましょう。DIYならMWRから換装に必要なショートパーツを80万円くらいで輸入出来ます。エンジンとミッションを用意すれば乗ります。タイプRのエンジンは高いので、外人は皆K24を無加工でポン付けしてます。排気量の暴力と、素で200馬力のパワーが普通に速いみたいです。自分でハーネス組める人向け。