
写真・名川チェリーセンター 南部町観光協会より
加工過程で情報精度低下
ネット社会に潜むリスク(2010/9/20)
インターネットがこれだけ普及した社会に生きていると、どこから何がふってくるか、ほんと、わからない。たとえば、こんなニュース。
来年4月に開校する山形県東根市の「さくらんぼ小学校」と同名のアダルトサイトが存在することが発覚した。当初「校名の変更は考えてない」としていた市だったが、市民から
「学校のイメージが悪くなる≒児童に悪影響がある」
などの声が上がり、またアダルトサイトの利用者側からも「自分たちの楽しみを邪魔しないで」などのメールが相次いだため、9月9日、市長は記者会見を開いて校名を変更する考えを明らかにした。
あるんですねえ、こういうことが。校歌も校章もすでに決まっていたというから、災難といえば災難。市長は「ネット社会に対する認識が足りなかったと反省している」などと述べたという。
▽手軽さと引き換え
ところで、本題はこの先なのだ。右の話はどこまで信用できるのか。
以上の文章を、私は9月9日と10日に報道された複数の新聞記事から作成した。元ネタはすべてネット上(新聞社の記事配信サイト)にアップされていた記事である。
新聞社は記事の裏取りと校正に十分なコストをかけている。したがって事実関係に大きな間違いはないと思う。が、記事を加工する過程で斎藤美奈子という個人の手が加わっている以上、百パーセント正しいともいいきれない。要約の過程で私が誤記や誤認をしたり重要な事実を見落としている可能性もあるからだ。
ネットの普及は情報の受信と発信をおそろしく容易にした。パソコンで検索すれば、どんな情報でもたちどころに手に入り、それをちよっと加工してプログやツイッターで流せば、ただちに情報の発信者となれる。
しかし、その手軽さと引き換えに、私たちは大きなリスクと責任を負うことにもなった。
ひとつは情報の確度の問題だ。さくらんぼ小の件を聞いて、あなたはどう思っただろつ。そんな変な校名にするからだよと思わなかった?
▽うのみは危険
じつはさっき、隠していた追加情報がある。
とっくにご存じかもしれないけれど、東根市はさくらんぼ生産量日本一で、さくらんぼの人気品種「佐藤錦」発祥の地なのだそうだ。市内にあるJRの駅名も「さくらんば東根駅」。市民マラソン大会などの行事にもさくらんぼの名を冠することが多く、さくらんぼ小という校名も市民からの公募で一番多かったことから決まったという。
そう聞くと「ならば、さくらんぼ小もありだよね」と思いませんか。
情報の確度とは、加工の過程で生じるこのような揺れをいつ。事実関係は新聞記事を一応信用するとしても、それを加工してだれかがプログで流し、それをまただれかが引用してコメントを加え…とやっていくうちに情報の精度は確実に下がる。たとえば東根市とさくらんぼの関係を出すか隠すかで、印象はちがってくるのである。
まして元ネタが伝聞情報や誤情報だったらどうだろう。ネット上の情報は玉石混交。ウィキペディアでさえ、うのみにするのは危険なのだ。
▽コピーは一瞬
もうひとつは著作権の問題である。情報の受信発信が容易になったということは、著作権に抵触しそうな場面も増えていることを意味する。
文章、写真、イラスト、音源。ネット上に存在する「ネタ」をコピーするのは一瞬である。アイデアを拝借するのも簡単だ。偶然の一致も当然ありうるだろう。だがらこそ相手の知的所有権には十分な配慮が要る。
さくらんぼ小の場合はたまたま相手がアダルト系だったことから校名変更に至ったが、仮に相手が栗子や果物を研究するサークルだったらどうだったか。サイトの性質にかかわらず、やっぱり検討や話し合いが必要だったのではないのか。
問題のサイトには9月9日付で「正しくはアダルトサイトではむざいません。私どもは『同人18禁美少女ゲームソフト制作サークル』で、などの文書と、サークル名の変更を視野に入れてもいい旨の記述があった。
大きなもめるとに発展しなかったのは元祖さくらんぼ小の大人の対応によるところも大きい。だれにとっても人ごとではないケース。もって他山の石とすべきだろう。
(文芸評論家 斎藤美奈子)
デーリー東北より
「大森小」への変更理由など説明 東根市、発生経費は執行部給与から
2010年09月24日 20:10
来春開校する東根市の新設小学校「さくらんぼ小」がアダルトサイトと同名だったことから、校名を「大森小」に変更する方針を固めた市は24日、市役所で緊急記者会見を開き、選考経過や理由について説明した。この中で土田正剛市長は事前のネット検索を怠った市教育委員会のミスを認め、変更により新たな経費が発生する場合は、執行部の給与減額などで対応する考えを明らかにした。
会見には土田市長や小関正男教育長ら5人が出席。市側の説明によると、新校名は昨年7月の公募で応募者が多かった上位6点のうち、さくらんぼ小を除く5 点と、3人以上の応募があった地名にちなむ5点の計10点から選考した。22日の開校準備委員会でこの中から「大森小」と「野川小」の2点を選び、翌23 日に臨時の市教育委員会で「大森小」に決めた。大森小は公募で6人が応募、ネット検索でアダルトサイトなどはヒットしなかった。
大森小の名称については「新設小学校の通学区域に大森山や大森工業団地がある。大森山からは市内をほぼ一望でき、大森工業団地で培われた最先端技術は世界に大きく貢献している。こうしたことから、子どもたちに古里に誇りを持ち、大きく世界に羽ばたく人間になってほしい、という願いを込めた」という。
会見に先立って行われた議員への説明では、校名変更の了承を得たという。新校名は9月定例会最終日の28日に追加議案として提案され、可決されれば正式に決定する。
校名変更に伴う校歌と校章の修正で経費増が見込まれる点について土田市長は「各制作者には従来の契約金額で修正してもらえるよう交渉しており、校章の制作者については了解を得ている。新たな経費が掛かる場合は執行部の責任ととらえ、給与を減額するなどしかるべき措置を取りたい」と語った。また今回の一連の騒動に対しては「インターネットが普及する中、市教委が事前にネット検索を怠ったのは決定的なミスだった。今後の市政運営については今回の件を反省点としたい」と述べた。
2010/09/25 00:33 【山形新聞】
「東根市民の声」となれば市長など行政側の動きも仕方がないことなのかな。
でも、山形新幹線「さくらんば東根駅」など着実に「さくらんぼ」の街である。更に、山形さくらんぼテレビが現地にあるので、心強い。著作権上の上でも"さくらんぼ小学校"は手を付けるべきである。「妖怪」ではイメージが悪すぎる、とぼやいていた某所を見る思いである。
それに、東根市側と「『同人18禁美少女ゲームソフト制作サークル』さくらんぼ小学校」との直接会談もあっても良さそうである。この機会を逃すといろいろなわだかまりを残しそうに思えてならない。
地域興しブームもあり、一歩踏み込めないものかな。
南部町(なんぶちょう)は大丈夫か。「名川チェリー剣吉駅」にしましょうね?
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Posted at
2010/09/25 09:30:57