
ブレークスルー 突破口を探る
バスを守れるか
(5)最後の砦(2011/11/11)
全国的に地方自治体が公営交通からの撤退を相次いで決断する中、八戸市は市営バスを維持する方針を明確に打ち出している。
少子化や高齢社会が急速に進む地方では、もはや事業者の自助努力だけでバスを存続させることは困難。市の姿勢は、路線バスが地域社会に欠かせないインフラであり、公金を投入してでも守らなければならない存在だからだ。
2009年3月に策定した市地域公共交通総合連携計画では「地域・交通事業者・八戸市が三位一体となり、地域公共交通を見詰め直し、育て、次世代に引き継ぐ」を基本理念の一つに掲げた。
小林眞市長は「どんな状況にある人でも、交通手段が確保されるのは大事なこと。地域社会を守るため、市営バスは続けたい」と存続に意欲を示す。
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将来的なバス交通の方向性について、市地域公共交通会議会長の武山泰八戸工業大教授は「利用者が多い幹線部分に力を入れ、運行本数を増やすなどサービス向上を図らなければならない」と強調。民間事業者との等間隔共同運行などを通じ、利用促進につなげる方針だ。
末端の部分は、維持を基本としながらも、利用状況に応じて運行形態を見直す考え。「行政の負担になっても、公営で責任を持ってやらなければならない部分もある」とし、路線バスネットワークの維持には行政の覚悟が必要と説く。
路線バスを生かしたまちづくりへの取り組みも急務。特に、最も運行本数が〝手厚い〟市中心街は、十分に優位性を生かし切ってない、との指摘もある。
ことし2月には中心街のバス停5カ所(三日町、中央通り、八日町、朔日町、六日町)の名称が「中心街ターミナル」に統一。八戸ポータルミュージアム「はっち」1階には、同ターミナルの運行情報を表示するモニターが置かれた。
バスと中心街が一体となり、それぞれの再生に向けた相乗効果を生み出せないか―。この点も取り組むべき課題の一つに上がる。
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バス路線の維持に向けて模索を続ける八戸市と事業者。しかし、このまま利用者の減少に歯止めがかからなければ、バスは存在価値がなくなり、姿を消すことになるだろう。
最後の砦(とりで)である公共交通機関を失えば、高齢者や学生ら〝交通弱者〟の移動が困難になり、地域社会に大きな影響を与えるのは避けられない。
バスを守るためには何が必要か。市と事業者は継続して利用促進や経費節減などに努めるとともに、バス事業の収支状況や公金投入の実態を明らかにして、市民全体で問題を共有すべきではないか。
東日本大震災直後の燃料不足の中、通勤・通学の手段としてあらためてバスの役割が見直された。一度に大勢の乗客を運ぶバスは地球環境に優しい乗り物でもある。電気バスの導入など、環境保護や省エネといった観点からのアプローチも必要だろう。
バスを動かすのは燃料やエンジンだけではない。次世代に公共交通を引き継ぐためには市民の力が欠かせない。
(「バスを守れるか」は終わり。工藤洋平、松原一茂が担当しました)
デーリー東北 より
「東日本大震災直後の燃料不足の中、通勤・通学の手段としてあらためてバスの役割が見直された」
私もガソリン確保困難でJR八戸線と路線バスを使いましたね。たまたま勤務地の交通機関が好条件であったこともあるが・・。
「八戸市営バス」が八戸市の"資産"であり、八戸圏域の資産でもあることに気づき、最後の砦(とりで)として実験中なのだろう。
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Posted at
2011/12/10 15:10:00