
2019.09.28 07:00
プレミアム軽の資質あるダイハツ「キャスト」が販売不振の訳
[写真・画像]
(上)ダイハツ「キャストスタイル」のフロントビュー
(中)「キャストスタイル」のヘッドランプまわり。ボディの随所に細やかな曲線がついている
(下)ウッド風の加飾パネルが上質感を出すダイハツ「キャスト」
近年、軽自動車といえども100万円をゆうに超えるクルマが多数販売され、より上質感や快適性、ファッション性を高めた“プレミアム軽”が人気を博してきたが、ここにきて失速ぎみだ。自動車ジャーナリストの井元康一郎氏が、ダイハツのプレミアム軽「キャスト」に試乗して、その要因に迫った。
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ダイハツの軽乗用車ラインアップのなかに「キャスト」というモデルがある。プレミアム軽を標榜するホンダ「N ONE」、実用性とスポーティーな走りを兼ね備えた軽ホットハッチのスズキ「アルトRS」、そして、街乗りの快適性を重視した軽クロスオーバーSUVのスズキ「ハスラー」と軽の人気車種すべてに対抗すべく、1つのモデルを3種類にカスタマイズするという面白いコンセプトによって生み出された。
そのうちN ONE対抗馬というミッションを負った「キャストスタイル」を700kmあまり走らせる機会があった。
テストドライブ車はノンターボのトップグレード「G プライムコレクション SAIII」。エクステリアはブリティシュな印象の濃いグリーンメタリックで、ルーフはホワイトのフイルムで2トーン化されていた。合成皮革シート、ウッド超の加飾パネル、紫外線&赤外線吸収ウインドウ、革巻きステアリング、LED室内照明、オートハイビーム付きLEDヘッドランプ等々、これが軽自動車かと思うような装備が満載だった。
そのキャストスタイルの印象だが、最大の特色は何と言っても、内外装のデザインの仕立てだ。
まずはエクステリア。パッと見はちょっとカワイイという程度の印象なのだが、じっくり観察すると作り込みは非凡だ。フロントフェイス、ボディ側面からテールに至るまで、随所に非常に細やかな面の絞りが施されていた。全幅1480mm以内という軽自動車の枠の中でこれだけ情感豊かな面を実現させたデザイナーやクレイモデラーの苦労がしのばれるところだった。
ドライブ中、最新のフランス車やBMWミニなど、デザインコンシャスなクルマと並べてみる機会が幾度もあった。ボディが軽サイズであるため、風景の中で単体で見るとそれほどインパクトはないのだが、それらのエモーショナル系モデルの横に置いても存在感を失わない。彼らが作ったとしてもおかしくないなと感じたほどだ。
インテリアはキャストスタイルの中でも最も凝った装飾が与えられていたが、その出来もなかなかのものだった。質感的にはダッシュボードがハードプラスチックだったりと、軽自動車の域を出ないのだが、素晴らしいのはウッド風の加飾パネルやドア内張り上のパッドの色の選定をはじめとしたセンス。
単にゴテゴテと飾りつけた感じではなく、とてもまとまりが良かった。また、質感的には大したことのない基本部分も、ドアトリムの厚みが普通車ライクに感じさせる造形が与えられているなど、秀逸なものがあった。軽の欧州車などと評されたN ONEに勝とうという意欲がにじみ出るインテリアだった。
これで走りや乗り心地も上質であれば、見掛け倒しでなく中身も含めて抜きに出た「軽セダンと言えるところなのだが、実際にドライブしてみるといささか乱暴なフィールであったのが惜しまれた。
筆者は昨年秋に同じダイハツの「ミラトコット」で4000kmを長駆し、軽ベーシックとしては異例なほどナチュラルな操縦性や高い安定性、疲労の少なさに驚嘆したが、キャストスタイルはそんなトコットの域には達していなかった。
東京から富士山麓の河口湖へ向かう際、中央道ではなく丹沢山塊の近くを抜ける国道413号、通称“道志みち”のワインディングロードを走ったのだが、トコットがコーナーをリズミカルにターンするようなフィールであったのに対し、キャストスタイルは動きがバラバラという感じで、常にクルマの挙動に神経を使うツーリングになった。乗り心地もゴロゴロ感や突き上げが強く、また舗装面が荒れた箇所ではロードノイズも一気に高まる傾向があった。
もっとも、悪いことばかりではない。最低地上高が150mmとそこそこ余裕があったため、富士山麓の別荘地に広がるオフロードでも床を擦ったりフロントバンパー下部が路面と接触したりといった心配をほとんどせずに通過することができた。乗ったのはFWD(前輪駆動)だったが、これなら圧雪路なども比較的走りやすいのではないか。こうした汎用性への気配りが濃厚なのは、ダイハツ車の特徴だ。
ロングランの実燃費はトータルで22.6km/L。数値的には今どきのノンターボの軽セダンとしては平凡だが、前述の道志みちや山梨の西沢渓谷、果樹園やワイナリーの集積地勝沼から東京の奥多摩に抜ける柳沢峠などのワインディング走行が多かったことを考えれば、まずまずとも言える。ただし、車両重量が800kg台半ばと少し重いためか、市街地燃費は15km/L前後にとどまった。
このように、動的質感については決して良好とは言えないものの、カワイイを超えた質感を持つキャストスタイルは、プレミアム軽としての資質は思ったより高いものに思えた。
そもそも軽自動車のユーザーの多くは今回のようなロングツーリングはあまりやらない。乗り味が良くないという弱点も、ショートトリップであれば気になることはないだろう。また「タント」のようなスーパーハイト系ワゴンに比べると室内は狭いものの、前後席のスペースにはかなりのゆとりがあるなど、実用性も高い。
にもかかわらず、キャストスタイルの販売は思わしくない。今年上半期の実績は月平均3500台。数値時代はそこまで悪くないように見えるが、プレミアムのスタイル、ホットハッチのスポーツ、クロスオーバーSUVのアクティバの3タイプを揃えながらこの実績では、ダイハツとしても到底満足のいかない数字だ。
じつは最初から販売が低調だったわけではない。新登場したときは価格が全般的に高めであったにもかかわらず、発売後1か月で2万台を受注するなど滑り出しは好調。2012年の発売後、徐々に販売を落とし始めていたライバルのN ONEを押さえたところまではダイハツの思惑通りに事が進んでいるように見えた。
ところがである。発売から1年が経過したあたりから、キャストの販売も大きく落ち始めた。N ONEが盛り返したからではない。どちらも売れなくなったのだ。
なぜプレミアム軽は失速してしまったのか──。もちろん普通の軽に比べて高価というのはネックだろう。だが、その違いは普通車における大衆車と高級車のように大きいわけではなく、微々たるもの。軽市場全体を見回すと、ホンダ「N BOX」やダイハツ「タント」など、もっと高価なスーパーハイトワゴンが売れに売れている。単なる価格の問題ではないのだ。
スーパーハイトワゴンが売れている要因はひとえにスペースの豊かさにある。排気量0.66リットルの小さなパワートレインをフロントの端に追い詰め、室内長を限界まで大きく取った設計により、前後方向のゆとりは普通車のリムジンモデルも青くなるほどだ。そこにユーザーは価値を見出している。
一方でプレミアム軽が訴求すべき価値は上質感、快適性、ファッション性などである。それが売れなくなったということは、ユーザーがN ONEやキャストスタイルの持つそれに価値を見出さなくなったからだろう。通用していたのはプレミアム軽という目新しさに興味を持たれていた一時期だけだったのだ。
しかし、これをもって軽自動車の付加価値追求はそもそも成立しないと考えるのは早計だ。上等に見えるクルマ作りという発想が響かなくなっただけの話で、スーパーハイトワゴンの商品性の源である広大な室内空間と同じくらいユーザーに欲しいと思わせるパワーを持つ何かを持たせることができれば、プレミアム軽というジャンルはこれからも消えずに済むだろう。
ただし、自動車メーカーにとってその“何か”を考えるのは大変なことだ。
クルマの上質感、ファッション性として普通にイメージされるような作り込みや工夫は、現行のN ONEやキャストスタイルですでに相当なレベルで行われている。それがユーザーに飽きられているという状況を打破するには、こう作ればユーザーは上等だと感じるはずというこれまでの経験則の一歩上を行く新発想が要求されることは言うまでもない。
軽自動車でそんな面倒なビジネスをやるよりは、人気のスーパーハイトや一定の数が出る廉価な軽セダンだけをやるほうが、自動車メーカーにとってはずっとプレッシャーが小さいはずだ。また、大きな室内容積を持つスーパーハイトワゴンのように実用上のメリットを提供するわけでもないのに高価というのは、簡素なモビリティという軽自動車の本分から外れるという批判も食いかねない。
いくら軽自動車であってもちょっぴり違うものが欲しいというユーザーの願望を満たすクルマを生み出せれば、市場の多様性は広がり、商売的にも活気が出る。果たして軽の付加価値向上の新たな一手を思いつくメーカーが出てくるかどうか、今後の展開が興味深いところだ。
NEWSポストセブン より
ダイハツ・キャスト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
キャスト(CAST)は、ダイハツ工業が製造・販売する軽トールワゴン(STYLE)、および製造・販売していた軽SUV(ACTIVA)、軽トールワゴン(SPORT)である。
1 概要
本車種は「生活を彩る自分仕様の軽自動車」をコンセプトに開発され、SUVテイストのキャスト アクティバ(CAST ACTIVA・以下、アクティバ)、軽トールワゴンでありながらすでに絶版となったミラジーノにも通じるレトロ調軽セダンをモチーフとした都会的テイストのキャスト スタイル(CAST STYLE・以下、スタイル)、専用サスペンションチューニングを施したスポーツテイストのキャスト スポーツ(CAST SPORT・以下、スポーツ)と世界観が異なる3つのバリエーションを設けているのが特徴である。尤も、アクティバとスポーツは、同社としては前者は2012年7月に終売となったテリオスキッド以来約3年ぶりの軽SUV系となり、後者は2009年3月に終売となったソニカ以来6年ぶりの軽スポーツツアラーとなった。
なお、本車はトヨタ自動車へのOEMモデルがある一方で、今のところSUBARU(旧・富士重工業)へはOEM供給されていない。
3.1 年表
・2015年
・9月9日 - 「キャスト」として公式発表。アクティバとスタイルが発表と同時に販売を開始。スポーツは同年10月末より販売開始予定とされた。
・10月29日 - スポーツを公式発表し、同日より販売を開始。スポーツはターボ車のみの設定で、「SA II」のみのモノグレード体系となる。
・2020年3月31日 - アクティバ、スポーツが生産終了。スタイルは継続販売。アクティバは2020年内に発売が予定されているタフト(2代目)が後継車となる。
4 車名の由来
会見の際、社長の三井正則は「毎日の生活はまさにドラマ。そのドラマの『キャスト』でありたい」と、車名に込めた思いを語った。CMでも和歌山県の海中ポストなどを登場させ「あなたを、日本を、おもしろく。」とキャッチコピーを付けるなど、日常を彩る存在=ドラマの役者であることを表現している。
5 CM
出演者はアクティバは山﨑賢人、スタイルは木村文乃(2015年 - 2016年)、2017年10月からの一部改良から早見あかり、2019年5月からは木村カエラを起用。
CM曲は2017年10月までは高橋優の「明日はきっといい日になる」を使用。また、高橋は「秋田の奇岩」編では、山﨑の先輩役として自らCMにも出演。スタイルはRihwaの上記楽曲のカバー楽曲を使用していた。2017年10月からは松任谷由実の「やさしさに包まれたなら」を山﨑と早見が歌唱しているバージョンを使用、2019年5月からのCMには木村カエラの「セレンディピティ」を起用している。
7 関連項目
・ダイハツ・ムーヴ
・ダイハツ・ネイキッド
・ダイハツ・ミラジーノ
・ダイハツ・ウェイク
・ダイハツ・テリオスキッド
・トヨタ・ピクシスジョイ - OEM車種
最終更新 2020年3月31日 (火) 09:54 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
トヨタ・ピクシスジョイ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ピクシス ジョイ(PIXIS JOY)は、トヨタ自動車が販売する軽トールワゴン及び、販売していた軽クロスオーバーSUVである。
1 概要
完全子会社のダイハツ工業からOEM供給を受けて販売されているトヨタブランドの軽自動車「ピクシス」シリーズの第5弾で、軽乗用車では4車種目となる。キャストがベースで、キャスト アクティバをベースにした軽クロスオーバーSUV「ピクシス ジョイC」(PIXIS JOY C、CROSS OVER)、キャスト スタイルをベースにした軽トールワゴンのレトロ軽セダン風ファッション系モデル「ピクシス ジョイF」(PIXIS JOY F、FASHION)、キャスト スポーツをベースにした軽トールワゴンのスポーツ系モデル「ピクシス ジョイS」(PIXIS JOY S、SPORT)と、キャスト同様に3つの異なるタイプが設定される。
ピクシス スペース(2017年1月28日販売終了)やピクシス メガ同様に、今のところSUBARU(旧・富士重工業)へのOEM供給モデルは存在しない。
2 年表
・2016年8月31日
同日、発売。
グレード構成(名称は異なる)・装備内容・ボディカラー・車両本体価格はキャストと同様。エンブレム類が異なっており、キャストでは専用エンブレムが装着されているフロントエンブレムはトヨタのCIとなり、リアの車名エンブレムはキャストが右下に対し、左下に装着される。
・2020年3月31日
C、Sが生産終了。今後はFのみが継続販売される。
3 車名の由来
・ピクシス - 「いたずら好きな小妖精」を意味する英語のpixieからの造語。
・ジョイ - 英語で「喜び」、または「嬉しい」を意味する。
4 取扱店舗
・トヨタカローラ店
・ネッツ店
・トヨタモビリティ東京(旧東京トヨタ自動車、旧東京トヨペットの店舗についてはトヨタモビリティ東京へ統合した2019年4月以降)
なお、他の「ピクシス」シリーズ同様、軽自動車市場比率の高い地域で取扱希望のあった青森県、秋田県、鳥取県、島根県、四国地区、福岡県を除く九州・沖縄地区においては、トヨタ店、トヨペット店を含めた全てのトヨタの販売店での取り扱いとなる。
展示については、取扱店舗から選定された「ピクシス・ステーション」と呼ばれる一部店舗に限られる
6 関連項目・・・ダイハツ・キャスト - ベース車種
最終更新 2020年3月31日 (火) 10:03 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
≪くだめぎ?≫
『RAV4』
『ライズ』『ロッキー』とSUVが好調で、軽自動車部門にも新車投入である。
3月いっぱいで『キャスト アクティバ』『ピクシス ジョイC』を廃盤にした。更にスポーツ系モデル『キャスト スポーツ』『ピクシス ジョイS』も廃盤になった。
かつての『ist(イスト)』のように都会的テイスト・軽セダン風ファッション系モデル『キャスト スタイル』『ピクシス ジョイF』として販売する様である。