
2018/12/20
トヨタ 先代センチュリーを自動車ジャーナリストが購入!内外装を徹底解説
筆者: 永田 恵一
カメラマン:茂呂幸正
[写真] 先代センチュリー
□V12エンジンを搭載する、先代センチュリーを紹介!
自動車ジャーナリストの永田 恵一氏がまさかの先代センチュリーを購入した!
今回は、その魅力をアツく語っていただいたので是非、紹介しようと思う。
□先代センチュリー購入の決め手は「2018年度のネタになる、目立てるから」
2018年は、約20年に一度という日本を代表するショーファーカー(主にプロの運転手さんが運転し、後席に要人が乗るためのクルマ)であるトヨタ センチュリーのフルモデルチェンジがあり、大きな話題となりました。
2018年6月にフルモデルチェンジした現行センチュリーは、同年10月に掲載した私の燃費レポートでもお伝えした通り、後席の快適性はもちろん、日本のシンボルとして相応しく、素晴らしいクルマでした。私はセンチュリーがフルモデルチェンジしたことで、にわかに先代センチュリーが気になり、大いに悩んだ末、自分のものにしたのです!
私が先代センチュリーを自分のものにした最大の理由は「センチュリーが20年に一度のフルモデルチェンジをした2018年度ならネタになるし、目立てるから」であります(笑)。これは冗談のようなところもありますが、本心の部分もあります。私は自動車メディアに属する若手フリーランスですから「目立ってナンボ」というのも必要だと思い、先代センチュリーを購入する覚悟を決めました。
□先代センチュリー 主な3つの魅力
先代センチュリーの魅力は主に3つあります。
・日本車ではおそらく最初で最後であろうV12エンジンを搭載している
・トヨタの中でも別格と言われている塗装のクオリティを体感できる
・前席、後席ともにショーファーカーという世界を体験できる
というように、先代センチュリーでなければ味わえない世界があり、自動車ライターとしてこのようなクルマを知るのには、大いに意味があります。
※ここからは自分のクルマでもある先代センチュリーに敬意を込め、先代センチュリーをV12センチュリー、現行センチュリーをハイブリッドセンチュリーと表記します。
V12センチュリーの新車価格は約900万円から1200万円。中古車価格は、年式が古く走行距離が多いものならば50万円程度で買えるものも流通しています。その理由として、こういったクルマはどんなに状態が良くても、維持費や修理代の高さ(後者は”そう思われがち”が正解でしょうか)、燃費や取り回しの悪さなど、極端に言えば「もらっても困る」という面もあり、需要が少ないためです。このあたりはベンツSクラスやBMW7シリーズも同じ傾向と言えるでしょう。
ならば「いつまで維持できるか分からないけど、ダメでも諦めのつく値段のV12センチュリーを買ってみますか」というのが狙いです。
という訳で購入にあたり、V12センチュリーが辿った軌跡を簡単に振り返ってみようと思います(といっても20年間という長いモデルサイクルの中で、私にはごく前半の個体しか買えませんが)。
□V12センチュリーの軌跡
・1997年4月登場 前期型
30年振りのフルモデルチェンジ。クルマ自体は当時の2代目セルシオと関連がある模様。ハイライトの1つとなる5リッターV12エンジンは、当時の2.5リッター直6を2つつなげるという成り立ち。
スペックはこの頃は280馬力規制があったこともあり最高出力280馬力&最大トルク49.0kgmでした。さらにこのV12エンジンは「この種のクルマはトラブルで止まることは許されない」という思想から、エンジンにトラブルが起きても片バンクの6気筒で走れる機能や燃料ポンプが2系統あるなど、航空機のような信頼性を備えています。なお組み合わされるトランスミッションは4速ATでした。
バリエーションは、まず前後モニターの有無があります。それぞれにフロアシフトとコラムシフトが設定され、ミラーはフェンダーミラーが標準で、フロアシフトにはドアミラーも設定されます。そのためコラムシフト+ドアミラーのセンチュリーはほぼ後から手を加えたものとなります。
シート地はウールファブリックが標準で革はオプション。ボディカラーに英語名に加え日本語名が着くのもセンチュリーの伝統です(黒はエターナルブラック&神威(かむい)、紺はシリーンブルーマイカ&摩周(ましゅう)など)
なお初期型の価格はモニターなし924万5000円、前後モニター付き986万5000円と、今からすれば激安とも考えられます。
・2005年1月 中期型(価格は前後モニターが標準となったこともあり1060万円)
テールランプのLED化、ATが4速から6速へグレードアップなど
・2010年8月 後期型(価格は1208万円)
バックモニターの装着、鳳凰と呼ばれる鳥のエンブレムの背景が白から黒に変更など
※V12センチュリーはこの他にも多々細かい改良を受けています。
と一応V12センチュリーの歴史を把握しながら、私のところにやってきたというと、V12センチュリーは、2000年式走行14万4000km、フェンダーミラー、フロア4速AT、前後モニターなし、モケットシート、黒というごく標準的な仕様。購入先はヤフオク(笑)で、価格は新車の250ccのバイク程度でした。
さて私のV12センチュリーですが、乗って云々に関しては別記事の燃費&試乗レポートでお伝えしますが、結論からいうと買ってよかったです。
というのも、前述したV12エンジンや各部のズバ抜けたクオリティを知れたのはもちろん、お乗せした人が自動車メディアで働いていても滅多に乗ることがないクルマだけに喜んでくれる、笑顔になってくれるからです。だから私のV12センチュリーのもう1つのテーマは笑顔です(笑)。喜んでもらった声を挙げると
「レクサスLSに乗る機会はあると思ったけど、センチュリーに乗れるとは思わなかった」(やはりセンチュリーは別格のようです)
「V12エンジンには“シュシュシュボン“と回るセルモーターの音も含め、手を合わせてしまいます」
「基本部分は調子いいし、面白いクルマじゃん。お前の買ったクルマで一番のヒットじゃないか」(私のボスの国沢光宏氏)
また「黒いデカいクルマで迎えに行きます」といえば驚かれ、中には「中古ですよ」とスペックを言っても値段が分かりにくいクルマだけに「300万円くらいですか?」という人もおります。その時私は「私にそんなお金ある訳ないでしょう(笑)」と返しますが、ハッタリやいろいろな意味でのパンチも想像以上で、これだけ喜んでもらえればもう元は取れたと思っています。
ここからはV12センチュリーにお乗せした方が喜んでくれる大きな理由でもある、懐かしいものも含んだセンチュリーならではの装備品を延々と紹介しますので、写真と一緒にご覧ください。
□先代センチュリー 特長
・前席
■シート
シートは前席、後席ともにフカフカの座り心地です。ドアハンドルはアメ車のような形状です。
■メーター
シンプルなデジタルメーターで、タコメーターは下部にある細長いマルチインフォメーションディスプレイに数字で表示されます。またマルチインフォメーションディスプレイには日常的な半ドアや、タイヤの空気圧などの各部に異常があった場合の警告も表示され、SCROLLボタンを押すとチェックが行われます。
■時計
前後モニターなしの場合には立派なアナログ時計が装着されます(電波時計ではありません)
■運転席、シフトレバー回り
足踏み式パーキングブレーキを解除するレバー、エアサスを使った車高を上げるボタン(後席の乗降の時など)、リアカーテンのボタンがあります。私のV12センチュリーは残念ながら途中スモークフィルムを貼るためだったのか、カーテンは外されています。シフトレバーの周りには助手席の前後とバックレストを動かせる機能もあります。
私はウケ狙いで運転手用に白い手袋も常備しています(笑)。
■オーディオ
ソースはCD、AM&FM、時代を感じさせるカセットテープに加え、見慣れないSWという文字が並びます。SWは短波放送で、要人が株価をチェックするためなどのものなのでしょう。またグローブボックスには6連奏CDチェンジャーが装備されます。音質はミュージックモードと、主にAMと短波放送用のアナウンスモード、音場には後席優先モード、後席の音が小さくなる前席モードがあります。
■エアコン
エアコン、パワーウィンドウを含め分かりやすい日本語表記になっているのが目を引きます。
後席の吹き出し口のオンオフもできます。
■助手席(私は秘書席と呼んでいます)
ヘッドレストを手動で前に倒すことができるので、後席の要人に開放的な前方視界を提供できます。そして助手席にはV12センチュリーの装備の小さなハイライトである、バックレストの一部が後ろに貫通し、後席の要人の足を伸ばせるオットマン機能があります(要人の足が蒸れていると、車内は厳しいことになりそうです)。また助手席下にも収納ボックスがあり、基本的には書類などを入れるのでしょうが、他のものを入れることもあるのかもしれません。
・後席
サイドシルとフロアの高さをそろえたことで生まれた乗降性の良さは、V12センチュリーからハイブリッドセンチュリーにも引き継がれています。
■シート
フカフカのモケットシートはスプリング入りで、表皮は私のV12センチュリーは後席を使う機会が少なかったのか定かでありませんが、「張り替えてあるのかと思った」と言われたことがあるくらいに綺麗な状態を保っています。後席はシートヒーターとリフレッシング機能(今でいうところのバイブレーターのようなマッサージ機能)が付き、ハイブリッドセンチュリーに比べれば大雑把ではありますが、電動でいろいろと動きます。さらに後席から助手席も動かすことができますが、人が座っているとちょっと面白く、同時にセンチュリーの車内における各乗員の立場も見ることができます。
■ルーフ
二人分の照明付きバニティミラー、長~いアシストグリップ、角度と照度の調整機能が付いた読書灯、後席用時計が付きます。
■その他
アームレスト内には、要人が会議の模様を聞き直すために使うのか、センチュリーのロゴ入りカセットウォークマン、Bピラーには靴べら入れ(私は100円ショップの靴べらを値札付で堂々と入れてます笑)、さらに前後モニターなし仕様の大型コンソールタワーの小さな画面には「FM多重放送(=通称見えるラジオ、交通情報や曲名などが表示されました)を受信できません」という文字が輝きます(もう放送してないのだから当然です)。
・ラゲッジスペース
トランクの奥にはぞうきんなどを掛けるウエスハンガー、右前には歴代セルシオでも見たことがある気がする立派な工具ボックス(このあたりには電磁で開く給油口がスイッチで開かなくなった時に手動で開けるためのプレートも)、手前には毛バタキケースが(私も安物をいれてあります笑)が。また本来は折り畳みと取り外しが可能な収納ボックスもあるのですが、日常使える立派なものもあり、私のV12センチュリーからは持ち去られていました(泣)。
その代わりなのか、20年前のクルマに30年くらい前の古いTOYOTAロゴ入り愛車セットのケースと思われるものがあるのは、私のクルマらしいところです。なおリアドアとトランクリッドは軽く閉めれば自動で閉まるイージードアクローザー付(ハイブリッドセンチュリーはフロントドア2枚にも付いています)で、私のV12センチュリーは18年経ってもこの機能が健在なのは褒めてあげたいところです。
これだけ今となっては懐かしいものや面白いものが揃った格式高いクルマですから、乗せた方が笑顔になってくれるのも分かっていただけるかと思います。実際私のV12センチュリーの撮影は編集部Mさん、カメラマンMさんに加えて、「V12センチュリーがあるから」とやって来たT編集長、私の4人で行ったのですが、最初から最後まで笑いと笑顔が絶えませんでした(笑)。
V12センチュリーを運転した印象に関しては、続くV12センチュリー実燃費&試乗レポートをご覧ください。
[著者:永田 恵一/撮影:茂呂幸正]
筆者永田 恵一
1979年生まれ。26歳の時に本サイトでも活躍する国沢光宏氏に弟子入り。3年間の修業期間後フリーランスに。得意分野は30代前半とはとても思えない豊富なクルマの知識を生かせる原稿。自動車メディア業界にはほとんどいないこの世代のフリーランスとして、歩みは遅いが着実に前進中。
監修トクダ トオル (MOTA編集長)
新車の見積もりや値引き、中古車の問い合わせなど、自動車の購入に関するサポートを行っているMOTA(モータ)では、新型車や注目の自動車の解説記事、試乗レポートなど、最新の自動車記事を展開しており、それらの記事はMOTA編集部編集長の監修により、記事の企画・取材・編集など行っております。
2018/11/05
トヨタ センチュリー新旧比較|日本を代表する最高級セダンの進化を探る
筆者: 渡辺 陽一郎
カメラマン:小林岳夫/茂呂幸正/トヨタ自動車
■かつては自動車メーカーのステイタスだった特別な高級セダン
トヨタ センチュリーは、日本車で唯一、後席の居住性を重視して開発されたクルマだ。主な顧客は法人で、重役が移動する時の社用車などに使われる。
日産 シーマも今はフーガハイブリッドのロング版になり、同様の需要があるが、以前は一般オーナーの運転する高級セダンだった。センチュリーと同じ位置付けになる日産 プレジデントが廃止され、シーマがこの役割を受け継いだ。
過去を振り返れば、各メーカーとも法人向けの高級セダンを用意していた。三菱にはデボネアがあり、マツダはGMホールデンプレミアのボディに13B型ロータリーエンジンを搭載して、ロードペーサーを造った。法人向け高級セダンを用意することはメーカーにとって一種のステイタスだったが、海外市場を重視する今では、このような思い入れも薄れた。
途中を割愛・・。
■トヨタ センチュリー|グレード構成&価格設定比較
新旧モデルともに、グレードは基本的に1種類だ。先代型にはATレバーをハンドルの部分に装着するコラム式ATが用意されたが、新型ではこれが省かれてフロアシフトになる。
問題は価格で、先代型の最終型は1253万8286円だったが、新型は700万円以上も値上げされ1960万円に達する。
新型はハイブリッドになって安全装備も大幅に充実したが、先代型もセンチュリー専用のV型12気筒エンジンを搭載した。このエンジンは約20年間にわたり製造されたが、生産総数はセンチュリーと同じく約1万台にとどまり、トヨタプリウスの1か月の販売台数よりも少し多い程度だ。
新型センチュリーが先代レクサスLS600hをベースにコストを抑えたことも考えると、700万円の値上げ(比率に換算すると新型の価格は先代型の1.8倍)は高すぎる。
開発者によると、新型センチュリーの高価格は製造コストだけでなく、生産規模によるところが大きい。先代型を発売した時は1ヶ月の販売目標を200台に設定したが、新型は50台だ。センチュリーは国内専売だから1か月に50台では生産効果が悪く、販売規模の小ささが価格を押し上げた。
これはユーザーとは関係のないメーカーの事情だから、新型センチュリーは先代型よりも単純に割高なクルマになったと判断される。
■トヨタ センチュリー|旧型と比べて分かった新型の総合評価
新型センチュリーは、今の日本で手に入る後席の最も快適なクルマだ。安全装備も進化したので、安心感も高まり選ぶ価値を向上させた。
ただし特別なV型12気筒エンジンが廃止されて、先代レクサス LS600hと同じV型8気筒のハイブリッドが搭載されたりすると、クルマ好きとしては寂しい。18インチタイヤを履いた外観も、流行に迎合した印象を受ける。
もっともセンチュリーの購買層にとって、これはどうでも良い話だろう。VIPが安全かつ快適に移動できて、同乗させる接客相手に対する失礼も一切なく、十分なもてなしができれば目的は達成されるからだ。1960万円の価格が許容されるなら、高い満足感が得られる。
筆者渡辺 陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている
以上 2つの記事とも MOTA オートックワン
≪くだめぎ?≫
「FM多重放送(=通称見えるラジオ、交通情報や曲名などが表示されました)を受信できません」という文字が輝きます(もう放送してないのだから当然です)。・・・スマホ時代ですから・・。
ショーファーカー(主にプロの運転手さんが運転し、後席に要人が乗るためのクルマ)『センチュリー』が初のモデルチェンジしたのが1997年(平成9年)4月、2018年(平成30年)6月に現行型の"ハイブリッド『センチュリー』"の3代目になった。マイ父が"V8「クラウン」"と言う単語がよく聞かれた。30年ぶりのモデルチェンジして「V8→V12エンジン」、と"ハイブリッド『センチュリー』では「V12センチュリー」り方がインバクトが強いと思う。私は「フェンダーミラー」の方が感動だか。
それよりもこの「V12センチュリー」が月販目標200台、ハイブリッド『センチュリー』と
大型ミニバン「グランエース」が共に月販目標50台。現在が如何に高級セダンから"ミニバン"時代に成ったかの象徴でもあろう。