
自動車最前線
キャンピングカー「初心者」でも運転できるのか
普通免許で乗れるが「乗り味」は普通車と異なる
渡部 竜生 : キャンピングカージャーナリスト 2021/05/25 13:00
[写真・画像] (上)「大きくて運転が怖い」と思われがちなキャンピングカーですが…(画像提供:キャンパー鹿児島)
(下左)普段使いの車でも牽引できるキャンピングトレーラー(画像提供:MYSミスティック)
(下右)キャンピングカーらしい外観のコルドバンクス(画像提供:バンテック)
「大型免許なんて持ってないし…」「運転、大変そう…」
初めてキャンピングカーの展示会に来た方からよく聞くセリフだ。軽自動車ベースやバンコン*1ならまだしも、キャブコン*2や輸入車は「巨大」に感じるらしい。ただ普段見慣れないというだけで、そう思えてしまうのだ。
*1 トヨタ・ハイエースや日産・NV350などワンボックス車の内部を改造したタイプのキャンピングカーのこと。バン・コンバージョン、略して「バンコン」と言う。外見は元のワンボックスのまま。
*2 キャブオーバータイプ(エンジンが運転席の下にあってボンネットがない)の小型トラックに、専用の居室を架装したキャンピングカーのこと。キャブオーバーコンバージョンを略してキャブコンと言う。見た目も中身も、いわば「ザ・キャンピングカー」。
そこで今回は、キャンピングカーの実際のサイズや免許制度などから、キャンピングカーの「運転難易度」について考えていこう。
■どんな免許が必要?
「普通免許しか持ってないから」
そうおっしゃる方は多い。だが、そもそもご自分の免許証でどんな車が運転できるか、把握しておられるだろうか。
意外に思われるかもしれないが、普通・中型・大型といった免許の種別に車の大きさは関係ない。では、何を持って普通・中型・大型なのかというと、乗車定員と車両総重量・最大積載量で分けられているのだ。
ひと昔前まで、自動車運転免許証には普通と大型しかなかった。数回の制度変更を経て、現在では免許取得の時期などによって細かく分けられている。
「普通免許」で運転できる車両
取得時期によって運転できる自動車の範囲が異なる
免許取得日 車両総重量 最大積載量 乗車定員
・2007年6月1日以前 8.0t未満 5.0t未満 10人以下
・2007年6月2日~2017年3月11日 5.0t未満 3.0t未満 10人以下
・2017年3月12日以降 3.5t未満 2.0t未満 10人以下
出所: 警察庁HP基に筆者作成
■現在取得できる「普通免許」でキャンピングカーは運転可能か?
「乗車定員10人以下、車両総重量3.5t未満」の車であれば、取得時期に関わらず普通免許で運転することができる。そして、日本で売られているほとんどのキャンピングカーがこの条件に合致する。
つまり、普通免許を持っている人なら、ほとんどのキャンピングカーは(法律上)運転できる、ということになる。
マイクロバスベースのバスコンや一部の輸入車は、車両総重量が3.5t以上あるため、準中型免許以上が必要となるが、こうしたキャンピングカーはむしろ少数派といえる。
免許の取得時期が現行制度より前の人についてはどうだろうか。
2007年6月1日以前に普通免許を取得された方は、免許の種類が無条件に「中型」になっている。免許の条件欄にも「中型車は中型車(8t)に限る」と書かれているので、確かめてみて欲しい。つまり、07年6月1日以前の免許なら、8tまでの車両が運転可能ということ。
そうなるとバスコンや輸入キャンピングカーもほぼこの範ちゅうに入ってくる。よほど大型の特殊なキャンピングカーでなければ運転できるということだ。
■トレーラーも普通免許でOK?
普段運転している車に連結し牽引できる「キャンピングトレーラー」も、近年人気が高まっている。この場合は何の免許が必要だろうか。
結論から言うと、こちらもおおむね普通免許で運転可能だ。
工事などに使われる大型トレーラーなどの牽引車には、高度な運転技術が必要とされるため、「牽引免許」が存在する。
だが、「トレーラーの車両総重量が750kg以下」である場合、牽引免許は必要ない。
750kg以下と言われてもピンとこないだろうが、エンジンのついていないトレーラーは、かなり大きくても軽量だ。ダブルベッドと2段ベッドを備え、キッチン、トイレも付いて、四人家族で使える仕様でも750kgに収まっているものもある。
牽引免許が不要なら、トレーラーも選択肢に入る、という人も多いのではなかろうか。イニシャルコストもランニングコストも安く、普段づかいの乗用車を手放さずに済む(トレーラーとのバランスの検討は必要)。トレーラーという魅力的な選択肢が加われば、キャンピングカー選びはぐっと多彩になるはずだ。
■気になる運転の実際は?
「免許制度はわかったけれど、やっぱり大きくて運転が不安」。
そんな声が聞こえてきそうだが、その点についても、ぜひ再考いただきたいと私は思っている。
果たして、キャンピングカーは本当にそんなに大きいのか?
まるでトラックのような外見。これに乗って動かすのか?という非現実感から、つい尻込みしてしまうのだが、実は測ってみると、さほど大きくないことがわかる。
例えば、ファミリーカーとして人気のトヨタ・アルファードは(モデルによって多少異なる)
サイズ=全長4,950mm×全幅1,850mm×全高1,950mm
最小回転半径(ハンドルをいっぱいに切って回った時の半径)=5.6m
これに対して、トヨタ・カムロードをベースにしたキャブコン、一例としてバンテック・コルドバンクスはどうだろう?
サイズ=全長4,990mm×全幅1,980mm×全高2,960mm
最小回転半径=4.9m
長さの差はわずか4㎝。幅の差は13㎝。高さの差はおよそ1m。運転する上で特に気になるのは幅や長さだろうから、思ったほど大きくないことはわかるだろう。
何しろキャンピングカーは、白くて大きな壁がそそり立っているように見える。そんな外見が邪魔をして、大きく見られているのではないだろうか。
エンジンが運転席助手席の下にあるキャブオーバータイプは、乗り降りこそ少々大変だが、視線が高く視界が良い。同じサイズの車両でも、むしろ運転はしやすいのではないか。リアビューカメラや360度カメラなどの助けを借りるのも良いだろう。
■とはいえ、乗用車とは違う
背が高い分、視点が高くて運転しやすい。が、その分、重心が高いという特徴もある。また、側面積が大きいため横風の影響も受けやすいので、運転してみての「乗り味」は普通車とは違うと思っておいたほうがいい。
例えば、右左折でコンビニの駐車場に入ろうとすると、予想以上に大きく揺れて驚く人は多い。それだけ重心が高いということでもあり、急なカーブは苦手と思った方がいいだろう。
それに、似たような大きさとはいえ、先ほど紹介したアルファードとコルドバンクスでは重量が違う。それだけ、スピードの出し過ぎや急ブレーキへの影響も大きいと考えるべきだ。
特に高速道路など、普通車と同じ感覚で運転すると、車の挙動が違うことに驚かれるかもしれない。
キャンピングカーだからといって、運転がとっても難しい、ということは(よほどの大型車両でない限り)ない。だが、普通車よりも重心が高い・重量があることを意識して、普通車以上にスピードは控えめに。特にカーブではしっかり減速することが大切だ。
そもそも、キャンピングカーはのんびり旅を楽しむための車。その日、停まったところが宿になるのだから、目を三角にして飛ばす必要などないはずだ。無理をしないためにも、スケジュールには余裕を持って、マイペースな旅を楽しみたいものである。
東洋経済ONLINE
≪ぐだめぎ?≫
「乗車定員10人以下、車両総重量3.5t未満」
「トレーラーの車両総重量が750kg以下」
『普通免許』では
・アルファード
サイズ=全長4,950mm×全幅1,850mm×全高1,950mm
更に、
・ハイエース(バン・ワゴン)スーパーロング
全長5,380mm×全幅1,880mm×全高2,285mm
・グランエース
全長5,300mm×全幅1,970mm×全高1,990mm
を運転できる・・。
我が家の車
・5ナンバー・ヴォクシー
全長4,580mm×全幅1,690mm×全高1,870mm
・4ナンバー・ハイエース
全長4,690mm×全幅1,690mm×全高1,980mm
娘が免許年齢になったが、同サイズの教習車より運転しやすいと思うがどうか・・・。