『踊る大捜査線 TheFINAL』
観てきました、『踊るFINAL』。
自分のようなドラマ、テレビスペシャル、映画3作にスピンオフ3作とリアルタイムで観てきた
モロに『踊る』世代はやはり楽しみで。
とくに映画公開直前に放送された
テレビスペシャルがまた往年の『踊る大捜査線』テイストたっぷりで非常に楽しめただけに、期待は上がります。(ちなみに劇場版3は最初観た時は新キャラがゴチャゴチャしすぎて楽しめませんでしたが、今回のテレビスペシャル観て新強行犯係の各キャラのポジションが解った後、劇場版3を見直すとなかなかに面白かったり。)
さて、以下
ネタバレ注意なのでまだ観てない人は読まないで下さい。
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基本、『踊る』は
組織論が根底にある話です。
今回の劇場版FINALは
それらの総括、プラスアルファといえる話でした。
テレビスペシャルで王さん(ってかこの役者さん、日本人なんだ!)のキャラも立ち、そのミスっぷりが素晴らしかった。
フォークリフトで運び込まれる大量の誤発注ビールがインパクト大。
本筋の警察官の犯罪を隠蔽する警察上層部に対し、ビール大量誤発注を隠蔽しようとする強行犯係の対比、こういう
コミカルとシリアスの並行が『踊る』の魅力の一つだけに、これはすごく良かったと思う。
しかしシリアス部分は
やっぱ重かった。
誘拐犯との交渉時間の制限で、交渉課から捜査一課へ権利が移り、犯人に動きを悟られ救える子供を救えなかったという無念。交渉を打ち切られた交渉課の
小池(小泉孝太郎)、その被害者家族を公私ともにフォローしていた刑事の
久瀬(香取慎吾)、そして誘拐された娘の叔父となる、
鳥飼(小栗旬)。
しかしここで大事なのは、「救えた
かもしれない」にすぎない、という事。そう、なまじ
中途半端な可能性があっただけに、その炎は消えずに、じわじわと彼らの心の中でくすぶり続ける。
そこに犯人の証拠不十分による無罪判決。
その矛先は犯人と、(あくまで可能性にすぎないが)助けられる希望を断った組織と、その組織にしたがった当時の交渉課課長の真下に対して向く。
なるほど、近作での鳥飼の異常なまでの犯罪者への憎悪の根源がここであり、そして真下に冷たく接する小池の態度もこういう所から来ていたのか。
犯人2人を私刑として殺した3人の次の標的は真下の息子。
誘拐し、その娘と同じ末路を辿らせる事。
今回の青島のCMやトレーラーで使われている
「これは俺達の事件だ」という言葉は、過去の「事件は会議室で起きているんじゃない、現場で起きているんだ」のような決め台詞じゃない。
本当の決め台詞は、
最後に鳥飼にぼそっとつぶやくように怒りを込めて青島が言う、「正義は胸に秘めておくぐらいがちょうど良いんだ」だと思う。
これ、和久さんの名言
「正しい事をしたけりゃ、偉くなれ」と同じくらい、イイ台詞じゃないかと。
今回の犯人である3人は、自分の中の正義とのズレに対して反抗をした。ただし、それは私刑まではともかく、罪無き子供をターゲットにした時点で、完全に自分の方向をも失っている。
そもそも、小池にしても久瀬にしても鳥飼にしても、
主導の移動という規定は最初から知っていたはずだ。ならば、そこの“時間内に解決出来なかった己”に対してはどう思っているのだろうか。内に秘めた矛盾、
その矛盾を抱えた正義の執行の末路は暴走である事は必然。
絶対的な正義などというものは存在しない。つまり正義というのは青島の言う通り、あくまで胸に秘めておくものであり、
発露するものではないという事だ。
今回の『FINAL』は組織論だけでなく、
誰もが好き勝手に己が正義をふりかざす現在の個人論もテーマとしているんだな、と。
自分達がやるべき事、なすべき事を胸に秘めて黙々と働く事、ラスト近くでそしてそれが
報われなかった人達と報われる人達のコントラストがなんともいたたまれない気持ちになる。
ってか真下!お前もうちょっと抵抗しろよ!と多くの人が思ったろうが、一晩おいて冷静になって考えてみると、真下の判断も
“長”として成さねばならなかった事の一つであると思う。
それは息子が誘拐されたその時に
狼狽せず、冷静に事態を判別し、動揺する妻・雪乃さんにも的確な指示を出している事で、“真下が判断を下す事が出来る人物であった”という事を描いているのではないかと思う。
この辺りの
モヤモヤ感もまた『踊る』の魅力で、また良し。
そして大杉漣扮する
横山人事院執行官。過去の映画で公安とかでチラッと出てたキャラが
出世して再登場がこれまた『踊る』らしくてイイ。この上層部と現場という二者にガッツリと割り込むこの役はすごかった。
カミソリ後藤がカミソリのままだったらこんな感じだったんだろうな、と思った『パトレイバー』ファンは多かったに違いない。
そういや『パトレイバー』で思い出したけど、今回の『踊るFINAL』の音楽、
ものすごく『パトレイバー』、つまり川井憲次テイストだったような気がしたのは気のせいかな?元々『パトレイバー』をモチーフの一つとしている作品だけに、ファイナルではその雰囲気をチョイスしてきたのかな、とも。
ちなみに今回もCMやトレイラーは詐欺でした。ええ、
『2』でレインボーブリッジが爆破されるトレイラー映像で狂喜した俺ら『パトレイバー』オタクには、やはり今回もかと。
↓これ。
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あと最後に…まぁこれも多くの人が思っているだろうけど…
バスはねぇだろ、バスは。
まぁそれはそれとして、全体としては
とても面白かったし、ドラマもテレビスペシャルも劇場版三作もスピンオフ作も、
また見返したくなった。
んで観たら、
思い出すんだよね、リアルタイムで観てた時の気持ち。うわ~これはやばいわ。『西部警察』観てウオオオオオ!ってなる世代の気持ち、解るわ。
こういう、良質なドラマが自分の若かりし頃にある幸せというのは、なるほど、良いものだな、と。
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Posted at 2012/09/24 19:22:23 | |
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