世の中、傑作と言われるエンジンも多いが、迷作、駄作と言われるエンジンもある。
傑作、駄作の明暗を分けたのがタイミングや使い方だったりして、
元の設計とは関係ない場合もある。
第二次世界大戦で最高傑作と言われた、ロールスロイス、マーリンエンジンなんかは、
使われたタイミングでは駄作だったらしい。
ロールスロイス マーリンエンジンとは?
ドイツDB600に対抗して作られ、
液冷V12気筒 OHC 4バルブ 排気量27L
790馬力
という、素では何でもないエンジン。
しかし、2段過給、燃料の改良によって 2780馬力まで発展したエンジン。
約60オクタンの燃料から始まり、100になりさらに越えてRONでは表示できずPN(パフォーマンスナンバー)で呼ばれる。 150グレードなんて燃料だったらしい。
(どこぞの国とは反対だ。)
そうなると、アンチノック性能もあがり、ブーストが上がって馬力が出せた。
ターボでも出せそうなもんだが、戦闘機では、急にパワーが欲しくなる場面もあり、
スーパーチャージャが良かったとか。
エンジンレイアウトにも貢献して、すらっとしたノーズができて、空力性能にも影響した。
(P-38なんかはターボのレイアウトがうまくできたけどね)
とまあ、いいことづくめのエンジンだったのだ。
初期型。
スーパーチャージャ駆動方式。(ギア駆動)
後期型。 遠心式コンプレッサーが2個見えるね。(見にくいけど)
スピットファイア、ハリーケンに搭載され、イギリスの主力となった。
アメリカも高性能ぶりに思わず、P-51 マスタングのアリソンエンジンから載せ変える始末。
傑作エンジンは戦闘機だけじゃ、もったいないってことで、爆撃機にも搭載。
アブロ ランカスター
マーリンは結局、27万台も製作されたベストセラー(?)になり、
このエンジンが活躍したせいか、単に物量の差かは知らんが、戦争も終わり、平和になった。
平和になると、爆撃機も不要で、同じような大きさでも旅客機になる。
エンジンもあるし。
で、先のアブロ社は旅客機をこさえた。
アブロ チューダー。
これは傑作エンジン搭載だし? いけるだろ~?って誰しもが思った(かも?)
だが、実際飛ばしてみると、トラブル続出。 しかもエンジントラブルだ。
排気バルブが焼損するのである。
原因を探ると、どうやら、燃料に添加された鉛が悪さをしていたらしい。
当時、オクタン価を上げるのに、もっとも貢献した鉛(4エチル鉛?)が原因という皮肉。
旅客機なんで、離陸してしまうと、後はそんなにエンジン負荷も高くなく、吸気温度も低め。
そうなると鉛が反応せず、添加剤として働かず、しかも気筒配分も悪くなった。
で、排気バルブにしわ寄せが行ってしまったらしい。
結局、使用する燃料の改良で解決したっぽい。
一方、V型エンジンならではのトラブルもある。
とてもウルサイのだw
星型エンジンでは、丸く集合させるのも簡単だが、横にずらっと並ぶ排気管では集合させると性能が落ちた。
でも、客室側の排気管だけでも。。。ってことで取り回しを変更したりで、苦労したっぽい。
平和だと贅沢なもんだね。
じゃ、爆撃機でも同じ問題があったんじゃ?と思うが、いつ敵が襲ってくるかわからん状態では
スロットルをちょいちょい開け閉めしながら、すぐに加速して逃げられるようにしつつ、
ネンピ飛行ではなく、エンジン回転も、ブーストも、ちょっと高めで飛んでいたそうな。
だから鉛の問題はなかったらしい。
騒音は我慢しろってことでww
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さらには、アブロ チューダー、運も悪く、アブロ社の設計チャドウィック氏(アブロ ランカスターも設計)が機体トラブル対応で乗り合わせたプロトタイプ2号機が離陸直後、横転、墜落。
搭乗員、全員死亡という、おまけまでついてしまった。
さらに、さらに、改良4型は、あのバミューダ海域に遭難。
5型も墜落、乗客も含め80名死亡となり、当時では最大の飛行機事故となり、決定打になってしまった。
戦争中は傑作エンジンでも、使い方でダメになったり、さらには機体のせいでダメにもなる。
エンジンってのは難しいですなぁ。
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変なエンジン あれこれ | 日記
Posted at
2016/01/20 23:22:37