<まえがき>
GT-Rを運転していて時々経験する『サージング現象』について、過去には雑誌などで時々取り上げられていましたが、最近はRB26に関する話題も減ってきましたね。
先日、ゴキちゃんのお友達がみんカラに別のテーマも交えながら、とても上手に解説されているのを見て、ゴキちゃんも自分なりの思いを書いてみたくなりました (^o^;)
<過去の経験から>
(1)サージングは完全ノーマル状態では殆ど体感できない。
エアクリーナやサクションパイプ類を低抵抗の社外品に変更すると顕著になる。
吸気管圧が 0mmHg~0.5Kg/cm2程度 の領域で、ブーストが立ち上がっていく際に発生し
易く、一旦スロットルを開け直すとサージング領域を通過できてしまう場合もある。
(2)過去に純正リサーキュレーションバルブにアルミ板を挟んで通路を閉鎖してみた事がある
が、サージングは改善されず、むしろ若干悪化した。
(3)サージングが発生している時は2個のAFS(エアフローセンサ)の出力が逆位相で振幅して
いる。⇒図1ロギングデータ
<ゴキちゃんの仮説>
(1)常時ツインターボ方式の為に、他方のターボの過給圧の影響を受けサージング領域に陥り
易い。
(2)吸気系の低抵抗化により、気柱振動が起こり易くなり、サージングの発生を助長している。
<参考>
●サージング
サージングとは、送風機で発生する自励振動現象のひとつです。
送風機の吸入側或いは吐出側を絞っていくと、吐出圧力/吸入圧力=圧力比はだんだんと
大きくなっていきます。しかし、更に絞っていくと、圧力比は下がっていきます。
これは送風機の翼列で、流れが剥離する、つまり「失速」することで発生します。
実際に現象を観察すると、失速した後に、流れは翼面に再付着します。この剥離と再付着に
より、翼面の圧力状態は周期的な変化をします。これが起振力となって振動現象に至ります。
●サージング限界
横軸に風量、縦軸に圧力比をとって、送風機の特性線を描くことができます。
一定回転数で回っている送風機の吐出側を絞っていくと風量が低下しながら圧力比は上昇
していきます。更に風量を絞っていくとある点から圧力が低下し始めます。このポイントをサー
ジング限界と呼びます。
送風機の回転数をいろいろと変化させ、各回転数毎のサージング限界を結んだ線を「サージ
ライン」と呼び、この左側が「サージング領域」となります。
●気柱振動
配管内に生じる空気の固有振動を指します。
片端開放の基本振動は f=v(音速)/4L(管長の4倍) で高次振動は奇数倍
両端開放の基本振動は f=v(音速)/2L(管長の2倍) で高次振動は整数倍
<解説>・・・上記のゴキちゃんの仮説の番号に対応して書いています。
(1)ターボは構造的宿命としてサージ限界がある訳ですが、通常はサージ領域に入り難いように
コンプレッサーの仕様、タービン側とのバランス、使用環境条件を考慮して設計されています。
但し、一般的な電動型送風機と違ってターボの場合はエンジンの排気圧力によって回される
ため、使用回転数の幅が広く、また吸気側の圧力も運転条件によって様々に変化するため、
ある特定の条件下ではどうしてもサージ領域に入ってしまう事があります。
通常のシングルターボ仕様ではサージングを体感する事は比較的少ないですが、皆無では
ないため、ポーテッドシュラウド等により吐出側の空気を吸気側に還流させ、サージング領域
に入り難くする等の工夫がなされたものがある訳です。
ツインターボ仕様の場合は、ターボが過給をし始める際にどうしても順番が出来てしまいます。
つまり、先に立ち上がりかけているターボの過給圧によって遅れた方のターボがサージング
領域に入ってしまう訳です。吐出圧は直ぐに下がるためターボの回転も直ぐに回復しますが、
今度は先に立ち上がったターボに影響を与えます。これが繰り返され2個のターボによるポン
ピング現象が起こります。
以上がツインターボ仕様でサージングが起き易い要因と思います。
(2)エンジンの吸気配管はその長さに応じた気柱の固有振動数を持っています。
また、吸気系ではスロットルバルブの開閉やエンジンの吸気バルブの開閉による圧力変動
が絶えず起こっています。例えばターボによりブーストが掛かっている時にスロットル
バルブを急に閉じると、吸気の流れがせき止められることで、一時的に吸気管内の圧力が
高まり、そのプラスの圧力波がターボ側に返って来ることは良く知られています。
いわゆるバックタービンですね。
また、スロットルを全閉にしなくても、少し開いた状態でも圧力波の跳ね返りは生じます。
更に、この周波数が吸気配管系の固有振動数と一致した場合は共鳴(気柱振動)となり、
吸気管内に圧力波の振動が発生します。これによってターボの吐出側の圧力も周期的に変動
し、タービンがサージング領域に入ってしまう事になります。
これらの現象は吸気系配管の圧力損失を少なくするほど、また剛性を高めるほど顕著に現れ
て来ますので、レスポンスを良くしようとするチューニングが仇になってくる訳です。
<サージングの軽減策>
さて、恐らくここからが皆さんの一番知りたい所ですよね!
ですが・・・・これまでの説明でお分かり?のように、サージングはターボや吸気配管系が宿命的
に持っている特性なので完全に消し去る事は出来ないのです (^^;
『そんなこと言わずに知ってる事を話なさいっ!』
って怒っている貴方の為に、ゴキちゃんの数少ない経験を紹介します。
但し、内容に責任は持てませんので悪しからず!!
① 例えば5速ギヤ100Km/hで高速道路を巡航中に起こるサージングの場合は、その運転状態で
の点火時期を3~5度程度進めて下さい。(勿論ノッキングが過大にならない範囲で)
点火時期を進めると言うことはシリンダの中で出来るだけ長く燃焼させることになり、結果的に
排気エネルギー(温度、圧力)を下げる事になります。即ち、ターボに仕事を余りさせない様に
することでサージ領域に入り難くする訳です。
理屈の上では、排気側のバルブタイミングや空燃比を変更することでも同じ効果が期待でき
ると思いますが、実際にやった感想では効果は少なかったです。
② 純正のリサーキュレーションバルブを外している場合は、元に戻しましょう。
純正のリサーキュレーションバルブは低圧でも作動するようになっており、ポーテッドシュラウド
と同じ様に吐出側圧力を吸気側に還流させる効果を有しています。単なるブローオフバルブで
は無いのです。
③ ターボ出口側のパイプについて、2個のターボ吐出圧の合流部に仕切り版を追加する。
これは良く知られた対策なのですが、効果は余り期待しない方が良いかも知れません。
お金に余裕の有る方はターボからインタークーラーまでの配管を完全に独立させてインター
クーラーに導く、いわゆる「ツインエントリー」ですね。理にかなっていると思います。
残念ながらゴキちゃんは○○に余裕が無いので試した事はありません (汗;
ちなみに雑誌(クラブスカイライン)で、吸気配管内に"茶漉し網"を設置するとか、マフラーとの
ジョイント部に三角形のガスケットを入れ断面積を絞る・・・等々の紹介がされていたのを憶えて
いますが、いずれも吸排気抵抗を増やす事になるので躊躇してしまいますね。
以上、お粗末な内容でしたが、少しでもお役に立てれば幸いです (^o^)
=追伸=
ゴキちゃんの車ではないですが、関連記事がありましたのでURLを貼っておきます。
ところで、ふと思い出したのですが、
R35GT-Rはターボ~インタークーラー~サージタンクまでが左バンクと右バンクで完全に独立
していますね。これならツインターボでもサージングは起こり難い筈です。
しかも、左バンクのターボの吐出側が右バンクの吸気に、右バンクのターボの吐出側が左バンク
の吸気に行く様になっています。これは左右バンクの出力差を無くすためと思われます。
日産も成長しました!