レンズ沼という言葉がある。レンズ交換式カメラを持っている人間が、どう考えても使い切れるものではない本数のレンズを買いあさってしまう症状を指していると思われる。沼とは所謂「底なし沼」ということだろう。私のような貧乏人には縁がないものだと高を括っていたが、最近、少々やばい感じになってきている。
レンズ沼の中にもいろいろあるのだが、かつて「標準レンズ」と呼ばれた50mm周辺のレンズを買いあさってしまう「標準レンズ沼」というものがある。標準という名のように、お値段も標準的で、決して高いものではない。だから、ついつい気軽に買ってしまうのかも知れない。
私の防湿庫の中にある標準域のレンズを列挙してみる。
1.Ai Nikkor 50mm f/1.4S
2.Carl Zeiss Planar T*1.4/50 ZF
3.AF-S NIKKOR 50mm f/1.8G
4.Ai Nikkor 50mm f/1.8S
5.Ai Nikkor 45mm F2.8P
これに加えて、所謂標準域を含むズームレンズが6本である。はっきり言って、必要数を遙かに超えている。何しろ、銀塩カメラのF2を引っ張り出してきたとしても、Fマウントの一眼レフは3台しかないのだ。
にもかかわらず、私は再び沼の畔に向かって歩き出そうとしている。沼の底から私を呼んでいるレンズ、それは
Ai Nikkor 50mm f/1.2Sである。私がカメラに興味を持ちだした頃、標準レンズの中の最高峰として一際輝いていたレンズである。私が最初の一眼レフを買った頃、f1.2Sは5万円、f1.4Sは3.6万円、f1.8Sは2万円であった。今にして思えばさしたることもない額だが、当時の私にとっては天文学的な数字に思えたものだ。
古レンズを買うたびにお世話になっている「
本間カメラサービス」というお店がある。ニコン認定の修理屋さんであるが、中古カメラやレンズも取り扱っている。そして、そこに件のAi Nikkor 50mm f/1.2S(程度A)があるのだ。お値段は税込42,984円。決して安くはないが、ニコン認定修理業者がOHしたものなのだから、安心度はその辺の店で買うものとは比較にならない。ほしくてたまらないのだが、そのお店が新潟市にあるというのが私にブレーキをかけていた。品物を直接見ていないので、暴走の一歩手前で踏みとどまれていたのだ。また、そのお店が平日しか営業していないというのも大きい。平日に休みを取ってまで新潟市に行くことなどないのだから。
今日、防湿ボックスを買いに市内のキタムラに行った。何で防湿ボックスを買ったのかって、古レンズ達が防湿庫に入りきらなくなったからである。ちなみに防湿ボックスは2個目である。「小さめの防湿庫にしておけば、カメラ機材を買いすぎることもあるまい。」などと考えていたかつての自分の甘さが悔やまれてならない。
閑話休題。買い物を終え、何の気なしに中古コーナーをチラ見したところ、何とそこにAi Nikkor 50mm f/1.2S(程度A)が鎮座しているではないか。お値段は税込44,980円。本間さんのところの商品との差額は、新潟市からの送料を差し引けば微々たるものだ。しかも、こいつは目の前にあり、手にとって確認することも出来るッ!
まあ、自分の性格は分かっている。触ったが最後、レジに持って行くに違いないのだ。心を鬼にして店を出たのだが、頭の中では色々な思いが鬩ぎ合っている。
A.標準レンズは6本も必要ではない。買ったつもりで貯金しておいた方がいい。
B.信頼できるプロがOHした品物なんだから品質は保証付き。安心して買おう。
C.手に取って確認できて、即日持ち帰れるのは大きい。中古品は一期一会だ。

※左が本間カメラサービスの品、右が市内のキタムラの品である。
果たしてA~Cのいずれに着地するのだろう。Aが最も正しいのはよく分かっている。そこに着地できれば一番いいのだろうが、これまでの私の所業を振り返ってみると望み薄と言わざるを得ないんだよなあ…。
Posted at 2019/02/10 13:14:44 | |
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