ゼスティノのタイヤが新しくなり、僕自身使い始めて1年ほどが経過しました。
使い始めのインプレはさせていただきましたが、この1年ゼットレックス7000を街乗りとサーキット走行で使いかなりこのタイヤの特徴がわかってきたので、僕個人の主観的な内容にはなりますが、あらためて総括という形で考えを述べたいと思います。
僕はタイヤについてここまで語ることは滅多にないのですが、使えば使うほど運転が楽しくなり、僕自身のこれまでのタイヤの価値観をかなり変えてくれたゼットレックス7000の魅力を多くの人に少しでも伝えられたら思っています。
街乗りについては、基本的に問題ないのですが50キロくらいから100キロ前後の領域で少々ロードノイズが大きく感じます。
トレッドゴムの柔らかさやパターンの形状が原因していると考えますが、乗り心地そのものは悪くないです。
タイヤのサイド剛性やトレッドの剛性が柔らかいので、路面からの突き上げ感はかなり緩和されています。
後でも述べますが、このタイヤは空気圧でタイヤ剛性やグリップレベルを調整することを特徴としています。
いわゆるエクストラロード規格のようなものをこのタイヤに持ち込んでおり、空気圧でタイヤ剛性を大きく変えることが可能になっています。
個人的には265サイズであればシルビアの1200キロくらいの車重で、2.2キロくらいのがいいのかな?って思ってます。
これは乗り心地とハンドリングの面で各々の好みで調整されることをお勧めします。
街乗りのグリップ面での安全性については、個人的に文句なしです。
トレッドゴムが柔らかく発熱しやすいので路面温度が低かろうがウエットだろうがしっかりとしたグリップ感があります。アジアンタイヤにありがちな冷えていると全然グリップしないと言ったことは全くないです。
耐摩耗性については、トレッドウエア200相当だとメーカーは言っていますが、もうちょっと減ると思います。
でもキャンバーがいっぱいついているとか特殊な状況がなければゴムの柔らかさを考えると案外減りは少ないのですが、とはいってもハイグリップのスポーツタイヤなので、一般的な街乗り専用タイヤに比べれば当然減りは早いです。
以上が街乗りでのインプレです。
ここからはサーキットでのインプレです。
テスト対象とした主なコースは岐阜県のYZサーキットです。
ここはドリフトで有名ですが、コースの歴史は結構古く昔は瑞浪モーターランドと言われていました。
コースレイアウトは一部変更されて低速ヘアピンあり中高速コーナーありのハイスピードでテクニカルなコースになっています。
テスト車両はシルビアS15です。
〇今回の仕様
キャンバーF4度30分 R3度
トー Fトータル-3ミリ Rトータル4ミリ
ショックアブソーバー F・R N1ダンパーEgマジックセット
フロント減衰 1段戻し
リヤ減衰 1段戻し
フロントナックル変更(ロールセンター補正、切れ角アップ)
フロントロアアーム補強及びピロ化
強化タイロッド
フロント・リヤスペーサー10ミリ
バネレートフロント12キロ(XコイルR)、リヤ12キロ(UC01)
リヤヘルパー スイフト4キロ自由長60ミリ
フロントパット エンドレスタイプR
リヤパッド エンドレスタイプR
フロントローター ディクセルPDタイプ
リヤデフ クスコRS1WAY35°
フロントバンパーダクト閉鎖
フロントアンダーパネル
タイヤ ゼスティノ ゼットレックスZTS-7000 前265/35-18(4分山)
ゼスティノ ゼットレックスZTS-7000 後265/35-18(4分山)
エア圧 前2.0 後2.0
タービン GCG2871R
ブースト 1.55
最高速 147キロ
以上は直近のデーターです。
まずゼットレックス7000の本領はサーキット走行に代表されるタイヤをしっかり潰して走るようなスポーツ走行で発揮されます。
トレッドのゴムやサイドの剛性が柔らかいのが特徴で、ぱっと乗った感想はぐにゃぐにゃしてステアリングの反応がダルで、今一つのタイヤかな?と思いました。
しかし、真剣にタイヤに荷重をかけて乗ってみると、最初の不満は一気に吹き飛びました。
荷重がかかるととてもしなやかにすごく粘ってグリップします。
荷重を抜いてもすぐさまグリップが抜けることはなく、掴んでいた路面をじわっと放していくように車の挙動が穏やかに納まります。
とにかくコントロールがしやすくて、車をどんどん滑らせて走りたくなる気持ちにさせてくれます。
一言で表現するならば、「楽しい」(タイヤ) です。
その代わり切れがないのが玉に傷と言った感じです。
タイヤのグリップは縦、横の方向で表現することが多いですが、このタイヤは斜めです。
斜めが強いです。
ですから、タイヤに荷重をかけて車の向きを変え斜め方向に車の挙動を作るとトラクションもかかって車が前に進みタイムも出ます。
とはいっても基本どんな方向でも粘るので、反応は鈍いですが普通に走れてしまいます。
タイムを出したいと考えると、グリップ感が高いタイヤであるがゆえに、それに騙されないことも必要です。
実際の走行データーを見ながら検証しました。
比較としてBSのRE71RSのデーターを持ち込んでみました。
タイムはゼットレックス7000が33秒931。
RE71RSが33秒549です。
ヘアピンコーナーではゼットレックス7000はボトムスピード38キロ(1.48G)、71RSが43キロ(1.43G)。
レイクサイドコーナー(中高速)では、ゼットレックス7000は脱出スピードで99キロ(1.10G)、71RSが104キロ(1.09G)。
最終コーナーでは、ゼットレックス7000は侵入前最高速138キロ、ボトムスピード51キロ(1.45G)、71RSが侵入前最高速138キロ、ボトムスピード52キロ(1.47G)。
以上のことから、ゼットレックス7000は71RSと比べほとんど同等かそれ以上の横Gを発生させています。
それだけ粘ってグリップしているということです。
しかし、各コーナーの立ち上がりやボトムスピードでは71RSの方が上回っています。
ここに特徴があります。
ゼットレックスは粘るがゆえ、また、たわませてしっかり面圧をかけることでグリップを稼ぐことから、どうしても減速しすぎる傾向になってしまいます。
ですから普通に乗ってしまうと、グリップ感の割にタイムが出ないということになります。
その点71RSは、トレッド剛性とコンパウンド特性とタイヤの剛性のバランスがより取れているのか、絶妙に車速を落とさずきれいに曲がることが出来ているので良いタイムが出ています。
こうしたゼットレックスの特性の欠点部分を補うには、ある程度車をスライドさせて車の向きを早く変え、アクセルを早く開けて駆動力で車を前に進ませる必要があります。
粘る特徴を生かしたドライビングが必要になるということです。
もちろん駆動方式によって違う部分もあると思いますが、基本ベタグリップで走らせると今一つ遅いということになると思います。
スライドさせるにはある程度のドライビングスキルが必要になりますが、コントロール性が抜群なのでスライドしてからの怖さが少なく、このことにより車の運転がうまくなったような感覚になり、運転が「楽しい」となるのだと思います。
次に空気圧について。
このタイヤは空気圧で特性が大きく変化します。
僕のシルビアは265/35-18をつかっていますが、1.9、2.0、2.1、2.3、2.5、と空気圧を試しています。
最終的に一番タイムが出たのが2.0キロです。
かなり柔らかく感じますが、このタイヤの良さは潰して粘る特性なので、その感じと剛性のバランスが取れているのが2.0キロなんだと思います。
もちろん車種によって変わってくるので色々試してみてください。
次に摩耗(ライフ)について。
ゴムが柔らかいので当然減るんですが、一般的なハイグリップタイヤ71RSとかRE12DAとかA052とかに比べるとむしろ長持ちだと思います。
写真は順に右前、右後ろ、左前、左後ろです。
走行量は、15分間を一括りとして、24ヒート相当を走った(プラス街乗り)後の残り溝です。
ちなみにベストタイムはこの写真の時、最も摩耗が進んでいる時に記録しています。
3~4部山の残りですが、まだまだ全然グリップします。
最後まで使えるタイヤだと思います。
つぎに、タイヤの発熱及びタレについて。
この記録は11月1日、タイヤの摩耗が最も進んでいる時に出したものです。
残り溝が少なくなるとタイヤの発熱は遅くなりますが、ゼットレックス7000はアウトラップから1周ウオーミングアップ走行(それでもわざと雑にほぼ全開走行します)、そのまま次の周回でアタックしています。
見ての通り、すぐさまベストに近いタイムが出ています。
この日の気温は17℃くらいでしたので、決して路面温度も高くはありません。
まるでSタイヤのようです。
それで、すぐタレるのかというと、これがほとんどフィーリングが変わりません。
極端なグリップダウンを感じないのです。
だからヒート後半でもベストタイムが出たりします。
スライドがうまく行った時が速いと言った感があるので、絶対的なグリップ力に頼っていないのがタレが少なく感じる要因かもしれません。
次に車のセッティングについて。
ゼットレックス7000を使いこなすにはどのような足のセットが良いのか?
絶対的な正解はありませんが、基本的にタイヤをたわませて潰して使うので、キャンバー角は大きめが良いです。
僕のシルビアは4度半以上ついていて、それでもショルダー部分が結構削れるので、キャンバーが少ないと空気圧を上げるなどの対応が必要になると思います。
バネレートは高めが良いように思います。
タイヤのたわみを考えると、車のロール量が大きいとさらにショルダー部分を使ってしまってタイヤの美味しいところを外してしまう可能性があります。
ただ、ボディー剛性やスタビレートやダンパーの特性や足のジオメトリなど影響は多岐にわたるので、車それぞれとご理解いただき、僕のは参考程度にしていただければと思います。
デフについては?
デフは何らかのLSDが欲しいと思います。
デフの構造、駆動方式によってセットは全く違うので、ここでは何も書きませんが、タイムを出すならばコーナー侵入時にあまり引っかからないタイプのものがいいと思います。
デフで曲げるのではなく、ブレーキングによる荷重移動と車速、横方向のヨーを立ち上げるステアリングワークでリヤをスライドさせていただきたいと思います。
そういった走り方が速いタイムを出す近道になります。
デフはあくまでスライドをコントロールするためにあると思っていただければと思います。
長々とゼットレックス7000について書きました。
難しいことも書きましたが、そんなことよりまずは一度試しに履いてみてください。
きっと「何このタイヤ、楽しい!!」って思っていただけるのではないかと思います。
最後にベストタイムの動画ではないですが、ゼットレックスの走り方が良く表れているものをリンクさせていただきます。
〇おまけ動画