朝、1本の電話が鳴った。
「もしもし、あたし」
寝ぼけた頭が、夢の続きを見せる。
だが、電話の主は男だった。
バ: 「もしもし」
ゆ: 「あー、ごめん。寝てた。今何時?」
バ: 「11時っす」
ゆ: 「起きなきゃ。どうしてるの?」
バ: 「ガス欠しちゃって。燃料計が動かなかったんですよ。JAF呼んだんですけど・・・ あ、来た。じゃ」
ツー、ツー、ツー
何だったんだ。。。
思えばこれが、今日という日を彩っていた。
電話の主は
バンナ.氏。ケータハムにロータリーエンジン(RE)を積み、臨番で走っているという変わり者だ。
彼はREに精通し、ガス欠なんかで高速で止まるなど考えられない。元々信頼性の無い車に乗っているのだから、距離計も見ていたはずだ。
その彼がガス欠で止まった。
何かある。
そう思った俺は、昨夜の深酒で半日潰してしまった事を反省しつつも洗濯機を回し、残りの「今日という1日」を過ごしていた。
そうだ、今日はセントラルサーキットに行く日だった。
壁に掛った時計に目を遣り、両腕が万歳しそうな時間に自分を罵りながらも動き出した。
車に乗り、ナビをセットすると、所要時間は1時間。
1回目の走行枠、途中には間に合いそうだ。
高速までの渋滞を避けて裏道を走り、50km程の旅に出る。
高速では、後ろにレーシングカートを載せた軽バンが苦しそうな唸りを上げる。それでも制限速度がせいぜいだ。そうやってセントラルに付いて入場料を払った直後、また彼から電話が入った。
バ: 「もしもし、燃費が悪いと思ったら、インジェクターの取付けボルトが緩んでて、燃料が噴き出してるんです。今、桂川PAなんですけど、近くに誰か仲間いませんか?」
ゆ: 「XXさんを知ってる? ○○さんはどう? △△さんは会った事ある?」
今日、スーパーセブン(セブン)の仲間たちは、ほとんどが長野で開催される全国OFFに行っている。
その中で、美人の奥さんに子供達と一緒に留守番する事を言いつけられた
福玉379氏だけが、共通且つ全国OFFに出かけていない知り合いだった。
ゆ: 「もしもし、福玉さん、ケータにRE積んでるヤツが、桂川PAで止まってるんですけど、六角レンチ持って行ってもらえます?」
ふ: 「OK。子供たち連れて、工具持って走ります」
快諾した福玉379氏は、すぐに工具を持って走ってくれたようだ。
「どう? 直った?」
バンナ.氏のSOSから1時間後、心配になった俺は電話を入れた。
「まだ格闘中です。そっち、雨どうですか? こっち(桂川PA)は降ったり止んだりでグショグショです。もう踏んだり蹴ったりですよ」
とりあえずは前に向かって進んでいるようだ。
走行会は少し間が空いた2本目が終わり、俺もセントラルを後にした。
高速を走り、そろそろ家に向かうか、ひょっとしてまだまごついているバンナ.氏が居た桂川PAに向かうか決めなければならない頃、彼に電話を入れた。
「ただ今、電話に出られません・・・」
走っているセブンは、風切音、排気音、エンジン音が入り混じり、かなりうるさい。ましてや彼の載せているREは、吸った混合気を過給器無しで吐き出すため、かなりの音量を放つ。携帯電話の音など、たちまちかき消されてしまう。
そのメッセージを残す事を促す留守電を聞き、「元気に走っているんだ」と胸をなでおろした。
が、
その彼から17時頃着信。
「第二神明に入っちゃったんですけど」
用事の最中であったが、俺は車に戻ってナビをONにし地図を見た。
彼の現在地を見つけ、Uターンとそのまま四日市経由で行く道とを見比べ、そのまま走るよう伝えた。
集合時間にはとうに間に合わず、降雨の中の走行は忍耐を要する。
それでも、今日助けてくれた仲間に報いるためにも、無事に辿り着き、無事に帰ってきて欲しい。
電話1本で動いてくれた仲間に感謝し、今日の酒を楽しもう。
みん友に、乾杯。
そうだ、洗濯機の中のカラカラの洗濯物。すすぎからやり直さなければ。。。
Posted at 2011/10/15 22:38:22 | |
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