
久々に綴ることになったこのシリーズ...
私の独断と偏見に満ちた記事を参考になさっていらっしゃる方もおられると思うと恐縮してしまうところではございますが、思えば昨年7月のビル脚の記事で止まっておりましたので、今年1月に導入したアルミアームに際しては綴るほどの劇的な変化を感じなかったのでしょう...
いや、ボディー剛性と直結させづらかったのであります。
最近登場する最新スバル車を試乗するにつけ、その際立っているのがどの車も高剛性ボディーを採用していること。
航空機づくりの経験から裏打ちされているスバル車のモノコックボディーの剛性はもともと国産車の中では高い部類にあると思うが、どうにも四輪ストラット方式からの脱却を試みた辺りから綻びが見えてきたように感じる。つまりそれはガチガチに固めた足回りが路面の衝撃を上手く吸収しきれずに、受け止めるボディーに歪みが生じてしまうことに他ならない。
レガシィの足回りの変遷を見るとわかりやすいが、BC/BF・BD/BGでは前後ストラット方式、BE/BH・BL/BPでは前ストラット・後マルチリンク方式、BM/BR・BN/BSでは前ストラット・後ダブルウィッシュボーン方式といった流れになっていることから二世代毎に刷新されていることがわかる。
いずれもフロントにはストラット方式を採用するが、これは他のエンジン方式と比べて横幅の広い水平対向エンジンを搭載するスバルの宿命である。仮にフロントにダブルウィッシュボーン式を採用しようにも更なる拡幅を余儀なくされるため踏み切れない事情がそこにある。ひょっとすると以前ホンダが採用したような鶴が首を伸ばしたような変形ダブルウィッシュボーン方式ならば搭載が可能なのかもしれないが...
BE/BHから採用された特異な形状をしたスバル式マルチリンク方式はジオメトリー変化が大きく、ら思い切った軽量化に踏み切ったBL/BPにおいてはそのネガティブさが顕著に現れた。
スバル開発陣もそれを理解していたと見えて、その反省から生まれたダブルウィッシュボーン方式のリアサスは絶大なるドライバビリティーの向上を齎した。いかなる路面状況においてもリアが破綻する兆候すら見えない。謂わば完成形ともいえる現在の前ストラット・後ダブルウィッシュボーン方式は今後も継続採用される可能性が高いと思われる。
さて、ここでSTIの辰巳氏が標榜する”誰もが運転が上手になるクルマ”という巧みにボディー剛性をコントロールする”いなし”という新たな哲学が生かされてくる。
当初はSTIが手掛けるコンプリートカーにのみ宿ったその哲学は、やがてスバルの市販車の開発に大きな転換期を齎すことになり、おそらくそれがふんだんに盛り込まれた一号車がレヴォーグであることに疑いはない。
1.6Lのアイサイト非搭載の最廉価グレードでさえ、右へ左へと自在にレーンチェンジすることが可能であり、BL/BP初期型に見られたような角のある水平方向への移動ではなく、ロールもせず軽快で滑らかに動く様は、「硬い足回りも強固な車体で受け止めてやることでここまで自然に動くものか」と驚いたものだ。それは遥かに重量級で大柄な最新のBN/BSにおいても変わらない。
開発年次で十年もの違いがあるとクルマはここまで変わるのだと痛感すると共に、そろそろ次期愛車の購入費用を真剣に貯め始めなければならないなと思った次第である。
しかし、長く寄り添ってきた相棒というのは可愛いもので、コイツの長所も短所もおおよそ知り尽くしている者としては、「ここまできたんだからコイツが息絶えるまでとことん付き合ってやるか」的な想いも抱いたりする。まだやり残していることがあるから尚更そう思うのかもしれないが...
9月にブレーキ関係の更新を行った際に、ばくばく工房さんのタイバーキットなるものを装着したところ、これが実に嬉しい誤算を齎したものだからそこからまた妄想が膨らみ始めたのだ。
本来はブレンボキャリパーを装着した際のブレーキ鳴き対策としてのパーツらしいのだが、フロントナックルとキャリパーの締結剛性が高まり(これは無いと言い切る方もいらっしゃいますが)、結果としてフロントサスがより滑らかに動くようになった。
加えてずっと気になっていたうねりのある路面でのコーナリング中に、リアサスが路面からの入力が許容を超え逃げ場を失った際に捩れとして現れていたものが、今回フロント剛性が改善されたことに因り気にならない程度まで抑えられた。結果としてワインディングではこれまで以上にリアサスがよく粘る印象となった。
反面ネガティブな面としてドライブシャフトの駆動音(ブォーンという低周波音)が篭るようになるので、”静粛性こそ命”という方にはオススメはしない。これはデフマウントをGT用のアルミ製のパーツに換えた時も同様であったことを追記しておく。
つまり、フロント側の剛性を上げることでリアサスのネガをどこまで消すことが出来るのか、というテーマに向き合ってみたくなった。そこで注目したのはトヨタが86の改良時に声高に叫んだ”剛性アップボルト(改良型フランジボルト)”を装着してみたらどう変化するのか?ということ。
実はスバルではトヨタのように推奨していない。というか、スバルではさりげなく昨年暮れあたりから生産するモデル途中でなんのアナウンスもなく変更済みなのだ。
本来はフロントクロスメンバー用4本と、リアサス用2本を交換して本領を発揮するパーツであるが、サスペンションの構造上BL/BP系ではリアのボルト径が異なるため、交換の対象はフロントメンバーボルトのみとなる。
BL/BPユーザーではまだ導入実績が乏しいようだが、みん友のウッkeyさんが調べてくれた結果では”適合している”とのことなのでディーラーに赴いてみたところ、「調べる限りでは適合ではないものの、確かにGV/GR系やYA系では年改で部品番号が変更されており、その変更前の部番はBL/BP系と同品番ですね」という回答。さらに詳細を調べていただいたところ、ボルト径は同じで長さが若干短いというものだったので一年点検に合わせて作業を依頼することにした。
もう一つは、やはりここまで弄ると自然にハイペースで走行したくなるのも事実で、思わず顔がにやけてしまうぐらいご機嫌にワインディングを流していると新たなネガが顔を覗かせた。それは”ステアリングマウントが動く”というこれまで感じたことのないものだった。
諸氏のレビューを参考にすると、AVOのステアリングマウントブッシュ・CUSCOのステアリングラック補強ステーの装着率が意外に高いことがわかったのだが、ウレタンブッシュの装着にあたっては過去の経験からかディーラー側で渋ってきたのと、ウレタンの耐久性が未知数なこと、またいずれステアリングギヤボックスそのものを換装する構想もあるのでこちらは見送り...
今回は一年点検と合わせて、先に述べたフランジボルトと同時にステアリングラック補強ステーを装着することにした。
その効果は絶大であった!
費用対効果を考慮した場合、おそらく最も安価に”最新スバル車風味”を味わえるパーツかもしれない。
走り出した瞬間のクルマの動きが軽く、まるでパワートレインをそっくり乗せ換えたかのような錯覚すら感じたほどで、やや重めでどっしりした動きを見せていたステアフィールも適度な硬さを感じたビル脚までもが軽やかに動くのだから驚きを隠せない。
ただ単に軽くなっただけかと言えばそうではなく、切り始めからスッとノーズの向きを変えるステアフィールは今まで以上に路面状況を伝えるのに爽やかな操舵感というか保舵感を齎し、柔らかすぎるぐらいに感じるサスペンションもスポンジーというものではなく、しっかり仕事をしているという感触である。そう、それは最近試乗したレヴォーグやアウトバックで感じた感触に極めて近いものなのだ。
つまり、ボディー剛性を上げてやれば硬いものでも滑らかに動くということを意味する。
今ならば少々減衰の高めのダンパーを与えようが、18インチのシューズを履かせても大丈夫な気さえするのだが、来春に予定している最後の弄りの結果次第で決めたいと思う。
コツコツ積み上げていくことで愛着が湧き、”オンリーワン”の相棒の成長を見守ることもまた楽しい。
これでまた次期愛車購入時期は遠のいたのかもしれないが...(笑)
※次号、来春掲載予定。いよいよ『最終章』へ!!