Sky-Watcherから6/20日に新発売された反射望遠鏡のHAC125DXです。
F2.0という天体望遠鏡とは思えない驚愕の明るさ!天体望遠鏡としては突がったスペックの製品です。焦点距離は250mm。
この焦点距離でこの明るさの一眼カメラ用レンズなら100万円はするようなスペックですが、これをSky-Watcherは驚きの低価格で出してきました。
一応HAC125の改良版という位置付けですが、形も大きさもフォーカスの仕組みも違っていて、ほぼ別商品と言っていいような変更が施されています。
矢印は光軸調整用のねじ穴。ベンチレーターのようなものも上下に2カ所見えます。中央に鎮座するフォーカス調整つまみは巨大で、そのため5本指が使えて、バックラッシュも少なく、調整がし易いものです。
発売前から気になってましたが、色々制約があって迷ってましたがポチってしまいました。
最大の懸念は、前面のカメラ接続部に付けるカメラのサイズの問題です。
推奨カメラのサイズが外径53mm以下なのに、最適なカメラの撮像素子のサイズがSonyのIMX533のような1インチというフレコミ。
(HAC125DXのイメージサークル16mm,1インチ撮像素子の横幅は13.2mm)
でも・・・53mm径以下の1インチカメラなんか世の中にあるのかな?と思っていたらQHYCCD社から使えそうなモデルが出ていることがわかりました。
自分の持っている使えそうなカメラでは、
ASI533MC PRO 外径78mm 3008×3008画素 (1インチ)
ASI715MC 外径62mm 3864×2192画素 (1/2.8インチ)
ASI120MM Mini 外径36mm (1/3インチ)
ASI120MM Miniはモノクロのオートガイド用なので、この最近のモデルでは ASI533MC と ASI715MCの2台
いずれも53mmは超えていて、1インチの ASI533MC PRO は78mmとかなりデカくて、望遠鏡前面のかなりの面積をカメラが遮ります。
ただ、この手の反射望遠鏡は、外周のほんの数センチで光量の80%近くを得ているらしく、中央が遮られていても、見た目ほどの減衰はないようで、導入してみることにしました。(減衰以外の問題のあるようですが)
開封すると、オスとメス2つの 42mm 0.75pのアダプターが付いています。
(31.7mm アイピースサイズのアダプターは初めから付いてます)

オスとメスなので2つはつなげられます。
ASI533MC PRO を使用する場合は、メス側を使用します。

オプションのSony Eマウント用のアダプターを外してカメラ側の42mm0.75pのおねじに取り付けます
ASI715MC の場合は オス側を使用します。
2つのカメラは ZWO製なんですが、このアダプターをつけると、ちょうど最適な位置に撮像素子がくるようになっています。(Sky-Watcherなのに?)
さて、実際にASI533MC PROを組んでみると、
先ず、USB3.0 TypeBのケーブルが太い。且つDC12Vを供給するケーブルも必要。
ケーブルは、撮像している上を横切るので、できるだけ細い方がいいです。
USB3.0 TypeBのフラットケーブルと細いDCケーブルが丁度あったので、DCケーブルの上にフラットケーブルが乗るように、黒色の配線用テープでまとめて望遠鏡からは細く見えるように加工しました。
ケーブルはフードに配線用の穴が開いて空いていますが位置的に全く合わないです。というより、カメラがフードより外に数ミリ程はみ出しているので、フードの配線用の穴を利用する必要はありません。
むしろフードの外にはみ出して「フラフラしてくれてたほうがケーブルが写りづらくなっていいんじゃね」とか思いました^^;・・どうなんだろう・・。
それと、ダーク画像を撮影しようとする、カメラの配線があるので、たとえフードの配線用の穴からケーブルを出して蓋をしたとしても、この穴から明かりが入ってくるように思いました。なのでダーク画像は望遠鏡から外した状態で撮影しました。
構図をかえるためにカメラを回転させる際には、フードは外す必要があったり、フードの配線用の穴からケーブルを出している場合、カメラにケーブルを接続したままでフード自体を回転させたり、フードにケーブルが通った状態でカメラを再度固定したりするのが結構大変です。
あと気がついたのが、フードの蓋をはめたときに何故だか傾いていて、どうしたんだろうと思ってよく見たら、フードの内部の縁のテープが1部重なって盛り上がっていて、そこがめくれて斜めになってました
なので、蓋を閉めるときは、この重なってる部分から閉めた方がいいように思いました。作りがチープという意味ではないです。全体的に作りはかなりしっかりしています。
さて、肝心の映りです。
梅雨真っ只中で薄曇りの日ばかりです。
晴れてる日は当分訪れそうにないので、とりあえずお試しで曇っていても撮影しました。一瞬晴れ間もでますが、その時でも、空は常に霞んでいるような条件です。
アンドロメダ銀河 M31

HAC125DX ASI533MC PRO 天気:曇り 露出:数分 彩度:0
画角の参考程度に見てください。

焦点をぼかしたとき
とにかくすぐに銀河が雲に覆われてしまってこんな感じ
なかなか撮影できませんでしたが、何とか数分間だけですが撮影できました。
ほぼ撮って出しです。精鋭化の処理はしていません。色はおかしいので彩度を0にしていてます。
恒星が雲で少し太ってるように見えます。ガイドの精度が悪く、時々ガイド星をロストする時もありました。
それでも暗い恒星をよく捉えてるように見えます。
しかしASI533MC PROは遮るエリアが多すぎますし、基本的にはこの望遠鏡に合わないように思います。
どうしても1インチの視野が欲しい時などの「一時的な使用なら」という感じです。
そこで1/3インチのASI715MCでも試してみました(正確には1/2.8インチ)。ケーブルは横から接続するタイプです。
フードに配線用の穴は高さがピッタリでした。
ただ、USB3.0 Type-B ケーブルのコネクターが大きいので、ケーブルを後ろに接続するタイプよりも、むしろ画面を遮る面積が多いと思います。
こちらは1/2.8インチなので、アンドロメダ銀河が画面内に収まりません。
(手元にあった昔の0.5倍のレデューサーを使ってみました。ん?もしかしたら F1.*?。31.7mmのスリーブ接続で試しましたが、どうもピントがこなかったです。要検討)
直近で撮ったM 63 をこのシステムで撮ろうとすると

ミューロン210 M63
このM63の場合
NGC1097 は日本では高く上がらず、水平線に近い空を撮影することになり撮影時間が限られます。このシステムで撮影するのに向いているかもしれません

セレストロン C8 NGC1097
このNGC1097の場合
M51 子持ち銀河の場合
M33の場合

はみ出しそうなほどの大きさで撮れそうです
M101 は実写できました
一瞬のチャンスで撮影できたM101

HAC125DX 天気:曇り 露出:数分
薄曇りでガイドも暴れる中のたった数分なのに、思った以上の高解像度でシャープな撮影ができていました。もっと総露出時間を上げれば、かなりな写りを期待できそうな予感がします。
しし座の三つ子銀河
① 夜露防止のヒーターがいらない?
梅雨の真っ只中、湿度90%、風速0m、夜露が降りる予報、車のボディーもウィンドガラスもその辺に置いたものも全てびしょびしょ。
シュミカセなら夜露防止のヒーターが絶対必要な状況です。DXの前面ガラスにも当然夜露は降りるはずです。初めはC8で使っている夜露防止のヒーターをつけていました。
でも、様子を見ているとDXは口径が小さい遮光フードの中にカメラが入るためか、遮光フードの中がカメラの熱で温まっていることに気づきました。そこで夜露防止のヒーターを外してみました。
数時間ヒーター無しの運用してみたところ、やはり前面ガラスに夜露は降りませんでした。
カメラにもよると思いますが、今回の2台のカメラでは夜露防止のヒーターはいらないかもしれません。
これは地味に大きなメリットです。
②ASI715MCとはベストマッチ?
カメラボディーの大きさを別にすると、1/3インチのセンサーサイズ、画素ピッチ、望遠鏡の解像度との関係が、ベストマッチのように感じました。
小さくて高解像な撮像素子とスーパー明るい高解像度の天体望遠鏡とはベストマッチだと思いました。
(ASI715MCは大柄なので、外径53mmに収まる同じ撮像素子IMX715を持つQHYCCD社のQHY5III715Cがカメラ的にはベストマッチとは思いますが、いかんせん Mac or iPhoneで運用する自分の環境で利用するのが難しい)
③入門機に最適?
1インチのカメラならアンドロメダが撮影できて、小サイズ高解像度の撮像素子を使えば、多くの銀河が撮影できます。小サイズの素子でモザイク合成する手もあります。
特に私のような銀河好きな星撮り人の入門機には最適な一台かもしれません。
銀河を撮影しようとすると、一般的には超高倍率な天体望遠鏡と高額なカメラが必要です。
その常識を覆す望遠鏡になる予感がします。
③遠征マシンの有力候補か?
キャンプ場での天体撮影は、落ち着いて撮影できるので自分の好むところなんですけど、キャンプ道具と天体撮影の道具の両方を持っていくのが大変なんです。
この望遠鏡は片手で持てるような小ささですし、作りもしっかりしていて、長距離移動に向いています。
夜露防止用のヒーター付きフードとその駆動のための大型バッテリーが不要になると思いますから装備を少なくできます。
-総評-
これから発売されるカメラ次第では、大化けする可能性があると思いました。
この望遠鏡一台で、カメラを替えることで、アンドロメダから深銀河撮影、そしてF2.0という明るさを活かした電子観望にも対応できそうで、気軽に安価に拡張できる今までなかった特徴があって、入門機に最適かもしれません。
明るさを活かして、小型で高解像度なモノクロカメラを使った安価で容易なLRGB撮影の期待もできそうです。
-デメリット-
カメラサイズの制約。
小さなフードの中でカメラが熱を持つ問題。
カメラケーブルが視界を横切る。
構図をかえるためにカメラを回転させるのが面倒
—とはいえー
現在所有している反射望遠鏡はC6,C8,ミューロン210,C9.25,C11です。
今までの経験から言うと、こと反射望遠鏡に関しては「口径は正義」です。
例えば、フラットナーを使わないのであれば、同じ20cm級のセレストロンのC8とタカハシのミューロン210 は焦点距離や構造こそ違いますが、ほとんど同じ写りをします。(フラットナーを使うと中央の写りが悪くなります。メーカーは「変わらず」と言っていますが、正確には「ほとんど変わらず」で、限界の性能を出そうとすると中央の写りが明らかに悪くなります)
口径は明らかに正義で、最終的な写りに関しては口径が物を言います。
ただ、今回のHAC125DXは、(カメラの進化によるところが大きいとは思いますが)色々な楽しみ方ができる点と運用の軽快さで次世代の望遠鏡として期待ができそうです。