
大韓航空007便のボイスレコーダー翻訳に挑戦した時は柳田邦男氏の著書や747元機長の著書を参考にしたとは言え、基本的には英語の記録を日本語に置き換える作業だったので、極端な困難は(それでも高校時代に学校始まって以来のアホと担任に言われた自分の英語力にとっては苦難の連続でしたが)感じませんでしたが。岩本徹三中尉の記録の検証は当時の日本海軍・アメリカ海軍関係のあらゆる記録にスピンオフして結構際限が無いです。第二次世界大戦に関するアメリカの書物を読むと、どうもヒーロー好きの国民気質からなのか、自国の航空機や艦船を賛美する傾向が強く、内容的に「これはどうかな?」と思うことが多いです。自国の航空機を讃えるあまり、戦果だけを記述して損害を記載していなっかったり、相手側の記録の検証を全く行っていなかったりと、時には呆れる程です。特に太平洋戦線に関する書物にその傾向が強いです。時々「おいおい!この時期の日本軍にそんな数の飛行機は無いぞ!これではこの時期に配備されていた日本軍機全部撃墜してもこの戦果にはならんぞ!」と突っ込みたくなります。オスプレイミリタリーシリーズ等はその典型です。もっとも、アメリカ人が日本語を読むのは、日本人が英語を読むよりも遥かに大変なのは想像できますが。それに、第二次大戦に対するアメリカ人のイメージは、露骨な悪者の日本軍やドイツ軍に対する自分たちの正義を信じる事の出来た時代であったのでしょうね。
岩本記録の参考にアメリカ側から見た特攻作戦の著書を買いました。マクスウェル・テイラー・ケネディ著DANGER’S HOUR 邦題「特攻 空母バンガーヒルと二人のカミカゼ」です。著者はあのロバート・F・ケネディ司法長官の息子です(つまりジョン・F・ケネディの甥)。ケネディ家は長男が海軍パイロットとしてヨーロッパ戦線で戦死。次男のジョン・F・ケネディが太平洋戦線で乗船していた魚雷艇を日本海軍に撃沈され九死に一生を得ていたのは有名な話ですが、ケネディ司法長官の息子が海事研究家となっていたとは知りませんでした。1945年5月11日2機の特攻機によって大破したアメリカ海軍空母バンカーヒルにまつわる物語をアメリカ側と日本側双方に取材した本です。
欧米人から見れば神風特攻は「理解不能な狂信者の集団」との見方が大半なのでしょうが、一部には自らの命を投げ打ってでも祖国を守ろうとした行為に敬意を持つ人も存在するのも事実です。マクスウェルは特攻隊の事を「彼らの最後の望みは、未来の日本人が特攻隊の精神を受け継いで、強い心を持ち、苦難に耐えてくれることだった。私たちは、神風特攻隊という存在をただ理解できないと拒絶するのではなく、人々の心を強く引きつけ、尊ばれるような側面もあったということを、今こそ理解すべきではないだろうか」と記しています。
印象的だったのはバンカーヒルの乗員に自分の命を犠牲にして艦や仲間を救おうとした乗員がいた一方、死亡したバンカーヒルの乗員の遺体から財布や時計、貴重品を盗む者が続出し、水葬されるまでの間、格納甲板に並べられた戦死者に45口径ピストルを持った警護が付いたそうです。現代の沖縄のアメリカ軍もそうでしょうが、レベルの上の連中は質が高いのでしょうが、レベルの低い連中はとことん質が低いようです。
ちなみに、岩本記録によれば、昭和20年5月11日は全制空隊が出撃したとありますので、岩本中尉も出撃したと思いますが、撃墜記録はありませんでした。
補足 この本の副題は「THE STORY OF USS BUNKERHILL AND KAMIKAZE PILOT WHO CRIPPLED HER」アメリカ軍艦バンカーヒルと彼女を戦闘不能にした神風パイロットの物語です。一瞬なんでHERという代名詞のなのだろう?と思いましたが、欧米では艦船は女性に例えられるのでしたね。
Posted at 2012/12/10 23:33:36 | |
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