
先週、営業車の更新入れ替えの打ち合わせを、トヨタレンタリースの営業担当と行いました。現行の車両はヴィッツだったので、そのままヴィッツを注文しましたが、担当者が参考にとプリウスのカタログもくれました。
カタログを見ながら、ふと初代プリウスの事を思い出していました。
1998年、自分は中部支社の総務担当でした。当時は今ほどエコ流行りではありませんでしたが、何せトヨタ自動車のお膝元。トヨタ自動車へ当社の環境問題への姿勢をアピールしたいと事で、豊田営業所の当時の所長だったIさんが、どうしても営業車に発売されたばかりのプリウスを入れたいと強硬に主張しました。結果、最終的に決済が通って、導入する事になりました。
当社にとってはプリウス導入は全国初で、グループ会社全体でみても中部地区初でした。
納入後、本社広報室から社内誌にプリウスの紹介記事を執筆するよう依頼が来たので、原稿を送ったのですが、広報室長から自分宛て直接電話がかかってきました。
「送って来た記事の中に『カタログデータでは燃費は28㎞/㍑となっていましたが実燃費は15㎞/㍑前後でした』となっている箇所があるが、これはまずいぞ。当社社員4,000名の中には親兄弟がトヨタ自動車関係に勤めている者が必ず複数存在する。もし家族のトヨタ自動車社員がこの記事を見て、この会社は社内誌に「トヨタの自動車はカタログデータより大幅に落ちる燃費しか計測しないとはっきり記載している」と知ったら、クレームになるかもしれない。そこで、燃費の部分を15㎞/㍑を25㎞/㍑かせめて20㎞/㍑にしてもらえないか?」
それに対して自分は「燃費の部分は実測は13㎞/㍑であったのを15㎞/㍑前後でしたと、元々多少の下駄は履かせてあったのです。しかし、ここで実体とかけ離れた20㎞/㍑や25㎞/㍑の嘘の燃費データを載せてしまったら、このプリウスの紹介記事を見た他の支社店の総務担当は、自分の所でもプリウスの導入を検討すると思います。各支社店の総務担当は、当然実燃費でどれくらい走るのかが一番知りたいと思うでしょう。その時に20㎞/㍑や25㎞/㍑の嘘の燃費データを信じて各支社店で実際に納車した際、走行してみて、実体は13㎞/㍑しか走らないことが分かったら『なんだ!中部支社の総務担当は嘘の燃費データをのせていたのか!』という話になると思います。そうなったら、中部支社の総務担当として他支社店の総務担当へ申し開きが出来ないので、燃費については絶対嘘はつきたくないです。」
(しかし、入社3年のペーペーが本社広報室長に咬みつくのも前代未聞でしたな。大きな会社はどこもそうだと思いますが、本社広報室は社長直属で結構大きな影響力を持っています)と自分と広報室長の話合いは平行線をたどったので自分が「分かりました、燃費の数字は変えられませんが、燃費が悪化した特別な理由を記載します。」と広報室長には回答しました。
しかし、「困ったなあ、燃費悪化の理由か、何があるだろう?そうだ、この営業車を運転する豊田営業所の営業担当Mさんはデブだったな。Mさんの体重のせいにすれば良いや!」
そこで最終的な原稿は「カタログデータでは燃費は28㎞/㍑となっていましたが実燃費は15㎞/㍑前後でした。燃費悪化には様々な理由が考えられますが、原因の一つは普段この車を運転している営業担当の体重の増加(100㎏超)が考えらます。」になり、広報室長のOKも出て、全国の社員に社内誌が送付されました。
しばらくすると、Mさんから電話がかかってきました。Mさん曰く「社内報が出てからあちこちで『体重100㎏超えてるんだって?』と言われるようになった。遠くの支社店の同期からも同じように電話で言われるが俺の体重は100㎏超えていないぞ!」コウカプ、「へ!そうなんですか?今何キロ何ですか?」「95㎏だ」「そんなん95㎏も100㎏も大して違わないでしょ?95㎏と書くよりも100㎏超と書いた方が記事として面白いやないですか!大丈夫!大丈夫!Mさんの体重は増える一方で減る見込みは無いのでしょう?どうせ短い期間で体重が増えて100㎏すぐ超えますから、何の問題もありありません!」(我ながら何とドイヒーな総務担当だろう)
納車直後の初代プリウスを実際に使用してみましたが、燃費以外にも色々問題が有り、正直世界初の量産型ハイブリッドカーと言う栄冠を確保するために他社に先駆けて出したため、未完成の部分もいくつか目につきました。一番の問題はブレーキに回生ブレーキというブレーキをかけた時に発生する抵抗を利用して発電するシステムを採用したため、通常の自動車の感覚でブレーキを踏むと、急ブレーキをかけたような止まり方をしました。そのため、プリウスに乗る時はブレーキをかける際は、軽めにブレーキペダルを踏むという独特の操作が必要でした。初代プリウスは決して完成された自動車ではありませんでした。現行のプリウスは技術が進んで、この辺の問題は解決されているのでしょうね。
自分の手元へ舞い込んだ現行プリウスのカタログは、13年前の昔話を、ふと思い出させてくれました。
Posted at 2011/07/20 23:16:40 | |
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