モーム/月と六ペンス

一応文学畑出身だったわけで、そこそこ才能ある、くらいに勘違いしていた時期もあったんですが、大学に入ってしまうと自分くらい書ける人間はそのへんの同好会程度にゴロゴロいますので、それで食っていこうという気持ちは失せてしまい、早々とゼネラリストというかオールラウンダー的なものに方針転換した経緯があります。

この小説の主人公は画家のゴーギャンがモデルだと言われてますが、妻子を捨てるは、友人の妻を奪ったあげく自殺させるは、働かないは、人に金を借りて返さないは、とんでもない奴です。彼自身は、関わった人たちまで苦しい思いをするばかりのろくでもない人生でした。しかし彼の作品は、彼の死後も１００年、２００年、…もっと長い時間を生き続け、人々の心を打つのです。

題名の「月と六ペンス」の「月」とは、人を狂気に導く芸術的創造熱、「六ペンス」とは、世俗的な因習や絆。
余談ですが、漫画やアニメで見かける月も象徴的な感じしますよね。主人公に壊されてしまったり、ヒロインがやたらと巨大な月を背にしていたり…。
逆に僕が自分の業績給を何百円単位まで電卓叩いて計算してるところなんかは、もろ「六ペンス」のほうですよね。