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2016年08月16日

罪と罰/ドストエフスキー

罪と罰/ドストエフスキー 海外の小説読むときってね、けっこうあちらの文化・慣習、ものの考えかたの違いを考慮して読まないといけないわけで、それはアメリカにしろドイツ、フランスにしろ中国にしろいっしょなんだけど、ロシアの小説って意外と、ロシア人っていちばん何考えてるかわかんなくておっかねーよ、ってイメージがあるけどホントに意外と、日本人の感覚・価値観に近いんですよ。サムイル・マルシャークを読んだときにも思ったんですが。そんなだからロシア文学というのは昔から日本に受け入れられやすかったのかもしれませんね。

18世紀当時のロシア・ペテルブルグを舞台にした温かい、いや熱いといってもいいかもしれない人間模様、あの雪国に住む人たちの心の奥底は実は熱気に満ちていて、それが読む人の心を打つのかもしれませんね。
いろいろな読みかたができる小説だと言われてますが、僕は主人公の周りの女たちの生きざまに惹かれるものがありました。

貧乏学生で学費を払えず下宿で陰気な引きこもりになってる大学生の主人公(当時からこういう人いたのね、と思いマス)が学費を得るために質屋の老婆を殺します。主人公はけっこう頭のいいヤツですから、「極悪な老婆を殺したところで、それは悪いことかもしれないが、そのお金で大学を卒業しその後社会に有意義な人物となれるのなら、その悪事などささいなものではないか」と理論武装します。

ところが…、そんな大きな青年の事業どころか主人公は肉親とか親友とか自分を想ってくれるごくごく小さな身の回りのことで心をさいなまれてしまうんですよ。
折しも今になって、郷里の貧しい母と妹が「妹が立派なお金持ちと結婚することになったから、もう学費の心配はいらないよ」と上京してくる。
母は「おまえはきっと立派な人物になるよ」と言う。
で、よくよく妹の縁談を聞いたら「そいつはダメだ!」と。確かに金持ちかもしれないが、確実に妹を不幸にする。妹だってそんなことわからないわけじゃない。兄のために犠牲になろうとしてるんだ。
で、縁談を破談にするいっぽう、主人公が殺人を疑われ始めて、それにうすうす気づいてるんですがそれでも「どこまで行っても君は友達さ」という親友、明朗快活でどこから見てもいいヤツなんですが、そいつに「妹と母のことを頼んだぞ」と託してひと安心。

さて…?自分はいったいどうしようというのか。老婆を殺すことには躊躇しなかったが、大事業どころかちっぽけな身の回りのことにすっかり翻弄されて、自分を愛する肉親を見捨てることなんてとてもできないじゃないか。
そうこうするうちに警察から老婆殺しの疑惑の目が強まってくる。

そんななか、ひとりの少女と邂逅する。
少女の父親は官吏だったが呑んだくれで身を滅ぼし、最後は馬車に轢かれて死んでしまう。
母親は肺病持ちでもう先が長くない。幼い弟、妹を養うために少女は娼婦をやっている。
少女の部屋に聖書があるのを見て主人公は「何?何?それでも神はいるってーの?」と、からかい半分に聞く。
そのときの少女の主人公を見すえる表情。
今まで個人的にキリスト教って、信ずるがゆえに盲目っつーか、あんまりよいイメージなかったんですが、「かならず神様が私たちを救けてくれるから」と信じきった目には美しさというか神々しさすらあって。
さて、絶望的なふたりの状況に果たして神は奇跡を起こすのか。

余談ですが、ウチの親族の檀家が浄土宗か浄土真宗でして、浄土宗ってのはようするに「南無阿弥陀仏」って唱えてさえいればだれでも極楽浄土に行けるっていう教えでして、「そんな虫のいい話があるか」「ポピュリズムってやつだよねー」と斜にかまえてたんですが、今になってわかったことがひとつ。
なんだかんだ現代の日本人ってのは悲惨なつもりでも恵まれてるわけで実感ないんですが、浄土宗が起きた当時の日本の民衆は現代に生きる自分が想像もつかないほど悲惨だった。
貧困・飢餓・病気・戦争…、いままさに苦しみぬいている人たちを目の当たりにして、仏の教えはこれこれこうじゃ、ととても言える状況ではなくて、その場にいたならただ「南無阿弥陀仏と唱えれば極楽へ行けるよ」と言うしかなかったんではないだろうか。おそらく法然は実際にそれで苦しむ人々の表情が和らぐのを見たんではないか、ということ。
当時、神の奇跡とか、仏の導きとか、そういうのにすがるしか人々は術がなくて、それは切実で純粋なものであったろうということ。
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Posted at 2016/08/16 12:40:20

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