偸盗/芥川龍之介

芥川龍之介の小説のなかではいちばんおもしろい。
…が、おもしろ過ぎるというか作り過ぎてるのが書いた本人、気に食わず、芥川の生前は、発表したはいいものの出版されなかった。

平安時代の荒廃した京都を舞台にした盗賊団の群像劇。
盗賊の実質的なリーダー、沙金は美貌の若い女だが、だれかれかまわず肌を許し、罪ない人を平気で殺す。
そういう沙金を嫌悪するが魅惑に抗しきれず、つい、いっしょに悪事を重ねてしまう兄弟がいる。
沙金は兄弟を自分をめぐって反目し争うように仕向けている。
盗賊団の主だったメンバーにはほかに沙金の養父・母である性悪な爺さん・婆さん、白痴でものごとの道理がわからないため使われている娘がいる。
白痴の娘は身ごもっているが、父親がだれかわからない。
盗賊団はある日、有力な貴族の家を襲撃するが、沙金は兄弟の一人を亡き者にするために襲撃計画を事前に貴族の家の者に漏らしていた。
盗賊団は予期せぬ手痛い反撃に遭い、混乱に陥る…。