
日本民話から二編、グリム童話から二編、聊斎志異から一編を題材に取っている短編集。
諸星大二郎いわく日本のもの、中国のもの、西洋のものを合わせて「和華蘭(わからん)」という言葉があるそうだが、いつもの諸星大二郎らしくなにかしらの本質をついてる気はするんだが、結局のところ「よくわからん」不思議な気分になるものが集められている。
○瓜子姫とアマンジャク
中世の日本、神がかりをして村人にお告げをする娘がいたが、あるときから娘はお告げができなくなってしまう。
お告げができなくなった娘は村人に殺されてしまう習わしだったが、ふと村に紛れこんだアマンジャクの少年としばしば外の世界に飛び出て行ってしまうようになる。
外の世界で見たり聞いたりしたことをしばらくはお告げとして村人に伝えていた娘だったが、そのうちアマンジャクとともに完全に外の世界に飛び出していってしまう。
この先はもう生きていけるあても帰るあてもないが、娘は自暴自棄になったようにもなにかを決心したようにも見える。
○見るなの座敷
江戸時代くらいだが冴えない一人暮らしの百姓に不意に美しい女房ができて、しばし幸福な生活を送る。
女房は家の納戸を「私が使うから絶対に見ないでね」と言うんだが、ふとしたときに百姓は気になってその納戸を開けてしまう。
百姓は全然違う時代に飛ばされて、前と同じように不意に美しい女房ができて、「私が使うから絶対に見ないでね」という部屋があって、やはり気になってその部屋を開けてしまって、全然違う時代に飛ばされてしまって、…をループする。
○シンデレラの沓
お城に勤めるシンデレラは沓をなくしてしまい「沓を探してきなさい!」と上司と思しき王子様に怒られるが、沓を探してるうちお城のなかになんだか誰も知らないような変てこな場所を見つけてしまう。
そこでガラスの沓をみつけてしょうがないからガラスの沓をはいて戻るが、王子様に「目立ちすぎるからそれはやめて!」と怒られ、結局新しい靴を新調してもらう。
ところでそのときたまたま見つけた誰も知らないような秘密の場所が気に入って、シンデレラはその後もしばしばそこに遊びに行くようになるが、その秘密の場所を気に入って訪れる人が実は他にも何人かいる。
秘密をわかちあう、そのうちのひとりが王子様に似ているんだが…。
○悪魔の煤けた相棒
悪魔の相棒となってしまった男がたくさんの金を渡して宿屋に泊まる。
宿屋は親父と娘のふたりでやっていて、泊まった客を殺して持ち物を盗む生業をやっている。
親父に暴力でいやいや従わせられてもとから自分の人生に絶望していた娘は、男の持ち物を盗り損ねたのち、思いつめて川に身を投げる。
地獄に行ったと思いこんでいた娘が川べりで目を覚ますと、宿屋で泊めた男が立っている。
「私は地獄へ行ったのでは」と話す娘に男は「夢でも見てたんじゃないか」と言って立ち去る。
のちに地獄で悪魔は相棒の男に「父娘、ふたりの魂がもらえるはずだったがな」と言うが、男は「親父ひとり分で満足しろよ」と答える。
○竹青
中国・宋の時代だと思うが、ある家に強盗が入り、隠れていた幼い娘だけが生き残る。
娘は成長して強盗への復讐を決意するが、強盗についての手掛かりがまるでない。
関王廟、呉王廟に仕えるカラスの群れがふとしたことから当時の強盗の手掛かりをつかみ、それを知った娘は復讐を開始する。
Posted at 2023/02/25 06:14:28 | |
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