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◇画太郎◇のブログ一覧

2023年05月15日 イイね!

『シャイニング』

『シャイニング』スタンリー・キューブリック監督によるホラー映画。
キューブリックはユダヤ系アメリカ人だが、映画業界内のしがらみを嫌い、イギリスに定住してハリウッド資本の映画を撮るというスタイルで、しかも極度の飛行機恐怖症のため、アメリカ本土に出向くことはめったにない。
こうした理由からもっぱら娯楽偏重に流れていったハリウッド映画とは立ち位置を異にしている。

この映画は冬季に孤立したコロラド州・ロッキー山中のホテルを舞台にしているが、キューブリック本人がアメリカでのロケを行ったかはわからない。
作中の雪に覆われた光景は、多くは雪のかわりに塩を使用している。
また撮影に同行したキューブリックの娘がのちに「『フルメタル・ジャケット』は暑い地域のシチュエーションが実際は寒いのをごまかすのに苦労したが(『フルメタル・ジャケット』後半の舞台はベトナムだが実際はイギリスでロケを行っている)、『シャイニング』では撮影中、雪景色なのに暑さで汗だくになるのをごまかすのに苦労した」と述懐している。
「完璧主義者というより完全主義者」と評されるキューブリックのこの映画でのロケは丸一年に及んだ。

冬季だけ雪で閉鎖するホテルの管理人を任された父、母、幼い息子の三人家族のうち孤独な環境が生活へのプレッシャー、アルコール依存を進行させてしまった父親の精神をおかしくしていき、家族への殺意を芽生えさせる。
しかし父親の異常は本人のせいだけではなく、ホテルそのものに漂っている「悪意」「害意」から引き起こされている。
この漂っている「悪意」「害意」を『シャイニング』という見えないものが見える能力を持つ幼い息子は敏感に感じ取っている。
このホテルではかつて凄惨な殺人事件があった。
「たとえばトーストを焼いて食べれば、完全にその場からトーストが消えるわけではない。しばらくは焼いたトーストの匂いが存在して漂っている。このホテルの状況も同じだよ。君も私も『シャイニング』だからこのホテルの見えない異変を感じとってるんだ」
序盤に家族へホテル生活の引継ぎをして去った黒人料理長は幼い息子にそう説明している。

あとの展開はひたすら怖い。
ふつうホラー映画って怖いんだけどちょっと笑えるようなとこあるじゃない。
ゾンビ映画とか特に「なんでやねん」みたいな。
そういうの一切なく凄惨な映像が断片となって繰り返し現れる。
そのことによって凄惨な結末を観る者は予見させられるが最後は…。

ところでこの映画でいう『シャイニング』ってごくフツーの人にももともと少し備わってるんじゃないかという気がする。
たとえば営業職、接客業だったりする人は顧客との交渉において「理屈とカンが相反して迷った場合は自分のカンを優先する」ということが経験則としてないだろうか。
仕事だったりで神経が研ぎ澄まされているときの「カン」というのは侮れず、だいたい正解であることが多い。
理屈のほうはあとからついてきたりついてこなかったりするが、理屈がわかると後日になって「あ、なるほど」と腑に落ちることがある。

そういえば私もこのあいだ、横浜市内の一般道で深夜1時にトラックを走らせてたら信号待ちの停車中に「○○まで乗せてくれないか」というおっさんがいたが、なんとなく違和感があり即座に「無理だよ」と言って、信号が変わると同時にブッブーとトラックを発進させた。
都会の横浜市内だと深夜とはいえ知らない人に「○○まで乗せてくれ」と言われること自体はまれにある。
違和感はなんだったんだろうな、というのはしばらく走らせてから気づいたが、そのおっさん、助手席側から私に話しかける前にいったんフロントガラスのほうに回り私の顔をのぞきこんだ。
普通の人は停車中とはいえクルマの前、ましてやトラックの前には立たない。
運転席の私の様子を確認したか、あるいは「悪意」のある人間特有の世の中、他人をどこか舐めた態度からそういう行動をとったのではないかと推測するが、理屈よりは違和感でその男を避けた。
おっさんを乗せてた場合は結果、なにかあったのかなかったのか、それはわからないが、私のなかの『シャイニング』が発動したと思っている。
Posted at 2023/05/15 03:52:37 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画 | 音楽/映画/テレビ
2023年05月03日 イイね!

『用心棒』

『用心棒』1961年の黒澤映画で前年にマジメに作った社会派サスペンスがこけたので、この時代劇に関してはシンプルにおもしろさを追求している。
ただし映像としておもしろさ、カッコよさを非常に偏執的に追求していった結果、現在でもこの『用心棒』から定着した時代劇の表現が多い。
時代劇に限らず海外のSF映画、あるいは漫画など映画とは別の娯楽作品にも『用心棒』での撮りかた、見せかたを踏襲したものが一般化されて現在でも散見されるほど創作活動の現場に与えた影響は大きい。

上述の通りシンプルにおもしろさ、カッコよさを追求しているので、時代考証とか実際問題こうじゃなきゃおかしいとかそういうものはある程度無視している。
からっ風がひっきりなしに吹いている情景から舞台は上州、群馬県ではないかとか、ライバルのニヒルでキザな卯之助の使うピストルがスミス&ウェッソンで、それが流通していることを考えると時代は幕末じゃないかとか、想像・空想する自由は観る者にゆだねられている。

賭場に無法者がのさばり、弱く善良な者が虐げられている姿を見て、理屈ではなく「なんか気に入らねえ」だけで大立ち回りを演じる流れ者の主人公同様、堅っ苦しさはいいからカッコよさを堪能しろ、というそれはそれで哲学、姿勢のようなものが結果的に生まれている。
Posted at 2023/05/03 15:26:23 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画 | 音楽/映画/テレビ
2023年04月05日 イイね!

『独立愚連隊』

『独立愚連隊』1959年の岡本喜八監督による日本映画。
日中戦争時の北支戦線を舞台に「独立愚連隊」と呼ばれる日本軍のならず者部隊が上層部の目の届かないところでおかしな動きをしてるんじゃないか、というのをあばくために新聞記者の皮をかぶった密偵が単身「独立愚連隊」に潜入して活躍するアクション映画。

日本映画が絶頂の頃の作品だが、当時の面白い作品というのは作り手のもの凄く微妙で繊細なテンションで成り立っているので、今の時代にこれを仮にセリフも一切変えない完全コピーでリメイクしてもこう面白くはならないだろうと思う。
それ以前に現在ではこのシナリオというのがいろいろとつまらないしがらみで出せなくなっているんだが、それは話が逸れるので置いておいて。

主人公の密偵が日本軍の中で甘い汁をチューチュー吸ってる「独立愚連隊」のボス連中を叩く冒険活劇で、登場人物がほとんど兵隊なので当然男ばかりだが、そのなかで少ない3人の女性登場人物が作品をぐっと魅力的なものにしている。

ひとりは中国人のおもろいおばはんでお金が大好きで日本軍とつるんでたくさん稼いで東京でお店を出すのが目標なんだが、日本軍もおばはんもおたがいにとんちんかんなことをやってるのでなかなかうまくいかない。
「やってらんないよ」みたいなボヤキをよく言ってるんだが、兵隊だらけで殺伐とした雰囲気の中でうまくコミカルな味を出している。

もうひとりは序盤にスパイ容疑で日本軍に捕まっていたのを主人公が助ける、馬賊の頭領の妹ですごい美人なんだがそれしか日本語を知らないのか、その後、主人公が弱ってるときに限って現れて「ザマアミヤガレ!」と言って馬でパカパカッと駆け去っていってしまう。
この馬賊は日中どちらにも属さない独立勢力として終盤の問題解決に大きな役割を果たす。

さて最後に行きずりで出会った主人公に惚れて一途に追いかける可愛らしい女性がいる。
追っかけるなか主人公の目的を知ってしまい、手助けになりたいと「独立愚連隊」に独断で潜り込んでしまい主人公との再会を果たす。
主人公も女性として悪くなく思ってるんだが、今は任務に夢中になっているのでそれどころではなくいまいち邪険な扱いをしてしまう。
物語の最後で問題が解決したときには、もうこの女性と会えない境遇になっていた。
「もう会えない」となってから「あのときもっと大事にしてあげときゃよかった」と思うのは男ならあるあるだが、活劇のあとのこのシーンがボルテージが高まっていった活劇のラストに一抹の哀しみを与えている。
Posted at 2023/04/05 12:23:36 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画 | 音楽/映画/テレビ
2023年03月23日 イイね!

『ベン・ハー』

『ベン・ハー』1959年のアメリカ映画で当時としては破格の製作費をかけ、本編は3時間半に及ぶ。
アカデミー賞を11部門で受賞し、これは1997年に『タイタニック』、2003年に『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』が並んだが、現在でも最多の受賞。

イエス・キリストが生きた時代、過酷な運命に翻弄されるベン・ハーという男がキリストによる「神の奇跡」を目の当たりにし、復讐心、闘争心を忘れ、心の平安を取り戻すまでの物語。

かなりの長編だが、おおむね前半にガレー船による戦闘、後半に戦車競走という大きな見せ場があり、観る者を退屈させないまま一気にラストのキリストの受難と、起こされた奇跡というカタルシスへ突き進んでゆく。

『ベン・ハー』の映画化はこの1959年のもので3作目だが、過去の作品では見せ場のガレー船による戦闘、あとたぶん戦車競走でもエキストラに死者が出ているが、当時の事情だとそれほど大問題にもならなかったらしい。
今回のものも戦車競走の参加者が落車して4頭立ての戦車にムチャクチャに踏みつけられるシーンがあり、明らかに死んでるんじゃないかと思うんだが、これは落車して立ち上がるまででカットし、それと人形を戦車が踏みつけるシーンをつなぎ合わせており、そういう技法を駆使することで今回は全編にわたって死者は出ていない(迫真の映像のため死者が出たという噂は流れた)。

映画の序盤、ベン・ハーがガレー船送りで護送されているとき灼熱の太陽が照りつけるなか、渇きで死にそうになっている彼にひとりの若い男が護衛の制止を振り切って水を与えた。
「あのときあの男が水をくれなかったらあそこで死んでいたな」とのちにベン・ハーは回想するが、映画の終盤でキリストが十字架を背負ってゴルゴタの丘に向かうのを見物に来ていたベン・ハーは気づく。
「あのとき水をくれたのはあの男だ!」
彼は我を忘れて護衛の制止を振り切りキリストに水を与えようと駆け寄る。
そして最後の奇跡は起きた。
Posted at 2023/03/23 04:10:20 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画 | 音楽/映画/テレビ
2023年02月06日 イイね!

『乱』

『乱』黒澤明が75歳のときの作品で、黒澤明の時代劇としては最後のものとなる。
時代が戦国時代ということ以外は場所も登場人物も出来事も完全に架空であり、シェイクスピアの『リア王』を下敷きとしている。
単純に時代劇としての完成度でこれ以上のものは映画では存在しない。
これから先もおそらくこれと同じ水準のものはもう出てこないのではないだろうかと思っている。

シンプルに映画としての水準の高さ、おもしろい映画とはこういうものだ、という点を堪能すればそれでよいのだが、この作品は当時すでに75歳だった黒澤明の「遺言」だったといわれており、私は20代の頃にこの映画を3、4回観てるんだが、若い頃に観ておいてほんとうによかったと思っている。

物語は絶望的で救いがない。
登場人物の誰一人として救われない。
全ての登場人物が争いに巻き込まれ、争いを意図した者も意図しなかった者もわけへだてることなく、おそろしい疾走感で滅亡へ向かって突き進んでいく。
しかし映画を観終わったあとに残るものは不思議と絶望や闘争心ではなく、燃え上がるような生への執着と、自分を取り巻く世界への慈しみだ。

話は飛ぶが太平洋戦争が終結して、それからしばらくという頃の映像や文章に触れると、存外調子が明るいんだよ。
何もかもを失ったあとというのは、人間の持つ生命力とか本来備わってる本能がガーッと湧きあがってくるからこうなるのでは、と思ったりするのだが。
『はだしのゲン』って漫画、あれ登場人物みんな元気で社会に本気で失望してるやつなんてひとりも出てこないでしょ?
黒澤明もすでに若手の映画監督という状況で戦時中をくぐり抜けてるから、黒澤映画の持つ徹底した自己肯定と社会への肯定というのもバックボーンとしてはやはり戦争体験があると思うんだけど。

で、社会が発展して人々の生活が安定してくるにつれて次第に「現実感」というのが失われてくるんだ。
例えば小さい子供が今さらのように「蛇口をひねったら水が出る!」と驚いて母親に報告したなら、母親はおそらく「あたりまえでしょ」としか答えないだろう。
「蛇口をひねったら水が出る」というのはあたりまえのことではない。
人が膨大な知識と労力を注ぎ込んだ結果、蛇口をひねったら水が出るようになったのは人間の4万年だか5万年だかの歴史からしたらつい最近の話である。
蛇口をひねったら水が出て、○○時○○分の電車に乗ったら○○時○○分に△△駅に着いて、アクセル踏んだらクルマが走ってブレーキ踏んだらクルマが止まって、それらのことをあたりまえと思うどころか考えもしないようになっていく過程で、人は日々「現実感」の喪失体験を繰り返して生きるようになる。

『乱』という黒澤明の「遺言」はすべて虚構で構成された闘争劇のなかに「喪失してゆく現実感の回復」を観る人に促している。
同時に自分を愛さない、社会を愛さない、結果意図する意図せざるにかかわらず争いが巻き起こることの愚かさを強烈な現実感を観る者に惹起させながら伝えている。
Posted at 2023/02/06 04:52:23 | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画 | 音楽/映画/テレビ

プロフィール

「クリプトンが初音ミクというキャラクターを創っていなかったらYAMAHAのVOCALOIDはそれまで失敗続きだったので消滅していた可能性が高かったらしい。」
何シテル?   08/18 20:00
おもしろきこともなき世をおもしろく-高杉晋作
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