◇画太郎◇のブログ一覧

もう１０年ほど世間と一切隔絶し入院してしまった老人が、何を思ったか９０歳になって突如、外の人と交流したい、世の中が今どうなってるのか知りたい、って言い始めるんですよ。

病院は３人の大学生をアルバイトで雇って老人に世間話がてら、ちょっと今世の中どうなってんのか説明してやって、って頼むんですが、学生たちはそのおじいちゃんもう老い先短いんだから、世の中極めてうまくいってます！って安心してもらおうぜ、…って勝手な青写真書いちゃうんですよ。

…ほんで老人に会って「極めてうまくいってます。たとえば癌なんかもう克服された病気で…」って言ったところで「じゃあ世の中私らのころと違って老人だらけですなあ」って言われちゃって「え゛…」みたいになっちゃって。

取り返そうと「戦争も今やもう起きないんですよ。超大国が核の抑止力で均衡してますからね」って言ったら「じゃあ超大国がのうのうとしてる裏で弱小の国と国民が操られて悲惨な代理の戦争を始めることになりませんか？」って言われて「う゛…」みたいな。

どうすんだよ、おじいちゃん、薔薇色の世界を信じるどころか、どんどん悪い想像膨らませて世間に悲観的になっていっちゃってるぞ、って善意の学生たち焦るんですが、焦れば焦るほどもう、って話。

だからなんだ、って話ではありますが。

こんなん内容が破綻するというか整合性がとれなくなるダロ、とフツー思うんですが、そうならないのはさすがに大江健三郎。