◇画太郎◇のブログ一覧

だいぶ前に大江健三郎の『スパルタ教育』って小説をUPして、大江健三郎って暴力に妙に関心示すんだけど、大江含む世間一般の大多数の人にとってそれはあちら側の世界、彼岸のものであってフツーに生活営んでるんならあんまり関係ないよ。

…ただ、案外フツーの生活と隣り合わせにそれは潜んでるものだから、ふとしたきっかけでポッカリと口を開いてしまうことがあるよ、って話だったんですが。

『犬の世界』ってのはそういう世界のお話です。

大江健三郎が奥さんとふたりで住んでるところにひょんなことから若者が転り込んできて同居っていうか、まあ生活をしばし同じくするんだけど、一見無口でおとなしいくらいでフツーじゃね？…って思ったら、それまで暮らしてきた過程がもう完全にあちら側のそれなの。

とりあえずその子なに考えてるのかわからないけど、しばらくは意外とうまくいくの。
まあ特に大江の家庭に問題起こさずそのうち出て行っちゃうんだけど、やっぱりあちら側の世界で暮らしてる人間はあちら側に不思議とスーッと入っていって相容れないの。

その間、無口だからほとんど口きかないんだけど、ぽつりと大江に「毎晩同じ夢ばかり見るんだけど」っていうわけ。
「螺旋階段に立ってるんだけど、目の前にいつも同じ女の子が向うむきに立ってる」
「何か意味あるんですかね？」って言うから、「さあ」って答えるんだけど。

その子は外で何が起きたか、そのうちボコボコというか、ちょっとヤバくね？くらいにいためつけられて、それをきっかけに大江の家を完全に出て行っちゃうんだけど、そのとき「夢の続き見たんすよ」と言う。
夢の内容聞いて大江は「ああ、もうその続きも見て行っちゃうかもね」と言う。