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2022年06月17日 イイね!

岩明均/寄生獣

岩明均/寄生獣地球上の生物の頂点として人間が存在するが、人間より上位の生命体が突然、地球上に姿を現したら…というお話。

作中、突如地球に現れた人間より上位の生命体は、人間の頭部に寄生し、通常は人間が判別できないほどに人間に擬態しているが、頭部が刃物に近い形状に変形し、人間をあっという間に殺傷して捕食する。

この人間に寄生した上で他の人間を捕食する生物は「パラサイト」と作中で呼ばれる。
題名の『寄生獣』とはパラサイトを指すのではなく、終盤に広川の口から語られるが、人間のことである。

偶然右腕をパラサイトに寄生され、パラサイト「ミギー」との共生生活を余儀なくされた泉新一という男子高校生の数奇な運命の物語。

〇広川・田村玲子・後藤

新一とミギーの明確な敵としてパラサイトである「A」や島田秀雄らがいるが、終盤まで新一とミギーに関わった敵は広川・田村玲子・後藤。

広川は政治家である。
「人間の最大の敵は人間」ということをよく知っている。
彼は最後まで新一と接触することはなかったが、生きていた場合、非常にやっかいな存在になっていただろう。
「人間の最大の敵は人間」ということを知っている以上、「人間を滅ぼすのはパラサイトではなく人間である」ということを知っていたからである。
最終的には広川は消え、快楽殺人者である人間の浦上が新一の最後の敵となる。

田村玲子は女性に寄生したパラサイトである。
新一と一触即発の機会が二度あったが、戦闘には至っていない。
明確に他のパラサイトより高い戦闘力があったため、新一と戦っていた場合にどちらが勝ったかはわからない。
結局、田村玲子が戦ったのは新一ではなく、自身へ敵意を向けた他のパラサイトに対してである。
田村玲子は自身への関心、自身とその周囲との関係性への関心、それは自身を中心に拡大していき、新一への関心、人間という種への関心、パラサイトへの関心へとなっていく。
田村玲子の関心は、結局のところ「私とは何か?」という点に終着する。

後藤は男性に寄生したパラサイトである。
彼は作中最強の敵として新一に立ちはだかる。
きっかけは偶然だが、地球上の生物として圧倒的な存在となる。
最強であるにも関わらず、彼はさらに自身の強さを求めていく。
ナルシシズムからくる後藤の欲望には果てしがない。
極めて危険だが、どこか抗しがたいロマンのある最強の敵である。

〇新一とミギー

主人公の泉新一は平々凡々とした男子高校生である。
『寄生獣』は1990年代の作品だが、当時の男子高校生はおおむねこんな感じだったし、おそらく今の男子高校生もこんな感じだろうし、それより昔の時代の男子高校生もこんな感じだっただろう。
要するに普遍的な10代の少年から青年に変わるくらいな頃の男性である。
ただ彼、ひとつ他人と比べて変というか違う点があるとすれば、逃げないんだ。

序盤だが、同年代の子数人が公園で猫をいじめている。
ここで新一は迷わず「やめろ」と言う。
また、登校途中に同級生が他校の生徒に囲まれて痛めつけられているのを目撃する。
たいして考えずに止めに入って逆にやられちゃうんだよ、彼。
物語の中ではなんてことないエピソードだけど、できるかっていうと普通はできないよ。同年代で。
現実的には「何もしない」という選択肢をとる人が大部分に決まっている。
彼、最終的に後藤からも逃げなかったからね。

彼は選択し、行動していく。
行動していく主人公から物語は生まれていく。
逆に言えば行動しない人間からは何も物語が生まれない。
行動こそが人間を人間たらしめるとすれば、やはり彼は普遍的人間である。

新一の右手に寄生するパラサイト、ミギー。
このことによって新一とミギーは人間とパラサイトの狭間にいる存在となる。
ミギーは同種であるパラサイトを倒す。
一方、新一と同種である人間を倒すことは新一に許されない。
ミギーは悪意なく何度か新一に訊ねている。
「私と逆の立場なら君はどんな気分だ?」
知的好奇心が強く、自身を進化・深化させていったミギーは物語の最後、利己的行動でもなく自発的に人間(それも新一にとって極めて重要な人間)を助けている。

〇デビルマンと寄生獣

さて、人間より上位の存在が突如現れるとして、1970年代の『デビルマン』ではそれが「悪魔」、1990年代の『寄生獣』ではそれが「パラサイト」。
主人公はいずれも人間でありながら、敵側と同化し、狭間の立場から人類のために敵と戦う。

『デビルマン』では考えうる限り人類にとって最悪の展開になったのに対し、『寄生獣』は希望とまでは行かないが、問題を抱えながらも順調に進行する世界が描かれる。

これまでの歴史を振り返れば、人間は人間を殺せる限りの数、殺してきた歴史があるので、キューバ危機を経て切実に「これもう人類アホ過ぎて全滅するんじゃないか」という時代的空気感のなかで『デビルマン』があのような結末を迎えても特段違和感はない。
『寄生獣』の連載直後くらいの時期と思うが、ベルリンの壁が崩壊した。
ヒューマニズムと人間の連帯が勝利する人類史上まれにみる展開に「…いやいや案外だいじょうぶかもよ」という期待感…。これは今のところ現在まで続いている気がする。
そしてそのあいだは『寄生獣』という漫画が古びることはない。
Posted at 2022/06/17 04:37:37 | コメント(1) | トラックバック(0) | 漫画 | 趣味

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