
今でこそ自衛隊の社会的評価って上がってますけど、発足当時からずーっと長い間、自衛隊って白い目で見られたり軽視されたりしてきたんですよ。
マスコミなどの社会的風潮が反アメリカを基調とするリベラルが主流だったり、経済が好調で過酷な自衛隊が人手不足、誰も自衛隊なんか入りたがらず「兄さん、いい体してるねえ」と街角にスカウトがいたりなんかして、自衛隊員は自然とバカにされる風潮が強かったんです。
転機のひとつは自衛隊が災害支援・復興に積極的にかかわりだして、その能力が非常に高いことが一般に認知されてきたこと、もうひとつは東アジア情勢が緊張しだして自衛隊の重要性が認識され始めたことだと思いますが…、でもながいあいだ自衛隊って日陰者だったんです。
この漫画が描かれたのはバブルの頃、日本経済は頂点に達し、若い人は毎夜ディスコに繰り出し、高級車を乗り回し、女の子と遊び…、そうしたなか自衛隊にわざわざ入隊してくるのはワケアリの人たち。
主人公の坂田二士はヤクザまがいの先輩の女に手を出し、慰謝料300万を2年で返すため自衛隊に入れられます。衣食住はタダ同然だから給料は全部その先輩に持っていかれるんですよ。
周りを見渡せば新隊員は皆、何かしらの事情を抱えたものばかり。若い人が苦労もせずに大金を手にして遊びまわってる時代にわざわざ過酷で薄給、自由が束縛される自衛隊に入って来る人なんてそんなにいないんですよ。
坂田二士を始め一生懸命に生きてるのにどうにもならない事情を抱え、それでも頑張っていくしかないんですが…、坂田二士はヤクザまがいの先輩に言いがかりをつけられ2年で300万払うところをもう2年、4年で600万払うことになってしまいます。このままでは一生先輩の奴隷。坂田二士は心を壊してしまいます。
最後、富士演習場で自衛隊VSヤクザの大規模な衝突、坂田二士と先輩との対決、そして怖かった先輩をなき者にする…、ただ、だんだん読んでて「アレ?」となってくるんですよ。今まで徹底して自衛隊のリアリズムだったのに荒唐無稽すぎる。垣間見えてた不自然さがどんどん増していったとき、ああ、これは心を壊した坂田二士の空想の世界なんだ、と気づかされます。
ページをさかのぼってめくっていって、ああ、ここからが坂田二士の空想の世界だったんだと。どうにもならない現実はなにも変わっていなかったんですよ。
『未来世紀ブラジル』って映画があって、その展開のオマージュだと思うんですが。
バブルの頃って僕は中学生だったからよく知らないですけどね。バブルの頃に描かれたこの漫画読んでると、要領の良い奸物がのさばって周りにちやほやされ、そのいっぽうでいくら地道にがんばっても誰も見ていない、評価されない日陰者がいたりして。あんまり良い時代でもなかったんじゃないかなぁと。わからないですけどね。
Posted at 2016/01/16 09:00:42 | |
トラックバック(0) |
漫画 | 趣味