2017年3月11日―今日という日に敢て、2月14日に我が家にやってきたこの車両について登録させていただく。
このSNSではもう殆ど忘れられているようだが・・・6年前の今日という日は、私たち日本人にとって忘れてはならない日。
国土が破壊され、沢山の命が失われた日。
円満な日常が押し流され、人の有難味の大切さを噛み締めた日。
そして政治に無関心であることがどれほど恐ろしいことか、知らしめられた日。
Husqvarna TE701 ENDURO―何故敢て今日という日に、この単車について綴るのか、ちょっと語ろうか。
DT200WR、RMX250S、WR400F、DT230LANZA、TT600R、DR-Z400S、TE450、TE310i.e.、そしてTE701 ENDURO―私自身にとって、9台目のオフ車―エンデューロレーサーレプリカ。
オンロードバイクや四輪車に乗らなかった時期はあっても、我が家のガレージからオフロードバイクの居場所がなくなったことは、ない。
改めて思う。
私はもう随分長いこと、このオートバイたちが連れて行ってくれる土の香りに、五感の陶酔に、耽溺し続けて来たのだ、と。
木の根開く獣道
新緑の断崖路
灼熱の白いガレ場
落ち葉積もるヒルクライム
霜柱溶けるヌタ場
銀色の氷原
私のオートバイとの歩み、幾星霜。
その間、片時も離れることはなかった、オフロードラン。
きっかけは厨二臭溢れるものだった。
それでも大真面目な理由だった。
阪神淡路大震災―
テレビに映し出される瓦礫、閉鎖された道路、焼け落ちた町並み、引き裂かれたアスファルト。
そのなかを、雄雄しく駆けて行くオートバイたち。
なかでも、軽い車体と多少の路面ギャップなどものともしない走破性をもったオフ車-消防か自衛隊のものだったと思う―の活躍に、衝撃を受けた。
四輪車ではとても走破できないほどの段差を越え、倒壊した建築物の壁を縫い、堆積した瓦礫で丘陵と化した住宅地を、まるで鳥のように越えていくその姿に、釘付けになった。
有事―
現在の日本では、未だ肌で感じることはできない、しかしいずれ訪れるかもしれない、そのとき。
私は、私たちは生き残ることができるだろうか?
そのとき私は一人のバイク乗りとして、私の大切な人たちに、何をしてあげられるだろう?
あの日から私は、オフロードバイク乗りになることを決めたのだ。
レースをやっている友人から、中古のDT-WRを買った。
それは同時に、2つのタイヤにエンジンを載せて走ることの難しさを、改めて思い知らされることとなった。
コースを、ゲロ道を走りこめば走りこむほど―
たかだか35馬力を使いこなすことの難しさを、
たった10センチの木の根を越える技術の無さを、
せいぜい踝までの深さの小川を渡るライン判断力の欠如を、
―己の未熟を、思い知らされた。
それからは走った。
週末を迎えるたび、地元の里山を走り回った。
それまでの、ロードバイク乗りとしての自分をすべて否定した。
一から出直し。
基本から叩きなおした。
それはやがて、本当の〝走る楽しさ〟を覚えていくことにつながっていった。
そして現在。
もう体力的には若くはなく、物理的な速さよりも、外界に剥き身を晒す流浪に安息を求めることに充足を覚えるようになったこの頃。
銀嶺の懐へ
啼鳥の山里へ
蕗の薹咲く野辺へ
雪解けの沢辺へ
より遠くへ―
培った技術を生かして―
より深く、より日本へ
大好きなこの国の原風景に、会いたくて。
そしていざという時には、この国に報いられるように。
もっと、もっと。
結果手に入れたのが、
大排気量700ccエンデューロレプリカ―
オーストリアの一角獣―TE701 ENDUROである。